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家を買おうぜ

 連休? 夜勤ですが何か?

「お家(うち)を購入するんですか?

 中級探索者なら、税制上の優遇が受けられますね。

 確定申告で経費として計上できますよ」


 と、たぶん猪狩君経由から話を聞きつけたらしい茲富(こことみ)さんが、聞いてもいないのにアドバイスをくれた。

 ダンジョン探索の為に探索者協会支部に入って、わずか1分後のことである。

 入り口の監視カメラを、常にチェックしているのか!?


「でもその辺の手続きは面倒くさいと思うので、税理士を雇った方がいいですよ。

 ナオちゃんならまだまだ収入が増えそうですし、財産を管理する人は必要だと思います」


「なるほど……」


 まあ、アドバイス事態はありがたい。

 ぶっちゃけ、面倒な確定申告は他人に丸投げしたいし……。


「それと、協会から紹介状も書いておきますね。

 異世界出身の方だと、その……難色を示す不動産屋も多いので……。

 協会の後ろ盾があれば、話が進みやすいかと」


「あ~……」


 ●:今のナオちゃんの姿は、異世界人だもんな


 ●:差別はいけないと思います!


 ●:いや……文化や価値観・習性が違うと、日本人相手ではまず起きないようなトラブルが発生しやすいというのも事実なのよ


 ●:例えば、月夜に鼓膜を破るレベルの叫び声をあげる種族とか


 ●:ゴミ箱やゴミ捨て場という概念を持たず、所かまわず捨てる民族もいるねぇ


 ●:ご近所は皆家族で、財産とかも共有できると考えているという、距離感がバグっている連中もいるぞ


 ●:既婚者が相手でも、好きになったら強引にパートナーへ決闘を仕掛けて奪いに来るという風習のやつらもおる


 ●:住んでいるだけで周囲の気温を下げたり、上げたりする体温の種族もいるよな


 ●アイ:気温を上げる方は、うちの眷属だねぇ……


 ●ナオ:そうなんですか?

 マヤさんは問題なさそうでしたが……


 ●アイ:マヤとか大抵の子は大丈夫なんだよ

 でも、稀に体温調節が下手な子がいるだよね……


 ●ナウーリャ:メルトダウンしかけているゴ○ラですか?


 ●アイ:私も疑似太陽を作れるから、やろうと思えば気温を上げられるよ


 ●:やめてください、真夏だと死んでしまいます!


 ●:雑草(その種族にとっては聖なるものだが、ミント以上に繁殖力が強い)の種を、色んな場所にばらまくというのも……


 ●:そういう日本人の常識や生活習慣とは、相いれない性質の種族や民族は実在するのだよ、残念ながら……


 お、おう……。

 確かに生死にかかわるレベルでヤバいのがあるな……。


 特に雑草の種は農地に蒔かれたら、食料自給率に打撃を受けるよな……。

 テロやん……。


 さすがにそういうのは、日本への滞在許可が下りないよね……?


 ●:そして1度でもそんなトラブルを経験しちゃうと、警戒する業者が出てきちゃうのはどうしようもないよなぁ


 ●それにそのトラブルに対応しようと場合、そのコストをどこに転嫁するのかというのも難しい問題だし……


 ●:ナオちゃんの所もコボルトがいるから、吠えたらご近所迷惑になっちゃうしなぁ

 それを理由に断られる可能性はあるわな


 ●:まあ、賃貸ではなく一軒家を買うということなら、条件は緩くなるんじゃね?

 ましてや一括払いならまず損にはならないから、歓迎してくれる業者は多いと思うよ


 ●:ただ、ご近所との人間関係については、当たり外れがあると思うので慎重に物件を検討すべし


 ●:ご近所トラブルになっても、簡単には引っ越しできないもんな


 そ、そうだね……。

 とりあえず、茲富さんの紹介状はありがたく使わせてもらおう。


 で、この日はまたユニコーンを狩って、家の購入資金を稼いだ。

 2日ほど泊まり込んで粘ったので、ユニコーンを12頭も倒すことができた。

 これなら中古の家を買うには、十分な額になるだろう。

 

 そして後日、家を買う為に不動産屋を訪ねた。

 ネットで色々と物件や不動産業者を調べていたのだが、茲富さんが探索者協会と懇意にしているという業者を紹介してくれたので、そこへ行くことにする。

 探索者協会職員の、寮やら社宅やらに関わっている業者であるらしい。


「いらっしゃいま……せ……」


 店員のおじさんは俺の姿を見ると、一瞬だけ顔をしかめた。

 俺の姿が異世界人だからなのか、それとも子供だからなのか、その両方だからなのか……。

 いずれにしても、真っ当な客だとは見えなかったのだろう。


 まあ、すぐに平静を繕い、露骨に嫌そうな素振りを見せなかったのは、さすがに客商売のプロってところか。

 いや、一瞬でも崩れた時点で、ちょっと駄目ではあるが……。 


「あ、探索者協会からの紹介状があります」


「……拝見します」


 ●:おっさんの顔色が、読み進めるごとに悪くなっていくのだが?


 ●:もしかして……×紹介状 ○脅迫状


 茲富さん、何を書いたんだ……?

 だけどその後は、店員が気持ち悪いくらいにこやかな態度になり、物凄く協力的になってくれたので、家探しはかなり捗(はかど)った。

 ……うん、結果良ければすべて良し。

 メダカの卵を買って孵化させたけど、生後2~3日で縄張り争いをはじめたのを見て、弱肉強食という自然界の業を感じる。

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