何かが棲む家
●ナウーリャ:既視感がありますね……。
●水杜:あの……お兄ちゃんが何も無い場所を見つめているんだけど……
あ、コボルト達も……
●:ネコやイヌがよくやるやつだね
●:視線は動かないのに、耳や尻尾が動いていて可愛いw
●:こういう反応をしている彼らには、霊が見えているという
●:まあ、我らにも見えるが
●水杜:え、本当に何かいる感じですか?
えぇ……この和装の幼女、水杜にも見えていないの?
ということは本当に霊……というか、この姿って──、
●:ずるいぞ、座敷童!
●レナ:私もナオちゃんと直接会いたいのに!
●:家に押し掛けるのはマナー違反だぞ!
●:マナー以前に犯罪かと……
●座敷童:ワシが住む家に向こうから来たのじゃ
批判される謂れは無いぞよ
●水杜:あ、見えないけど、本当にいるんですね、そこに……
やっぱり座敷童なんだ……。
古い家に住み着く子供の霊って話も聞くけど……。
──って、
●ナオ:神様達のチャットに参加できてる!?
●:そりゃ座敷童って福の神の一種だからね
●:しかもこの子、座敷童の中でも古株よ
●座敷童:そういうことじゃな
ともかくワシは合法的に推しに会っておるのじゃよ
推し!?
俺のことか!?
俺が座敷童の方を見ると、彼女はにんまりと笑みを浮かべて、手を差し出してきた。
……握手がしたいのか?
俺が手を差し伸べると、嬉しそうに握って、ブンブンと振る。
ただのファンじゃねーか……。
最近は配信に1万近い視聴者が集まってくるから、中にはこういうのも出てくるか……。
「いつも配信を楽しみにしておるのじゃ!
今後は同居者としてもよろしく頼むぞよ」
●ナオ:あの……まだここに住むって決めた訳ではないのですが……
むしろ同居人がいるのは、この物件を除外する要件になり得るんだけど……。
ましてや神様とか、気を遣うわ。
「なんでじゃ!?
こんな美少女と同棲ぞ!?
嬉しかろう!?」
●:美少女てw
●:ロリババァがおこがましいですねぇ
●:美少女(数百歳
●アイ:数百年前!?
BBAじゃねーか!
●ナオ:さすがに見ず知らずの他人との同居は、ハードルが高いですよ……
「まあそう言わずに……。
ほれ、このまま玄関にとどまっていても、不審に思われるぞよ?
まずはこの家の良さを見てほしい」
「あ……」
確かに不動産屋のおばちゃんが、首をかしげている。
仕方がない。
とりあえず内見を続けるか……。
「みんな、足を拭いて上がってね」
「「「わうん(はい)!」」」
コボルト達は靴を履いていないから、玄関から家の中に入る時には足を綺麗にすることを徹底させている。
幸い物覚えはいいので、普段なら守ってくれるのだが、テンションが上がっている時だと、忘れることがあるんだよな……。
なので、その都度注意をしているが、特にウザがられてはいないようだ。
渡したウェットティシュで、一生懸命足を拭いている姿が微笑ましい。
それはさておき、いざ家の中に入って見れば、外観から見た印象よりもよりも新しいと感じる。
そもそも外観もそれほど古く感じなかったけど、内部は新築に近い印象だ。
「どうじゃ、ワシが管理する家は劣化しにくいのじゃ。
維持費が安く済むぞよ。
そもそもワシがいるだけで、住人の運気もあがるしの。
幸運が舞い込むのじゃ」
ふむ……それは魅力だ。
だが──、
●ナオ:一見良物件だけど、なんで中古になったんですかね……?
なにか問題があるのでは……?
●:たし蟹
●:怪奇現象が起こったんじゃないの?
●:夜中に物音がしたり、写真を撮るたびにオーブが写り込んだり
「そ、それはワシの生活音みたいなものじゃし……。
それに前の住民は、高齢で体調を崩すまではここに住み続けておったぞ!」
●:ほな大丈夫か
●:そうかな……そうかも……
でも実際、物件としては文句のつけようの無い感じなんだよな。
想定外の同居人がいること以外……。
「それでは、庭の方を見せてもらいましょうかね」
ドッグランとして使えるかどうか、それが肝心だ。
「うむ、それならこちらじゃな」
で、座敷童の案内で辿り着いたのは──、
「お兄ちゃん!
縁側があるよ!?」
「本当だ!
リアルで初めて見た!!」
古い日本家屋にはあるらしいが、最近の民家ではすっかり見ることが無くなった縁側だ。
だからつい、兄妹で思わず興奮してしまった。
コボルト達も、
「「「わぉぉぉぉぉぉーん(うわああああいいいいい)!!」」」
テンションマックスで、縁側の先に広がる庭へと駆け出してしまった。
うん、遊ばせるにはちょうどいい広さだな。
だが──、
「ワシ、ナオちゃんを膝にのせて、縁側で茶をすするのが夢なんじゃよ」
……テンションが下がるようなことを言うなよ、座敷童……。
というか、マジでお婆ちゃんやん……。
ともかく──、
●エルシー:縁側とは珍しい
昨今ではサ○エさんなどのフィクションでしか、なかなか見かけませんからね
あとは古民家をリノベーションした旅館とかに行けばあるかもしれませんが……
今までは旅行とかに行く余裕なんて無かったからなぁ。
古民家なんて、まったく無縁の生活だった。
それだけに縁側は魅力だな。
ただ……、
●ナオ:ちょっと掃除とかが面倒臭そうですね
「そこはワシが管理しているから、手間いらずじゃよ」
●ナオ:え、もしかして家全体も掃除が必要無いんですか?
「そうじゃな。
家政婦付き物件だと思えばいいんじゃよ」
そう思うと、なんかいいような気もしてきた。
「更にあれを見よ!」
座敷童が指さしたのは、庭の隅の……あれは家庭菜園か?
「ワシが育てている野菜もタダで食べ放題なのじゃ!」
それは家計にも優しくてありがたいな……。
「しかもこんなこともあろうかと、マタタビも栽培しておるぞよ!」
「……!!」
マタタビか……。
この前ちょっと吸ってみたが、あの酩酊感はアルコールよりも良かったな……。
あれが好きな時に楽しめるだと……!?
「あ、ここに決めます」
と、俺は不動産屋のおばちゃんに告げる。
衝動的に決めてしまったような気もするが、マタタビの魅力には逆らえないにゃ……。
こうして、俺達の新居は決まったのだった。
紅葉とかダムとかヒグマとかを見に行ってました。




