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偽りの自分

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 生まれて初めて、告白されてしまった。

 しかも10歳は年下の、可愛い男の子からだ。


 彼の名は、猪狩走(いかりらん)という。


「あの……一目見た時から、可愛い子だな……って。目を奪われてしまって……。

 こんなこと初めてなんです」


 ●:そんな若さでロリに目覚めてしまうなんて……


 ●:同い年だと思っているだけなのでは?

 それよりもケモナーなのかもしれんぞ

 どのみち業は深いが……


 ●マルル:最初は犬耳程度のケモノ要素だったのに、徐々に全身が毛皮でもよくなってくるんだよね……


 ●:可愛い系の同類を見つけたという、親近感じゃね?

 さすがにナオちゃんのことを、男の娘だと見破った訳ではないと思うけど……


 ●:いや、同類だと知った上で、告白しているのかもしれませんよ! 

 グヘヘヘ┌(┌^o^)┐


 ●:腐れ女神の方がアップを始めたようです


 ●:変態のお姉様方は帰ってもろて


 ●変態紳士なおじ様もいますが?


 ●:帰れっ!!


 ……そう、同類だ。

 猪狩君の容姿は、10人中10人がボーイッシュな女の子だと勘違いする見た目だった。

 よく見れば、「もしかして男の子か……?」と、違和感を持つことはあるかもしれないが、言われなければ見破ることが困難なレベルだ。


 正直、凄く可愛いとは思うし、今の俺に匹敵する可愛さの男子が、この世に存在するとは思ってもいなかった。

 だが、それと交際するのは別問題だ。

 というか、どう接していいのかすら分からない。


 悲しいかな、これまでの人生で告白という物はされたことが無かった。

 それだけ以前の俺は凡庸な見た目だったし、そもそも病気がちな妹の面倒を見る為に、異性との交際どころか、同性の友達と遊ぶ余裕すらなかったので、出会いの切っ掛け自体が無かったのだ。


 だからこの状況には、ひどく困惑している。

 だけど、結論だけは出ている。


「あの……ごめんなさい」


 そう、猪狩君と交際するという選択肢は無いのだ。


 お断りの理由ならいくらでもある。

 年齢が離れているし、恋愛をしていられるような生活の余裕も無いし、猪狩君のこともよく知らないし、そもそも彼が好きになった俺の姿は偽物なのだ。


 今の俺の姿は、神様達によって作られたVTuberのアバターみたいなもので、いつかは元に戻ってしまう。

  そんな真実を隠したまま付き合うのは、彼を騙しているかのようで罪悪感が凄い。

 というか、それ以前に──。


「え……」


 俺の答えを受けて、猪狩君の顔が泣きそうなものへと歪んだ。

 俺は慌てて弁明する。


「あの、猪狩君が駄目とかいう話じゃないんだ!

 ボクはその……男なので……」


「はえ……?」


 俺の言葉に、猪狩君は茫然とした顔になる。


 ●:ランくんちゃんが、背景に宇宙を背負っている!!


 ●:宇宙男の娘……!!


「だからボクの恋愛対象は、女の人なんですよ」


 ……うん、猪狩君がいくら可愛くても、恋愛感情は持てない……とは言い切れない容姿なのが怖いんだよ……。

 だが、現時点ではその気は無いし、今後気が変わる予定も無い……はずだ。

 

「え……でも……だって……?」


 信じられない物を見るかのような猪狩君の視線が、俺の胸へと(そそ)がれた。

 あ、今の俺って、思春期特有のホルモンバランスの乱れか何か知らないけど、ちょっとだけ胸が膨らんでいるんだよな……。

 誰の趣味だよ、一体……!?


 ●水杜(みもり):お兄ちゃんのことをまだ女の子だと思っていそうだね


 う~ん、俺が男だというのが、告白を断る為の嘘だと思われても困るな……。

 ここは完全に、猪狩君の希望を消しておかないと……!


「あ……これはパッド入りブラで……」


 ブラをしているのは本当だが、パッド入りは嘘だ。

 どうせ直接見せる機会なんて金輪際無いだろうし、猪狩君には俺の言葉の真偽なんか分からないだろう。

 ……まあ、自ら好んで女装をしているという、いらぬ誤解を受けてしまうが、それは仕方がない……。


 ●レナ:胸を見せるフラグですね!!


 心を読まないでっ!?


「そんな……」


 猪狩君は(しばら)くの間、葛藤した様子で黙っていたが、やがて思い切ったようにギュっと目を閉じ──、

 

「失礼しますっ!!」


 大きく頭を下げてから、走り去っていった。

 その目には涙が浮かんでいたような気がする。

 なんだか可哀そうなことをしたな……。


 ●:一目ぼれした相手が男だった所為で、ランくんちゃんの性癖がねじ曲がったりしてない?


 ●:もしかしたら男の娘でしか、興奮できない身体(からだ)に……


 ●:いずれにしても、まだ諦めてないかもね


 恐ろしいことを言わないでくれよ……。


 ……だけど実際のところ、猪狩君との関係はこれが終わりではなく、ここから始まるのだった。

 遠方の漁港で開かれている朝市へ行ったら、到着時にはほとんどの品が売り切れていました。片道3時間はかかるから、宿泊でもしないと早朝に到着するのは無理だわ……。

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