378:隕鉄・拒絶のマテリアルタワー
「じゃ、回収するか」
『ブン』
隕鉄・拒絶のマテリアルタワーに接触できる回数は一度だけ、完全にレアなマテリアルである。
なので、出来る範囲での一撃を叩き込むべく、俺は隕鉄・拒絶のマテリアルタワーから少し離れると、二重推進で駆けて接近。
全身の力と加速の全てを載せて左手を突き出し、接触の直前で『昴』を射出し、叩き込む。
「ふむ。たぶんだが、緋色の魔物が使っている金属がこれだな」
『ブン。なるほど』
そうして叩き込んだ感想としては、緋色……スカーレットの魔物たちが使っている武装に使われている金属がこれであるというのが一つ。
もう一つは、性能的にはダマスカス鋼の上位、竜命金の下であり、その上で飛び散ったマテリアルの数からして得られる量は微妙となると……ぶっちゃけると、属性抜きにしても使い道に困るかもしれないな。
≪幻想系マテリアル:隕鉄・拒絶を32個回収しました≫
「まあ、十分な数が手に入ったから、特殊弾『シールド発生』に回してしまうのも一つの手……」
しかし、隕鉄は現実にあるものなのに幻想系マテリアルなのか。
そうなると、現実にある隕鉄とは名前が同じだけの全くの別物。
ファンタジーによくある星の力を一身に帯びた金属とか、そういう物なのかもしれないな。
まあ、詳細は生きて帰るか、フロア9.5に辿り着いたときに確認すればいいか。
そんなことを思っている間にアドオン『オートコレクター』が働いて、隕鉄・拒絶が回収されていく。
≪幻想系マテリアル:隕鉄・拒絶が3個盗まれました≫
「あ?」
『ブブ?』
「タタタ」
そして、許容しがたいアナウンスが流れた。
「バーグラー……」
俺は素早く周囲を見た。
で、見つけたのは大きく膨らんだバッグを肩から提げ、腰にサブマシンガンを提げ、赤い衣服の男であり、その顔は卑しいと言う言葉そのものであるようなものである。
そんな男の手には、隕鉄・拒絶のマテリアルが三つあった。
「じゃないのか」
とりあえず二重推進で接近した。
「タ?」
足を払って体を浮かし、腰を入れて支点とし、相手の頭を掴む。
「まあ……」
「タ……」
そして、重力異常によって増した俺の体重も載せる形で床に叩きつける。
「どちらにせよ……」
「タァ……」
その上で拳を頭に叩きつけて……。
「潰す」
「タギャアゥ!?」
『昴』を撃ち込んで始末した。
≪設計図:アドオン『燃料消費軽減』を回収しました≫
≪幻想系マテリアル:隕鉄・拒絶を3個取り返しました≫
「で、ティガ。こいつは何だったんだ? 手に入ったアドオンに、妙に消費している燃料から、こいつが例の燃料消費を増やしている未知の魔物だってのは分かるんだが」
『ブーン。コチラの資料だと、レッドタックスマンと言う名前になっています』
「タックスマン? マンは何とか人の人部分だとして、タックスの部分が職務内容に関係する部分か。タックス……taxか? それだと税金とかその辺の意味だと思うが……税の徴収者とか、その辺か?」
相手の名前はレッドタックスマンと言ったらしい。
あっさりと接近を許し、投げられ、仕留められたことから考えて、戦闘能力については殆どない人間型の魔物であることは確かだろう。
となれば、タックスマンと言う職業は非戦闘系に属するような職業になるはず。
『ブーン。徴税人、という職業が昔はあったようですね』
「ああなるほど。税金関係となると、そりゃあ悪いイメージを持たれていそうだな」
どうやら税の徴収者と言う訳し方でそこまで間違いではなかったようだ。
『それでトビィ。レッドタックスマンを倒したことで燃料の消費はどうなりましたか?』
「今は変わらず、普段より僅かに多い状態だな」
『ブブ。今はですか?』
「今はだ。緋炭石による補給具合を見る限り、レッドタックスマンを認識してから、倒すまでの間は僅かだが更に消費が増してたみたいだ」
『ブン。なるほど』
さて、レッドタックスマンだが、直接戦闘能力は低い代わりに、その場に居るだけでゴーレムの燃料消費や他の魔物のスタミナ消費を僅かにだが激しくする能力が有るらしい。
で、これは予測だが、その能力の範囲はフロア全域と比較的近い距離での2つあるのではないかと思う。
そして、前者はレッドタックスマンがフロアに一体でも居ればいいので、実質解除不可能。
後者は近距離でしか効果が発揮しない代わりに、効果が大きいし、もしかしたら効果の重ね掛けもあり得るのかもな。
まあ、試そうとは思わないが。
≪レッドバーサーカーがスカーレットバーサーカーにランクアップしました≫
「ようやく二度目の強化アナウンスか」
『ブン。そうですね』
「ただまあ、この頻度の低さにも納得がいった。たぶんだが、レッドタックスマンの能力でスタミナ消費が増えた結果、襲い掛かった相手を倒しきれていないんだろう」
『ブーン。ありそうですね。トビィが戦ったバーサーカーも簡単に息切れしてましたから』
とりあえず探索を再開。
頻繁にエレベーターのある方角が変わっているので、エレベーターまでもう間もなくのはずである。
「しかし、こうなってくると今回のフロア8は魔物の組み合わせ相性が……いや、バーサーカーだけにとって極端によくない組み合わせだった事になるか。そうなると……」
『トビィ。ここで運が良くて怖いとか言うと……』
「それはそうだが、実際怖い案件だろ。次のフロアはもう出現する魔物が完全確定しているわけだし。それなのに、直前でこういうことがあると、確定していてもなおきつい何かがあるようにしか思えなくてな……」
と、ここでエレベーターを発見。
周囲に敵影もない。
なので俺はエレベーターに乗ると、フロア9に向かった。




