377:バーサーカー
「クルゥイイィィキョキョオォォ!!」
スカーレットバーサーカーが奇声を上げながら俺の方へと突っ込んでくる。
その動きは俺の二重推進に劣らないほどであり、駆けた勢いはそのまま右手の斧に乗せられて振り下ろされる。
「相変わらずの……」
勿論、そんな単純な攻撃を受ける理由はないので、俺は最小限の動作で斧を避ける。
だが反撃までは出来なかった。
「キョキョキョオオォォ!!」
スカーレットバーサーカーは体勢を整えることもなく鉤爪を振るって攻撃を仕掛け、それも避けられると蹴りを出し、それでも駄目なら頭突きからの再びの斧振りと、隙間なく連続で攻撃を仕掛けてきたのである。
「速さと攻撃に全部振った姿勢だな!」
「クルィウィキョォ!!」
これがスカーレットバーサーカーの厄介な点。
狂戦士の名にふさわしく、攻撃に全てを傾け、ひたすらに暴れ続けるのだ。
勿論、攻撃に全てを振っている以上は耐久は少なく、避けるという考えも持たないため、普通なら複数人で戦ったり、遠くに居るのを発見して銃を撃ち込むなどすれば、黒や虹の位階でもなければ簡単に倒せる。
が、それは普通の話なので、ソロで、既に接近戦で、そもそも遠距離攻撃に乏しい俺だと、どうにか攻撃の隙間を見つけて反撃を仕掛けなければならない。
だから今は避けることに専念しているのだが……。
「グーグーヴィルギョオオォォ……」
「ん?」
スカーレットバーサーカーの動きが鈍る。
それもまるで息が上がったかのような動きで、斧の振りも鉤爪の突きも遅くなって、終いには攻撃を止めて呼吸を整え始めてすらいる。
うん、おかしい。
俺が知る限り、バーサーカーどころか魔物たちはスタミナ切れとは無縁の存在であるはず。
それが息切れ?
どういうことだ?
「分からんが、殴れば分かるか!」
「グギィ!?」
『ブブ。それはトビィだからこそだと思います』
とりあえず隙だらけなので、俺は全力でスカーレットバーサーカーの顔面を殴るし、『昴』も撃ち込む。
防御面が弱いスカーレットバーサーカーなので、これだけで既にシールドが8割近く削れている。
そして感じ取ったのは、スカーレットバーサーカーの全身に異常なほどに疲労が溜まって、それの回復がまるで間に合っていないと言う不可思議な事実だった。
「んー? あー……とりあえず……始末はして……」
「グギョ!? ベギョ!? グヴゥギィ……」
訳が分からないと思いつつ更に殴って、シールドを全損させ、そのまま始末する。
理由は不明だが、楽に終わるなら、その楽は一先ず甘受しておくべきだからだ。
≪生物系マテリアル:肉・拒絶を1個回収しました≫
≪設計図:特殊弾『武装奪取』を回収しました≫
≪生物系マテリアル:骨・拒絶を1個回収しました≫
「ちっ、やっぱりエクソシスト分は無しか」
『ブブ。バーサーカーに倒されてしまいましたからね』
と言うわけで戦闘終了。
人型からでも肉と骨が手に入るのはスルー案件。
特殊弾『武装奪取』については後で詳細を確認。
で、普段よりも少し多く緋炭石を消費して燃料を補給しようとし……気づく。
「……。もしかしてそういう事か?」
『ブーン? トビィ?』
「いや、このフロアでは推定未知の魔物のせいで燃料の消費が僅かにだが伸びてただろ。もしもその能力が敵味方の判別をしないなら、魔物と言うか対生物なら燃料ではなくスタミナを消費させるなら……魔物でも特にスタミナ消費の多いバーサーカーはああなるのかなと思ってな」
『ブーン……可能性はありますね』
俺も受けている燃料消費増大の何かが他の魔物にも効果を与えている可能性を。
だが、レッドナイトやレッドバーグラーは影響を受けていないように見えた。
となれば、本当に魔物相手に効果があるにしても、普通に立ち回る分には影響をほぼ受けない程度の効果しかないのだろう。
たまたま、バーサーカー種にとってだけ、天敵のような相性の悪さだったわけか。
『ブブ。しかしトビィ、もしもそうなら、極めて珍しい現象ですね。集まっているデータから考えて、第四坑道・ミクヒィカのフロア7以降は明らかに魔物同士の組み合わせがシナジーのあるものになっています。それに反する組み合わせとは……』
「まあ、珍しいのは確かだろうなぁ。ただ、燃料削りと武装削りをした後の決め手として高ランクになりやすいバーサーカーが欲しかったとか、そんな安易な気持ちで入れたんじゃないか?」
『ブーン。ブーン……かもしれませんね』
とりあえず探索は進める。
消費が多いのは俺もなので、このフロアに長居はしたくないのだ。
で、その後も何度か戦闘。
その戦闘経験から言えば、どうやら今回のフロア8はメインの戦闘を行う魔物はナイト種とエクソシスト種であり、バーグラー種と未知の魔物がそれを補佐。
バーサーカーは手が付けられないほどに強くなれば美味しいと言った具合のようだ。
遭遇する魔物の大半がレッドナイトとレッドエクソシストで構成されたパーティだったので、この考えでほぼ間違っていないだろう。
「おっと、急いでいると言っても、これは回収しておかないといけないな。俺自身が使うかは怪しいが」
『ブン。そうですね』
と、ここで通路の途中に見慣れない金属のマテリアルタワーがあるのを発見した。
基本は鉄のようだが、星々の煌めきのようなものが混ざっているものだ。
手をかざしたところ、表示されたのは隕鉄・拒絶と言うマテリアル名だった。




