376:レッドヒューマンズ
「避けて……」
レッドエクソシストが放った、拒絶属性の塊のような光弾が一瞬前まで俺の頭があった場所を通り抜けていく。
「躱して……」
「ーーー!」
二重推進によって接近した俺を狙い撃つようにレッドナイトがサブマシンガンを発射。
無数の弾丸がバラまかれ、俺へと迫ってくる。
が、これはその場で高く跳び上がることによって回避。
「飛ん……ん?」
で、俺としては此処でさらにレッドバーグラーが何かしらの攻撃を仕掛けてくると考え、『昴』を蹴って空中で軌道を変えるつもりだったのだが、レッドバーグラーはレッドナイトの盾の陰から跳び出すと、一度下段の水路を経由して、普通なら俺が居たであろう場所へと十字砲火を仕掛けようとしていた。
どうやら、レッドバーグラーの機動性が高く、より確実にダメージを与えられるように動いた結果、噛み合わなかったようだ。
「まあ、問題はない、なっ!」
まあ、俺としては有利な結果だ。
なので俺は空中で『昴』を蹴って更に移動しつつ、三本のサーディンダートを投擲して攻撃する。
「!?」
レッドエクソシストに向かった一本は綺麗に突き刺さった。
「ーーー……」
レッドナイトに向かった一本は兜の隙間へ刺さるルートだったが、レッドナイトが素早い反応で顔を動かし、弾かれた。
「!」
レッドバーグラーに向かった一本は……空中で掴まれた上に左手で持つ袋に収納されてしまった。
≪サーディンダートが盗まれました。使用不可能になります≫
「なっ!?」
『ブブ! トビィ!』
そして流れたアナウンスはサーディンダートが盗まれて使用不可能になったという物であり、アナウンス通りに俺の腰からはサーディンダートが消え去っていた。
どうやらバーグラー種にはこちらの武装を盗む能力を持っていたようだ。
いや、下手をすればゴーレムの体そのものを盗み取ってくる可能性もあるか?
いずれにせよ、俺の中でレッドバーグラーに対する警戒レベルが一気に上昇する。
「ヒヒヒ……」
「そういうタイプなら強盗じゃなくて盗人を名乗れよ、ゴラァ!」
そんな俺の思惑など気にした事ではないと言わんばかりにレッドバーグラーはこちらに背を向けて駆け出そうとする。
明らかに逃げる体勢だ。
もしも此処で逃げられれば、サーディンダートはまず返ってこないと考えた方がいい。
返ってこないなら作り直せばいいだけの話だが、作り直すよりもぶちのめして取り返す方が安いし、何より気分が晴れる。
「ー……」
「ーーー!」
「邪魔をするな!」
なので俺は二重推進で駆けようとした。
だが、レッドナイトは素早く俺とレッドバーグラーの間に割り込んで盾を構え、レッドエクソシストは狙撃銃を撃つ。
レッドエクソシストの弾丸が右腕に掠り、シールドが一気に半分近く削られる。
レッドナイトの弾丸と盾は俺をその場に留めるには遅すぎたので、グレネードを置き土産に躱した。
レッドバーグラーの脚は速度強化こそ入っているようだが、それでも素晴らしく足が速い人間程度だった。
「『影縄縛り』からの『昴』で……沈め!」
「!?」
だから俺は一瞬にしてレッドバーグラーの背中に追いつき、特殊弾『影縄縛り』で拘束。
フェアリーパウダーによるバフを乗せた上で腹を殴り、『昴』を撃ち込み、レッドバーグラーのシールドを全損させる。
そして、そのままトドメを刺そうとパンプキンアームを貫手の形にすると、レッドバーグラーの胸に向けて突き出し……。
「ーーーーー!」
「っ!?」
転移したとしか言いようのない挙動で現れたレッドナイトが、俺とレッドバーグラーの間に割り込んで、俺の貫手を盾で防ぐ。
「庇う持ちになったのか!?」
「ーーー!」
「ーーー!」
レッドエクソシストとレッドナイト、双方から飛んでくる弾丸を避けつつ二つのグレネードで反撃を試み、その最中で俺は思わず叫ぶ。
俺が知る限り、ナイト種は特殊能力らしい特殊能力を持たない魔物だった。
せいぜいが盾を持ち、全身鎧を身に着けていることが多いことから、他の魔物よりも矢面に立つことが多い、と言う程度の認識だった。
それがここに来て転移を含む庇う……つまりは危急の仲間を確実に守る魔物になるとは、流石に舐め過ぎていたか。
なお、レッドエクソシストに投げたフググレネードは普通に直撃したが、レッドナイトとレッドバーグラーの二体を巻き込むように投げたグレネードはレッドナイトによって完全に防がれたので、どうやらレッドナイトの庇うは同時に二か所は守れないし、庇う対象もシールドがない相手を優先するようになっているようだ。
であるならばだ。
「だったらこれはどうだ?」
「!?」
俺はグレネードを防いだ影響でまだ固まっていたレッドナイトの懐に素早く潜り込むと、腕を掴み、足を払い、腰をひねって、その体を宙に浮かせる。
その上さらに俺は三重推進で飛び上がった。
「庇うお前自身が武器にされたなら、庇う事なんて出来ないだろう?」
「「!?」」
落とす先はまだ『影縄縛り』で拘束されているレッドバーグラーの脳天。
全身鎧によって守られたレッドナイトの硬い頭部と、シールドのないレッドバーグラーのほぼそのままの頭部がぶつかり合えばどうなるか?
結果は考えるまでもない。
≪サーディンダートを取り返しました≫
「ーーー……」
レッドバーグラーは倒れ、サーディンダートが俺の腰に戻ってくる。
レッドナイトも流石に自分の頭の高さから受け身を取れずに叩き落とされればタダでは済まず、シールド全損。
一気に相手の戦力は削れた。
「このままトドメを刺して……っ!?」
「ーーーーー!?」
≪レッドバーサーカーがスカーレットバーサーカーにランクアップしました≫
そして俺が倒れたレッドナイトの首を『昴』で断つのと同時に、レッドエクソシストの悲鳴が唐突に響き、ランクアップのアナウンスが流れた。
「クイイィィィキョキョキョッ!!」
「ちっ、お前がここで来るか」
レッドエクソシストの姿は既に無く、代わりにあったのは緋色の衣に身を包み、右手に斧を持ち、左手に鉤爪を付け、顔には奇妙な文様付きの仮面をつけた一人の男。
名前はスカーレットバーサーカー。
狂戦士の名にふさわしく、自分以外の全てを敵と見なし、襲い、倒してランクアップしていく危険な魔物である。




