375:下水迷路
「さてフロア8は早々に抜けたいところではあるんだよな」
フロア8である。
今回のフロア8は拒絶属性である上に迷路構造になっている。
そして、その迷路構造は具体的に述べれば、良く言えば地下水路、ぶっちゃけて言えば大きな下水道であり、拒絶属性の触れればダメージを受ける水が一定の量で流れている下段と普通に歩ける上段を一組として、網の目のように通路が張り巡らされている。
まあ、上段の通路の幅が3メートル程度あるし、アルメコウαレッグを使ってる俺なら下段で受けるダメージも限られているだろうから、そこまで問題はないだろう。
『ブン。出現する魔物にバーサーカーが含まれていますからね』
「ああ」
そんなフロア8で出現する魔物として坑道予測に出ていたのはナイトとバーサーカー、それから複数の未知の魔物。
ナイトはまあ、どうでもいいとしてだ。
敵味方区別なく襲い掛かった上に、他の魔物を倒せばランクアップしてしまうバーサーカーは非常に危険だ。
バーサーカー同士で潰し合ってくれるならば強化は遅れるが、一体のランクが飛び出てしまうと、あっという間にレインボーバーサーカーが登場してしまう。
もしもレインボーバーサーカー……2以降が出現してしまったら、逃げ一択、場合によっては脱出を図るべきだろうな。
≪空間のひずみが増大していく! このフロアの全ての魔物が1ランクアップしました≫
「此処で来るかぁ……」
『ブブ。拙いですね』
「ああ、拙い。かなり拙い」
ハプニングはランクアップか。
これでこのフロアで出現する魔物は橙から赤になってしまった。
これの何が拙いかと言われれば、スコ82の魔物の傾向として、橙から赤になるのは単純にステータスが上昇するだけ、ランダム強化による更なる強化が入るだけでなく、新たな能力を得たり、能力の悪質性が高まることが多い点が拙い。
バーサーカー種は大丈夫だろうが、ナイト種が妙な能力を得ている可能性は考慮しておかないといけないな。
「とっととエレベーターを目指すぞ。分かってはいたが、フロア7以降は長時間滞在していいようなフロアじゃない」
『ブン』
ではフロア8を探索開始。
俺はアドオン『昇降機方角把握』が示す方角……そのものに向かう通路はないので、そちらに近めの方角に向かって伸びる通路に向かって一歩を踏み出す。
「っ!?」
『トビィ? どうかしましたか?』
そうして踏み出した瞬間、俺は異常を覚えた。
「少し待ってくれ」
『ブン。分かりました』
覚えたが、その異常を正確に理解するべく、更に数歩進んで……把握した。
「ちっ、ある意味ではバーサーカー以上に面倒くさい魔物が居るな」
『ブーン? どういうことですか?』
俺の視線が燃料ゲージへ向かう。
減りは僅か。
僅かだが……ほんの僅かに消費が多くなっている。
「恐らくだが、フロア全域に燃料消費を重くする魔物が潜んでる」
『ブーン? ブブ……ブン!?』
ティガの反応は分からない、そんな馬鹿な、本当だ、と言う感じだろうか?
まあ、それはいいとして、燃料消費は確実に重くなっている。
倍率的には数%増えた程度だが、明確に重くなってる。
『その、トビィ。どうして魔物だと?』
「ハプニングならアナウンスが入っている。仕掛けなら、このフロアの属性は拒絶属性だから、拒絶属性に弱いヴァンパイアパーツを使っている俺はもっと消耗が激しくなってないとおかしい。だから魔物だ」
『ブ、ブン。なるほど』
ちなみに赤の魔物からフロア全域を対象とした能力持ちの魔物が少なからず出てくると言うのも、俺の判断理由には入っている。
入っているが、確証はないので口にはしない。
「さて、それはそれとして魔物だな」
と、ここで前方から足音がしてきた。
そして見えてきた姿は……三つ。
一体は赤い全身鎧を身に着けた騎士の姿をしており、身を隠せるほど大きな盾も持っているが、手にはサブマシンガンのようなものを持っている。
一体は赤い布の衣服を身に着け、口元を布で隠した男で、右手にはマグナムを持ち、左手には大きな袋を持っていて、何となくだが物取りの類のように思えるな。
一体は赤い布で作られたシスターの服を身に着けており、首からは金色のネックレスを提げ、両手で狙撃に向いてそうな大型ライフルを握っている。
「ティガ」
『ブン。順にレッドナイト、レッドバーグラー、レッドエクソシストです』
「騎士に強盗に祓魔師か」
三体とも銃持ち。
この狭い通路だと、先頭のレッドナイトが構える盾の陰からかなり撃ち込まれそうではあるな。
しかも、相手の属性が拒絶属性であることも踏まえると、受けた時のダメージは洒落にならないレベルになるだろう。
「「「ーーー……」」」
「さて、赤三体。どうなるだろうな?」
ランダム強化の内容は不明。
ただ、こちらの姿を認識したレッドナイトたちは直ぐに盾を構え、レッドバーグラーは身を屈め、レッドエクソシストは狙撃銃を構えたところを見ると、きちんとした連携は取ってきそうだな。
「ー!」
「ま、とりあえずはいつも通りだ」
そしてレッドエクソシストが引き金を引き、俺がその射線から外れつつ二重推進で前進する形で戦闘は始まった。




