374:殺到する魔物
「さて、逃げるのはいいが……」
相手の数は見えている範囲に居るイエローゾンビとイエローターキーだけでも30以上は確実に居る。
壁や床の中、鏡の向こうに居るイエローゴーストたちも含めれば、総数は40を超えるだろう。
おまけにこの魔物の中には正体不明の模倣の魔物と、蛇の尾を出さなければターキー種と見分けがつかないコカトリスが混ざっているのだから、厄介極まりない。
だから俺は進路を妨害するものだけを蹴り飛ばしつつ逃げ始めたのだが……。
「「「コココココ……」」」
「「「ーーーーー」」」
「思った以上に厄介だな。このフロア」
『ブン。追いつかれたらどうなるかは考えたくもないですね』
逃げ始めて直ぐに分かった。
このフロアでこれ以上にまともに戦ったら駄目であると。
「オラァ!」
「ーーー……!?」
「「「ーーーーー」」」
まずゾンビの数が多すぎる。
一体一体の動きは鈍く、持っている武器もライフルや剣と言った並の武器なので対処は容易。
だがそんなことがどうでもよくなるほどに数が多く、既に30から40は見かけてる。
そして、このゾンビたちはフレンドリーファイヤを気にせずに攻撃してくるし、こちらの攻撃を受けても怯まないし、シールドが仮に剥げても頭を破壊しなければ動き続けるため、地味に厄介なのだ。
しかもここに壁や地面との衝突ダメージ無効が入って、グレネードや蹴りでの吹き飛ばしがダメージに繋がらないので、本当に火力不足である。
よって、ゾンビたちへの対処だけでも逃げ一択の状況になっている。
「せいっ!」
「コケェ!?」
「「「コケエエエェェェコオオオォォォ!!」」」
次にターキーの能力がここに来て面倒になっている。
ただ大きな声を上げるだけなのだが、その声のせいでフロア中から魔物が集まってくる。
雄鶏並みにうるさい声は特殊弾『睡眠』による眠りぐらいなら解除できるらしく、既に何匹も集まっている現状では無効化する事も叶わない。
しかもこいつら微妙にタフで、衝突ダメージ無効も相まって、駆け抜けながら倒すことも出来ない。
厄介である。
「「「ゴオッ!」」」
「あぶっ……せいっ! 後燃えろ!」
「ーーーーー!?」
ゴーストも当然面倒くさい。
壁や床の中から攻撃を仕掛けて来て、こちらの動きが止まることはないが、地味にシールドが削られる。
相手の耐久が低いので、ヴァンパイアネイル、グレネード、サーディンダートと連続で仕掛ければ倒せるのが幸いではあるが、他の魔物が多すぎるので、始末しきる前に次が来てしまう。
とりあえず鏡の向こうから手を出してくるのは止めろ、心臓に悪い。
後、ゾンビどもに混ざってくるな、基本的な姿形が近いせいで、一瞬だが見分けがつかない。
「ゴゲエエェェゴオオォォッ!」
『トビィ! コカトリスです!』
「マジでふざけんなよ、こんちくしょうが!!」
ここでイエローコカトリスが岩化ブレスを吐いてくる。
俺は二重推進で飛び上がり、壁を蹴り、そのままイエローコカトリスの背後にまで回り込むことで回避する。
「お前は、こうして、こうだ!」
「ゴゲェ!?」
で、イエローコカトリスをパンプキンアームで拘束すると、サッカーのドリブルのように蹴りつつ前進することで、そのまま始末まで持っていく。
もしもブレスを喰らったら?
岩化した他の魔物たちを壊しつつ押し除けてやってきているゾンビたちによって袋叩きにされてお陀仏である。
と言うか、それがたぶんこのフロアのプレイヤーを狩るコンセプトなのだろう。
だから俺でも悪態を吐きたくなるのだ。
「コココ……ゴオオォォ!」
「邪魔!」
「ゴレムウゥ!?」
模倣の魔物は……正直此処まで窮まってる状況だと、そこまで怖くなかったりする。
一応、一度だけなら模倣した先の能力を真似できるようだが、オリジナルたちのがはるかに怖いのだ。
いやまあ、目の前でいきなりゾンビがコカトリスになって、岩化ブレスを吐いてくるのは怖いのだが……逆に言えば、それぐらいしか怖いパターンがないし、目の前での変身は相応に隙もあるので、普通にオリジナルたちが奇襲してくる方が怖いのが本音である。
うん。
「おっとルビー!」
『ブブ!? トビィ!?』
≪宝石系マテリアル:ルビー・電撃を3個回収しました≫
と、ここでルビーのマテリアルタワーがあったので、一回だけすれ違いざまに殴って壊しておく。
で、ルビー・火炎の時のように何かしらの罠が発動してくれればよかったのだが……。
「「「ーーーーー!」」」
「ちっ、何も無しか」
だが特に罠の類はないらしく、後ろから、あるいは横道から元気にゾンビたちが追いかけてくる。
『ブブ。それにしてもトビィ。この先どうするつもりですか? このままではエレベーターに辿り着いても……』
「そこは考えているから大丈夫……と、ようやくだな」
と、ここで俺の視界に次の部屋の様相が入ってきて、エレベーターと複数体のゾンビとターキーの姿が見えた。
「フェイクウォールからの……」
俺はそれを確認すると、岩化が解けた『昴』も使った三重推進で後続との距離を引き離し、その上でフェイクウォールを使う事によって道を封鎖。
俺を追跡していた魔物たちの足を止める。
「エレベーター乗り込みで……」
そして、勢いそのままにエレベーターに乗り、起動。
エレベーターが檻で囲われ、下降を始める。
俺の飛び込みに気づいて素早くエレベーターに乗ってきたのは……模倣の魔物が二体に、イエローコカトリス、イエローターキー、イエローゴーストが一体ずつか。
「「「ーーーーー……」」」
「じゃ、後はお前らを始末するだけだな」
俺は特殊弾『焼夷ガス発生』によってエレベーター全体を焼き始めると、とりあえずイエローコカトリスを速攻で倒し、残りの魔物も順当に片づけた。
増援が来ない、数が限られている状態なら、やはり今の俺にとっては黄色の魔物はそこまで強敵ではないらしい。




