373:イエローターキー
「さて……」
俺は自分の手元に『昴』を戻す。
そして握り、指で軽くノックする。
それで分かった事だが、今の『昴』は表面から数ミリメートル程度が鉱石系マテリアルである岩に変化しており、その下はダマスカス鋼・氷結のままのようだ。
また、こうしてノックをしている間にも少しずつ岩の範囲が狭まり、元に戻っているようなので、今の岩化は一時的なもののようだ。
だが、安心は出来ない。
岩となった部位の強度や硬度は岩そのものになっているので、黄色の魔物相手に使うことは出来ないし、芯まで岩になったら元に戻らなくなる可能性はある……と言うか、確実にそうなる事だろう。
つまり、スコ82におけるコカトリス種と言う魔物は、普通のRPGのコカトリスのように石化による即死や拘束はしてこないが、ゴーレムの各種パーツを岩に変える事で継戦能力を奪ってくる魔物であると考えていい。
「「「コケエエェェコココ!」」」
「衝突でダメージを稼げないのを前提に組み上げないとな」
俺が『昴』をインベントリに収納すると同時に、イエローコカトリスとイエローターキーたちが三体一直線に並んで突っ込んでくる。
どれがコカトリスで、どれがターキーなのかは分からない。
「「「コ……」」」
「ふっ」
分からないが、コカトリスとターキーの攻撃可能な範囲……前方に大きく偏っている事を考えれば、攻め方は分かる。
と言うわけで、俺は先頭のターキーが体当たりを仕掛けようとした瞬間に二重推進で、三体の横を駆け抜けて、最後尾の鳥……尾羽に隠れるように蛇の尾を持ったコカトリスの後方にまで回る。
「コギャッ!?」
「コケッ!?」
「ゴォッケェ!?」
「ふん、ふん、ふん!」
そして三連続で、踏み込み、一発ずつ殴って、勢いよく吹き飛ばす。
吹き飛んで、床や壁にぶつかって、受けたダメージは……やっぱり普段より少ないな。
しかも、殴った際には妙な感覚もあった。
急いだほうが良さそうだ。
「とりあえずお前は叩き潰す」
「ゴケッ!?」
と言うわけで俺は最初に殴ったイエローコカトリスへと急行。
パンプキンアームでイエローコカトリスの頭と尾の両方を拘束し、その上で殴って、一気にシールドゲージを削り取ってそのまま撃破まで持っていく。
「で、お前は何なんだろうな?」
『ブーン? それはどういう……っ!?』
そうして撃破したタイミングで残るイエローターキーは合流したわけだが……その姿が変わっていた。
「コココココ」
「ゴゴゴゴゴ」
片方はきちんとイエローターキーだった。
だがもう片方は、既に別の姿になっていた。
実を言えば殴った時点で、見た目と中身に違和感があったのだが、そんな違和感があったイエローターキーは既に別の姿に……虎柄のカラーリングがされた、剣と爆弾を保有する、とても見覚えがあるゴーレムの姿になっていた。
つまりは、俺が操るゴーレムそっくりの姿になっていた。
『トビィ、あれは……』
「とりあえず模倣能力持ちの魔物であることは確かだろうな。まったく、『第二次防衛戦』の直前で嫌らしい魔物を出してくれる」
「ゴオォォ……」
さて、どこまで再現されているのだろうな?
剣の腕前まで再現されていると、殴り倒すのがかなりきつくなるんだが……。
「コケエエエェェェコオオオオォォッ!」
「「……」」
イエローターキーが鳴くと同時に俺と俺そっくりの姿になった何者かは前に出る。
だが、出方は大きく違った。
俺は二重推進で、相手はデイムビーウィングをただ吹かして突っ込んでくる。
「ゴオォォッ!」
「なるほど、この程度か」
接近してからも違った。
相手は『昴』モドキを勢いよく振り下ろそうとした。
対する俺は相手を殴るためにさらに一歩踏み込む。
「ふんっ!」
「!?」
はっきり言おう、隙だらけだった。
だから俺は踏み込んで、殴り、怯ませ、『昴』モドキを振り下ろそうとする動きを止める。
「オラオラオラァ!」
「!!?」
その上で殴りまくる。
殴ったことで分かったが、相手の体を構成しているのは竜命金ではなく、ランク相応に鋼で出来ていた。
どうやら模倣できるのは見た目までであり、中身は真似出来ていないようだ。
故に一発殴る度に相手のシールドは大きく削れ、そのままシールドはなくなり、トドメの一撃も決まった。
「これでよし。残るは……」
「コ、コケエエェェコオオォォッ!」
やはり、こちらは全身竜命金と言う実質黒の魔物相当のゴーレムであり、相手は普通の黄色の魔物である差は大きいようだ。
特殊能力と不意打ち、それから数の暴力には注意を払う必要はあるが、直接的な殴り合いにまでなれば、負けることはあり得ないとまで言えるだろう。
と言うわけで、俺はステータスの暴力でもって、さっくりとイエローターキーを始末した。
≪設計図:アドオン『マテリアル変質無効』を回収しました≫
≪幻想系マテリアル:エーテル・電撃を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:肉・電撃を1個回収しました≫
「エーテルを落とすのか。と言う事は、あの模倣の魔物は幽霊とかそっち方面に近い魔物なのか?」
『ブーン。そうなのかもしれません』
報酬のアナウンスが流れる。
あの模倣の魔物は……正式名称については明日以降に集図坑道・ログボナスで確かめるのが一番正確か。
ただ、エーテルを落とすようなので、ゴースト種に近い存在であるのは間違いなさそうだ。
「「「ーーーーーーー……」」」
「『昴』は……完全に戻るにはもうしばらくかかるか。で、ターキーの声に誘われて来たみたいだな」
『ブン。床下からも来ていますので、注意をしてください。トビィ』
報酬が手に入ったところで俺は周囲を見る。
部屋の外、曇りガラスの向こうには黄色い衣服をまとった何者かや、丸っこいターキーたちの姿が既に数えるのも馬鹿らしいほどにある。
中には生物が居られる空間などないはずの床下や壁の中にも居る。
イエローゾンビ、イエローゴースト、イエローターキー、見分けは付かないがイエローコカトリスと模倣の魔物も居るに違いない。
「流石に戦ってられないし逃げるぞ」
『ブン。分かりました』
「「「ーーーーー!!」」」
そうして俺は進路を妨害するものだけを蹴り飛ばしつつ、逃げ出し始めた。
ちなみに模倣の魔物の本名はイエロードッペルです。
12/19誤字訂正




