表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Scarlet Coal』-殴り魔は自らの欲を満たす  作者: 栗木下
8:第四坑道・ミクヒィカ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

372/619

372:硬くて柔らかいフロア7

「フロア7だな」

『ブン。フロア7です』

 第四坑道・ミクヒィカ、フロア7。

 今回は電撃属性の半露天マップであり、俺が居る建物は壁の一つが全面鏡張りで、その壁以外は巨大な曇りガラスで全方位が覆われている。

 建物の外、曇りガラスの向こうの空では真っ黒な雲が出ていて、雷光を迸らせているのが見えると共に、曇りガラスで出来た通路や床があって、そこに居る何かの陰が見える。


「ん? 妙に柔らかい? いや硬い? なんだこれ?」

 エレベーターが到着し、一歩目を踏み出した俺はその感触に疑問の声を上げる。

 踏んだ床が妙に柔らかく、衝撃が完全に吸収されたと感じたのに、次の瞬間には全力で蹴っても問題がないと確信できるほどに硬くなったのだ。


≪それは硬くて柔らかい。どれほど激しくぶつかっても問題はなさそうだ≫

「ああなるほど。そういうハプニングなのか」

『ブーン。どうやら壁や床に衝突した際に生じるはずのダメージが無くなったようです。トビィにとっては……どうなのでしょうか?』

「地面と挟み込んで殴るとか、壁に向かって投げ飛ばした上でラッシュを仕掛けるとか、その辺のダメージ増幅方法が使えないのは地味にデメリットだな。だが、こっちもそれを受けないし、高所からの飛び降りの安全性が確保されるのはメリット。と言う感じだな」

『ブン。なるほど』

 どうやら坑道との衝突ダメージ無効化とでも言うべきハプニングであるらしい。

 なお、口には出さなかったが、俺個人にだけ生じるデメリットとして、普段無意識に感じ取っていた坑道の床や壁から伝わってくる振動や衝撃がないためだろう、分かる範囲が普段よりもかなり狭いように感じる。

 口に出すメリットがないので黙っておくが。


「ま、普通に探索すればいいだろ」

『ブン。そうですね』

 さて、今回のフロア7に出現する魔物は黄色のランクであり、種類はターキー、ゴースト、ゾンビに???が2種類予告されている。

 この内、ゴーストについては周囲が曇っているとは言えほぼ全面ガラスなので、注意深く周囲を見ていれば、奇襲を受ける可能性はだいぶ減らせるだろう。

 ゾンビはぶっちゃけ劣化スケルトンに近いので、遠くから見た場合の姿が近いゴーストと見間違えなければ、問題はないだろう。

 ターキーは……もっと問題ないな。

 ターキー、つまりは七面鳥だが、実はこいつら第二坑道・ケンカラシに出てくることもある魔物で、大きな声で鳴いて他の魔物にプレイヤーが居る事だけを教えるぐらいしか出来ない弱い魔物である。

 つまり、残り二種の未知の魔物次第ではあるが、今回のフロア7は比較的な楽なフロアになっているとも言える。


 まあ、ターキーの声を聞きつけたゴーストが鏡の向こうから襲ってくる、みたいな展開はあり得るので、警戒そのものは怠れないのだが。


「「「コカァコココココ」」」

「と、早速か」

『ブン。イエローターキーですね』

 と、次の部屋で移動したところで、黄色い羽根で全身が覆われたイエローターキーが三体居た。


「コケエエエェェェコオオオオォォォッ!!」

「うるさいが……うるさいだけなんだよな」

『ブン。そうですね』

 そして、大きな声で鳴く。

 正直、この鳴き声を聞いていると、お前は七面鳥であって鶏じゃないだろとツッコミを入れたくなるのだが……まあ、それだけだ。

 至近距離で聞いたとしてもダメージはないレベルで無害な鳴き声である。

 だが、先述の通り、他の魔物にもこの鳴き声は聞こえているし、黄色のランクの魔物ならば自主的に他の部屋に移動もするので、急いで倒す必要はある。

 例えイエローターキーの攻撃能力が単純な突く、蹴る、ぶつかるしかないような弱い魔物であってもだ。


「とりあえず近寄って……」

 なので俺は大きく右腕を振り被りつつ、二重推進で一番近くにいたイエローターキーに向かって駆け寄る。

 対するイエローターキーは俺に向かって嘴と翼を大きく広げ、“尾羽の間に隠れていた蛇の尾”を露わにする。


「コ……」

「っ!?」

 全身の肌が粟立ち、背筋が凍り付くような感覚がした。

 その後は反射的に動いていた。

 俺は気が付けば三重推進で飛び上がっていた。

 そして直後に……。


「ゴゲエエェェゴオオォォッ!」

 イエローターキーと見間違えていた魔物の口から灰色のブレスが放たれて、『昴』を含む、放たれた地点とその周囲を飲み込んだ。


『これは……ブブ。トビィ。すみません』

「構わない。それを他の魔物にそっくりな姿で作るとか、開発が流石の性格の悪さをしているだけの話だ」

「「「ココココココ」」」

 俺はブレスの範囲外に着地する。

 その間にイエローターキーと、イエローターキーそっくりな魔物は合流し、お互いの位置を素早く変えて、どれがそうなのかを分からなくする。

 そして、ブレスが晴れた後に出てきた『昴』は……。


 剣先から柄に至るまで、全てが灰色の岩になってしまった、見るも無残な姿に変化してしまった。


「とりあえず、大量のダマスカス鋼を台無しにしてくれた落とし前はつけてやる。イエローコカトリス」

「「「コオオオォォォ……コココココ」」」

 岩化ブレスとでも言うべき攻撃を放った魔物の名はイエローコカトリス。

 原典通りならば雄鶏に蛇の尾を生やしたモンスターである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ターキーの群れに混ざるコカトリスとは……姑息な真似を……
[一言] >≪それは硬くて柔らかい。どれほど激しくぶつかっても問題はなさそうだ≫ また変なの引いたな…… >なお、口には出さなかったが、俺個人にだけ生じるデメリットとして、普段無意識に感じ取っていた…
[一言] 素材の強制ランクダウンとはまたいやらしい。 しかし素材の個数が変わっていないのなら、一千個の岩製『昴』はまだまだ強力なのでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ