370:狩人たち
「グルアッ!」
推定ライムライカンスロープ……ライカンが飛び掛かってくる。
相手の動きや装備の詳細は分からない。
ただ、窺える範囲では手には何も持っていないようだし、軌道も掴めている。
「だいたい……」
だから俺はその予測に従って動き、ライカンの攻撃を回避する。
そして一歩踏み込んで……。
「この辺か!」
「!?」
俺の拳は殴った感触からしてライカンの腹に直撃したようだ。
皮膚を貫き、腹筋を破壊し、内臓を砕き、背骨を粉砕して、シールドがそれらを無かった事にするために身代わりとして消失した感覚があった。
「「キイイィィーーーーー!」」
「む……」
で、殴られた衝撃でライカンが吹っ飛んでいくのと同時に、俺の背後から甲高い音が響く。
すると、音が照射されたポイントに衝撃があって、シールドが……まあ、1%くらいは減った。
たぶん、攻撃用の超音波をライムバットたちが放ってきたのだろう。
「せいっ……まあ、無理があるか」
俺は反撃としてサーディンダートをパンプキンアーム内に装填し、ノーモーションで複数本射出。
勿論、闇雲に撃ち込むのではなく、先ほどの攻撃にあったライムバットが移動しながら攻撃しているがための偏りから移動経路を予測、居る可能性が高い場所を狙う。
狙うが……駄目だな。
流石にこっちの狙いが雑過ぎるし、相手の機動力とこの空間への適性が高すぎる。
一本も当たらなかった。
「さ……っ!?」
そしてここで俺の脇腹に衝撃が走った。
俺は反射的に肘撃ちを仕掛けるが、直撃はせずに掠るだけだった。
『トビィ!?』
「……。なるほど。闇夜で宙を舞う狩人はもう一体居たわけか」
俺は周囲を見る。
そこでかすかに見える影と、先ほどの掠りの感触から、俺は今の攻撃をしてきた魔物の正体を察する。
「グルウゥアアアァァァッ!」
「お前は黙れ。もう一体はたぶん梟だな。魔物としての名前はライムオウルと言うところか」
シールドなしで突っ込んできたライカンは適当に殴って仕留めておく。
で、もう一種類の空を飛んでいる魔物だが……羽音がまるでしなかった事、触れた感触が羽毛に近い物であったこと、この暗闇で難なく飛び回っていることを踏まえれば、十中八九、梟をモチーフにした魔物になるだろう。
「グレネードっと」
俺は空中へグレネードとフググレネードを投げて爆発させる。
爆炎と破片がその辺に居るであろう推定ライムバットと推定ライムオウルへと襲い掛かる。
が、どちらも多少のダメージは与えられても、有効打には程遠い感じで、ついでに言えばシールドゲージも出てこない。
「んー……」
『トビィ?』
シールドゲージについては……まあ、この暗闇のせいで確認できないんだろうな。
爆炎、爆風、爆音による被害は今回のフロア6が露天であり、坑道内と違ってそれらが集中したり、重なったりしないので、威力がだいぶ減衰されているようだ。
定番通りなら、この手の魔物は轟音に弱いんだが……成立しない環境である以上は仕方がないな。
「逃げるか」
『ブーン。まあ、仕方がないですね。戦うにしても、エレベーター内で戦う方がマシだと思います』
と言うわけで俺はエレベーターがある方へと攻撃を受けつつ移動を開始。
殴りたくても、暗闇で相手の位置が分からない、小さい、バットは遠距離型でオウルは奇襲型でカウンターもしづらい、と悪条件が重なり過ぎて殴れないのだから、ストレスではあるがこの場で殴るのは諦めるしかない。
そして、相手からの攻撃もこっちには通っていない。
さっきから頭や足に衝撃が来たり、背中を蹴られる感触があって、数もいつの間にか合計で五体以上に増えているようだが、攻撃が重なっても5%削るのがやっとな程度。
これぐらいならばヒールバンテージによる回復で追いついてしまうため、燃料削りにしかならないのだ。
「この状況で怖いのはまだ居るであろう未知の魔物が何かだが……そこはもうお祈りするしかないよな。出会いませんようにとか、変なのではありませんようにとか」
『ブン。そうなってしまいますね』
俺はパンプキンアームで進む先に床があるかどうかを確かめつつ進んでいく。
流石にこの環境で二重推進は……まあ、出来なくもないが、疲れるので止めておこう。
後、アドオン『昇降機方角把握』があってよかった。
おかげで、この暗闇の中でエレベーターを探し回るような羽目にならずに済んだ。
「アオオオォォォン!」
「あ、お前はおやつな」
「ギャイン!?」
『ブーン。これが性能差の暴力と言う奴ですかね?』
と、ここでライカンが襲い掛かってきたので、こいつは左腕で絡め取って捕縛すると、ヴァンパイアネイルを突き刺した状態で引きずる。
うん、これでライカンからシールドを吸い取れるので、シールド方面の心配は本格的になくなったな。
『トビィ。エレベーターです』
「じゃ、降下して……『焼夷ガス発生』っと」
「「「!?」」」
その後、エレベーターに着いた俺は、エレベーターが降下を始め、外部と遮断されたところで特殊弾『焼夷ガス発生』を使用。
エレベーター内を焼夷ガスで満たし、俺ごと焼き払う事でライムバットとライムオウルの集団を焼き尽くした。
≪設計図:アドオン『暗視処理・光量増幅』を回収しました≫
≪設計図:特殊弾『音源探知』を回収しました≫
『到着ですね』
「だな」
なお、手に入れたもので有用そうだったのはこの二つだが、聞き流したログの量からして、いつの間にか10体以上の魔物に俺は襲われていたようだった。
竜命金製のボディで無かったらと思うと、正直ぞっとするところである。
何はともあれフロア6.5に着いたので、一時休憩である。
竜命金製であること、燃料と緋炭石が十分にある事、その他探知周りが組み合わさる事によって問題なく探索していますが、普通は詰みフロアです。




