368:漏水のフロア5
「さてフロア5だな。坑道予測ではどう言ってたか?」
『ブーン。属性は氷結。坑道。出現する魔物はグリーンカッパとグリーンサーディンは予測されていましたね』
「だったか。フロア4が独特過ぎて頭から飛んでた」
俺はフロア5に着いた。
坑道予測についてはティガの言う通り。
カッパ種とサーディン種が揃っているなら、水場の一つくらいはありそうだな。
≪水が何処かからか流れ込んできているようだ。フロアが水没していく≫
「と、ようやくのハプニングか」
『ブン。逆に安心できますね』
どうやら水場はこれから出来るらしい。
冷気を放っている水が近くの壁から噴出しており、少しずつ岩の地面に溜まっていくのが見えた。
ちなみにこのハプニングは漏水と呼ばれ、比較的出現しやすいハプニングのようだ。
『トビィ。この水に触れ続けているのは……』
「まあ、ダメージにはなるようだな」
で、この水だが、冷気の出元が坑道の属性が氷結属性に依存しているためなのだろう。
しばらく触れているとシールドにダメージが入ってくる。
量的には……1分で10%と言うところ、つまり6秒で1%のダメージになるようだ。
無理やり耐えられない事もないが、出来るだけ触れない方がいいな。
「となると、実質的に時間制限付きマップと言えるな。急ぐぞ」
『ブン。分かりました』
と言うわけで移動開始。
俺はエレベーターがある方角を確かめた上で、そちらへ向かう二つの通路……水平方向と上る方向の通路から、上る方向を選んだ。
何か所から漏水しているのかは分からないが、現状坂の上から水が流れてくることはないようなので、多少はシールド減少を抑えられるだろう。
「クロー……」
で、次の部屋に入ったところでそいつの姿が見えた。
『トビィ。あれは……』
ティガが相手の名前を告げようとする。
「オラァ!!」
「!?」
が、俺はその前に三重推進で飛び出す。
そして殴り、『昴』を撃ち込み、シールドが剥がれた上で吹き飛んだそいつに向けてサーディンダートを複数本射出、貫き、始末した。
≪設計図:特殊弾『停止』を回収しました≫
「よし」
『ブ、ブーン……早いですね……』
直ぐにアナウンスが流れて、始末に成功した事が確定する。
うん、上手くいって何よりだ。
アレを自由にさせたら、碌でもない事になるのは、得られた特殊弾の名前からしても明らかである。
「実質的に時間制限があるフロアで、あの見た目の魔物が出てきたなら、そりゃあこう言う対応にもなる」
『ブ、ブン。なるほど』
俺は次の部屋に向かいつつ、先ほど倒した魔物について反芻する。
俺が今倒した魔物の見た目は、宙に浮かぶ、緑色の外装を持った蓋つきの懐中時計であり、サイズとしては直径30センチにも満たない程度だった。
顔の類はなく、俺が殴った時は時計の文字盤は蓋に覆われていて見えなかったが、少しずつ蓋が開いているところだった。
たぶんだが、蓋が開き切ったら、碌でもない事になっていたのだろう。
「で、結局相手の名前は?」
『グリーンクロックです』
「なるほど」
そんなグリーンクロックだが、殴った感触としては中身まできちんと作られた懐中時計そのものと言う感じだった。
なので、直接的な戦闘能力は高くないと思う。
しかし、モチーフが時計で、得られた特殊弾が『停止』で、これで相手の動きを止められないと言うのは……あり得ないだろうな。
そして、一度停止させられたなら、どのような停止なのかにもよるが、碌な事にならないのは確実だ。
断言してもいい。
「「「ゲコオオォォ!!」」」
「「「サササササ……」」」
さて、その後グリーンカッパとグリーンサーディンを始末し、回収できるマテリアルタワーを回収しつつ、俺はエレベーターがある方向へと向かっていく。
その際、似た方向に向かう通路が複数あれば、出来るだけ上る方を選んで進んでいく。
で、二体目のグリーンクロックは遭遇せず。
また、もう一体居るであろう新種の魔物にも遭遇せずで、順調に進んでいく。
『トビィ』
「あー……まあ、アドオン『昇降機方角把握』の欠点だな」
結果。
突如としてエレベーターがある方角が180度変わった。
それはつまり、俺が今エレベーターがある場所の真上か真下を通過したという事である。
そして、先述の通り、俺はずっと上る方の通路を選んできた。
で、俺が今居る部屋だが、ここから更に上る通路は存在せず、下る通路しか存在しないようだった。
『どうしますか?』
「ま、こうなれば強行突破するしかないだろうなぁ」
こうなればエレベーターがある場所はほぼ明確だと言っていいだろう。
今はもう冷たい……いや、ゴーレムの機体が凍り付き、活動に支障が生じるほどに低温の水底に沈んでいるに違いない。
「はぁ、こういう時に俺に運がないのを実感するな」
『ブン。そうかもしれませんね……』
なお、ダメージは受けるが、竜命金製のボディの耐性、ヒールバンテージによる回復、大量の緋炭石による燃料補給が合わされば、強行突破はそこまで難しくはなかったので、俺は無事にフロア6には辿り着いた。
ちなみにだが、未知の魔物には結局遭遇しなかったので……その魔物はもしかしたら低温や水が駄目な魔物だったのかもしれないな。




