365:ヴァイオレットドラゴン
「ふぅ、危ない危ない」
ヴァイオレットドラゴンが拒絶属性のブレスを放った瞬間。
俺は横へ二重推進で跳んで、扇状に放たれたブレスの範囲外へと逃れていた。
「グルルルル……」
「さて、ドラゴンか……」
『ブン。ヴァイオレットドラゴンです』
で、素早く周囲を確認。
罠の類としては拒絶属性の光を淡く放っている杭が数本あって、少しずつ光が強まっているので、恐らく定期的に周囲へ攻撃を仕掛けてくるタイプだろう。
ハプニングのアナウンスはなかったので、ハプニングは無し。
他の魔物の姿も無し。
これならば、目の前のヴァイオレットドラゴンとの戦闘は集中して行えそうだ。
「グルアッ!」
「パワーはあるし、拒絶属性だから受けるわけにもいかないが……」
さて、ヴァイオレットドラゴン……ドラゴン種はかなり厄介な魔物だったはずである。
ただ、その厄介さは搦め手を使ってくる厄介さではなく、単純に高い身体能力と強烈なブレス攻撃による厄介さだったはずだ。
なので、属性相性もあって攻撃は受けられないが、今しているようにただの前足振り降ろしなら、普通に動いて避けるだけである。
「ふんっ!」
「グルッ!?」
むしろ問題はこちらからの攻撃が通じるかだな。
と言うわけで、俺はとりあえずヴァイオレットドラゴンの脇腹を殴り、『昴』を撃ち込む。
結果、与えたダメージはシールドの3割ほど。
『今のトビィで3割ですか。とんでもない話ですね』
「ドラゴン種の相手のステータスの高さがよく分かる結果だな」
「グルアアッ!」
ヴァイオレットドラゴンは尻尾を振り回す、背の翼を軽く羽ばたかせてからのボディプレス、長い首をよく動かしてのブレス、乱雑な前足の振り回しと激しい攻撃を仕掛けてくる。
また、部屋に仕掛けられた杭も周囲に光を放って、ダメージを与えようとしてくる。
俺はそれらの攻撃を避けつつ、少し考える。
とりあえずティガの言うとおり、ヴァイオレットドラゴンのステータスがとんでもないのは確かだ。
今の俺が並の魔物……より正確に言えば、ドラゴン種と同じサイズの別の菫のランクの魔物を殴ったなら、一発でシールドが割れ、二発で木っ端微塵になる。
そんな攻撃を3割のダメージで済ませたのだから、とんでもない話である。
と同時に、先ほど殴った時の感触を頭の中で反芻する。
あくまでも感覚的な話になるが、緑の魔物を殴ったぐらいの強度はとりあえず感じた。
そして、それだけの強度がある体を魔力で強化していることもなんとなく分かった。
後は相手の体の構造なんかも分かったので……。
「ま、この分ならイエローかオレンジくらいまでは支障なく狩れるな。とっとと殴り倒すぞ」
『ブン』
「ーーーーー!?」
俺は一気に殴りまくってシールドを削り切る。
まあ、所詮はヴァイオレットと言う事で、黒の魔物ともやりあえるであろう今の構成で苦戦するはずがないのだ。
「グルアッ!」
「折角だから試すか。せいっ!」
ここでヴィオレットドラゴンは前足の振り降ろしを放とうとする。
なので俺は二重跳躍し、蹴りでヴァイオレットドラゴンの爪を迎撃してみた。
結果は?
「ーーーーー!?」
「おうし、問題なし。ほぼ一方的だ」
俺のダメージはほぼ無し。
対するヴァイオレットドラゴンは弾かれた勢いを抑えきれず、嫌な音立てつつ曲がってはいけない方向に曲がった。
どうやらアルメコウαレッグの拒絶属性耐性はきちんと機能しているし、竜命金製の体と合わせればほぼ一方的に蹴れるようだ。
『トビィ』
「分かってる。とっとと終わりにするぞ」
「ーーーーー!?」
その後さらに数回攻撃。
ヴァイオレットドラゴンのサイズがサイズなので、ただ殴っても、一発では骨を折り、肉を傷つけ、内臓を痛めつけるのが限度であって、即死させるようなことは出来ないが確実にヴァイオレットドラゴンにダメージを与えていく。
「ふんっ!」
「ーーーーー……」
そうして最終的に首の骨を叩き折って身動きを取れなくした上で心臓を『昴』で突き刺し、撃破した。
≪生物系マテリアル:骨・拒絶を1個回収しました≫
「ドラゴン産のマテリアルだが……普通のマテリアルなんだよな?」
『ブン。普通のマテリアルです』
入手出来たのは残念ながらマテリアルだった。
スコ82では骨などの生物系マテリアルに回収元である魔物の特徴は反映されないため、この骨はただの骨である。
よって、ハズレである。
『トビィ、狩っていきますか?』
「ドラゴンの設計図は優秀そうではあるが……わざわざ今稼ぐ意味は感じないな。先を急ぐぞ」
『ブン。分かりました』
俺はエレベーターに向かって移動を始める。
ドラゴンの設計図が欲しいなら、それこそ集図坑道・ログボナスで集めればいいだけの事なので、ここで稼ぐ必要はない。
「グルルル……」
「「「ブブブブブ……」」」
「いや、二体目早過ぎないか……?」
『ブーン。まあ、トビィですから』
などと言っていたら、次の部屋にもヴァイオレットドラゴンが居たし、お供としてヴァイオレットホーネットも居た。
で、それを倒して次の部屋……は、流石に大丈夫だったが、結局フロア3のエレベーターに乗るまでにヴァイオレットドラゴンを三体も倒すことになった。
なお、一枚もドラゴンの設計図が手に入らなかった事を考えると、ドラゴンと言う魔物から設計図を得られる可能性は低めに設定されておるのかもしれない。
「はぁ、とりあえずフロア3.5、そしてフロア4だな」
『ブン。そうですね』
なんにせよ、俺はフロア4へ無事に降りることは出来たのだった。




