364:ゴリラゴリラゴリラ
「さあ、今日の第四坑道だ」
『ブン。頑張っていきましょう』
俺は第四坑道・ミクヒィカに全身竜命金製と言う本気の構成で突入した。
さて、今回のフロア1は?
「物理属性、坑道、ハプニングは……」
『ブーン。なさそうですね』
「んー。吉と見るか凶と見るか……」
ごく普通の全面岩製の坑道であり、ハプニングは無しである。
何度か挑んでみた感想として、第四坑道・ミクヒィカのハプニングは浅い層で落盤事故、ランクアップ、殲滅戦と言った厄介なハプニングが起きてくれた方がむしろ嬉しかったりするんだよな。
だからフロア1はリトライが容易であるし、何かしらは来てほしかったんだが……まあ、来なかったら来なかったで良しとしよう。
「とりあえずフロア7までは即降りで急ぐか」
『ブン。分かりました』
俺はアドオン『昇降機方角把握』が指し示す方向に向かって移動を始める。
「「「バウバウッ!」」」
「「アオーン!」」
「ん?」
で、次の部屋に入ったところで、今回の探索の初遭遇。
ホワイトハウンドが5体と思ったが……2体ほど毛が長いというか、牙や爪が鋭いというか、とにかく微妙に異なるな。
「まあ、どれも殴り飛ばせば終わりか」
「「「ギャイン!?」」」
とは言え、いずれもシールドすら持たない白の魔物。
俺がジャブを撃ち込むと、それだけで体が木っ端微塵に吹っ飛んで戦闘終了である。
「ティガ」
『ブーン。先ほどのはホワイトハウンドとホワイトウルフですね』
戦闘終了で流れるアナウンスを聞き流しつつ、俺はティガに先ほどの魔物の正体について尋ねる。
すると帰ってきたのは二種類の魔物の名前だった。
「ホワイトウルフ。狼か」
『ブン。その通りです』
ハウンド種は猟犬で、ウルフ種は狼。
見た目が非常に似通っている二種類の魔物だが、種族が異なるという事は能力に何かしらの違いがあるという事だろう。
とは言え、今の俺の戦闘能力と白の魔物のスペックでは、その差を認識する事は叶わないようだが。
「高位になってきたら何かしらの差はあるんだろうな。ハウンド種もランクが上がってくると何処までも追ってきて面倒くさいらしいし」
その後、多少の回収物を得つつも、他には何事もなくエレベーターを発見し、フロア1.5へ。
で、フロア1.5で一応坑道予測を見てからフロア2へ。
「フロア2もハプニングなしか」
『ブン。そのようです』
今回のフロア2は氷結属性、坑道、ハプニングは無し。
まあ、フロア2も出てくる魔物がパープルで、まだシールドがないので、よほど変なのが来ない限りは余裕である。
「ザアァァイ……」
「コーン……」
と言うわけで、パープルオーガやパープルフォックスを撃破しつつ、エレベーターがある方向に向かって真っすぐに移動。
「ウホッ?」
「ゴリラか」
『ブン。パープルゴリラですね』
そしてフロア2の新顔は全身が紫色の毛に覆われたゴリラだった。
うん、本当にテレビで見るようなゴリラを紫色に染めただけのような、見事なゴリラだった。
きっとブラックゴリラなら、現実のゴリラと見分けがつかないであろうぐらいにはゴリラだった。
ナックルウォークの体勢でこちらを見つけ、見つめている。
「「「マッツウ?」」」
「……」
『トビィ? どうかしましたか?』
そんなパープルゴリラの周囲にはパープルパイコーンが複数体。
どうしてだろうな?
非常に嫌な予感がして仕方がない。
「ウ……」
「マツゥ?」
パープルゴリラがパープルパイコーンの一体を掴む。
「ホウ!」
「ですよねー!」
「パイイイィィィン!?」
そして俺に向かって勢いよく投げつけてきた。
「ふんっ!」
「パイイイィィン!?」
まあ、このランクならば別に問題は起きない。
俺は飛んできたパープルパイコーンを殴り飛ばして粉砕すると、粉砕場所を中心として生成された火の海を二重推進で飛び抜ける。
「オラァ!?」
「ウボァー!?」
「「パイイイィィィン!?」」
で、そのままパープルゴリラも残るパープルパイコーンも適当に殴って粉砕し、戦闘を終了させる。
『トビィ、大丈夫ですか?』
「問題はないな。しかし……」
『しかし?』
「ランクが上がったら、絶対にヤバい魔物になるぞ。あのゴリラ」
『ブーン。そうですか』
これと言ったものはないので、やはりアナウンスは聞き流す。
しかしゴリラ種は……問題だな。
今はパープルパイコーンだったからどうとでもなったが、もしも投げられるものの重さやサイズに制限がなかったら、それこそプレイヤーも投げられるとしたら。
環境、他の魔物、ランクアップに伴う強化などによる部分は大きいが、かなりの脅威になる予感がするな。
まあ、高ランクになっても警戒する必要がない魔物なんてそもそも居ないと言ってしまえばそれまでなのだが。
「さてフロア3だな」
それはそれとしてフロア2のエレベーターにも到達。
俺はフロア3に向かう。
見えてきたのは拒絶属性特有の光に包まれた岩製の坑道。
フロア3からは敵がヴァイオレットのランクになり、シールドを得る点だけでも注意が必要だが、属性的にも少し注意が必要か。
そこまで俺が思った時だった。
「グルルルル……」
「ん?」
背後から唸り声が聞こえてきた。
どうやら最初の部屋に魔物が居るパターンであるらしい。
なので俺は戦闘に備えて振り返る。
「あー、ここで来るか……」
そうして俺の視界に入ってきたのは、菫色の鱗に全身が覆われ、長い首、蝙蝠の翼、牛の角を持つ、体長が10メートル近い巨大なトカゲ……。
「ーーーーーーー!」
つまりヴァイオレットドラゴンであり、ヴァイオレットドラゴンは俺の乗るエレベーターがフロア3に着くと同時に光り輝く炎によるブレス攻撃を放ってきた。
05/18誤字訂正




