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異世界 ②

探索を始めて二時間経ったころ、彼はある生き物に出合っていた。


「…クゥ〜ン…」


(……犬…いや、狼かな?)


彼の足下に倒れている狼?っぽい何か。それは、彼の姿を見ると、弱々しく鳴いて、ウルウルとした瞳でみつめてくるのだった。(彼視点)見つめあう一人と一匹。やがて、根負けしたように、狼?にまずは怪我がないかどうか調べはじめるのだった。この森にいる時点で、魔物であるはずなのだが、彼はそのことを頭から忘れているのだった。


「外傷は…ないな。となると、栄養失調かなにかかな?……ていうか、何か体から抜けていく感覚があるんだが、気のせいか?」


魔物の怪我がないか、触診していると、突然魔物から光があふれ輝きはじめた。


「うわっ!?…な…何だ?」


魔物は光り輝くと、少しずつ大きくなっていく。やがて、輝きがおさまると、そこには、一匹の白いライオンがいた。



この世界の魔物には、強さに応じて、ランク分けされている。弱い順にF、E、D、C、B、A、Sである。


Sランク魔物『白銀の獅子王』これが白いライオンの正式名である。ではなぜ、こよのうな魔物がここにいて、弱っていたのか。

まず、魔物は一部を除いて、魔素が一定量ある場所で突然に生まれるのである。そうして生まれた魔物は、周囲の魔素を吸収して、生きていくのである。

神魔の森では、例え高ランクの魔物でも、自身の縄張りから追い出される。この森では、珍しくないことだ。


例に漏れず、さきほどの狼は、『白銀の獅子王』が縄張りから追い出され、魔素の薄くなっている場所に来たため、弱ってしまった姿なのだった。

そして今、手を反して彼の魔力を吸収し、元の姿(未完全)に戻ることができたのだった。


(なるほど、さっきのは狼じゃなくて、ライオンだったのか。……では、さらば!)


弱った状態だったらなら、まだしも、いきなりライオンが目の前に現れたなら、逃げたしてしまうのも無理もないだろう。だが、この選択はこの状況ではよい判断ではなかった。

彼は来た道を全力で走る。そして、そこにいたのは……。


「グギギ…」


「…ゴ…ゴブリン……」


そこには、杖をもったゴブリンがいた。そして、ゴブリンは彼を視界に捉えると杖を掲げる。すると直径30㎝の火の玉が出現し高速で彼に向かってくるのだった。


「うぉ!?あぶねぇ!!」


彼は間一髪火の玉を避けるも、火の玉は木に直撃し木の破片を、周囲に撒き散らす。そして、運悪く彼の足を切り裂いた。


「…や…ヤバい…」


足を怪我して動けない彼を見て、ニタリと卑しい笑みを浮かべるゴブリン。そして、容赦なく杖を振りかざす。さきほどと同じ火の玉は、寸分たがわず彼に向かっていく。そして、火の玉は彼を焼き尽く…


「ガアァ!」


…さなかった。彼を助けたのは、さっきの獅子王。獅子王は彼の前にくると、腕の一振りで火の玉をかき消した。さらに、ゴブリンを威嚇し戦闘体制にはいる。


(何がどうなってんだ?とりあえず、足をどうにかしないと)


獅子王が助けたのかは分からない。だが、どっちにしても、足を治さないとまずい。けれども、足の怪我は思ったより深い。しかも、治療する道具などあるはずもなかった。


「どうすれば……そうだ!魔法!魔法ならどうにかなるかも」


もちろん魔法なんて使えるのかは分からない。でも、今この状況で頼りなるのは、それしかなかった。そして、傷に手をかざして傷が治るイメージをする。


「治れ!治れ!治れ!」



少しこの世界の魔法について話しをしよう。魔法を発動する条件は簡単。まず、魔力があること。次に、魔力を体内から体外に放出が出来ること。最後に、起こしたい現象を明確にイメージすること。以上の三つが揃えば、ある程度発動することが出来る。


そして、彼は魔力を持っている。さらに、魔力の放出は獅子王に魔力を吸収されたときに、感覚を無意識に掴んでいる。最後のイメージは、医者を目指していた彼なら、イメージするのは容易たった。ということは……


「あっ!出来た!」


傷はどんどん塞がっていき、ついには完治した。と同時に周囲の状況を確認するために顔をあげる。そこには、右肩から左脇腹にかけて三本の傷をつけ倒れているゴブリンと、こっちを見つめながら近づいてくる獅子王。

逃げられない。そう思いおもわず目をつむる。だか、こちらの予想に反して、獅子王は体を擦り付け、彼の横に伏せた。

どうやら、攻撃の意志はないようだった。


(ぶる…ぶる…)


初めて向けられた殺意、すぐそこに迫ってきた死を思いだしてしまい、彼は震えていた。


「俺は…俺はなんてバカなんだ。こんなにも……こんなにも生きたかったなんて…」


後悔の念が押し寄せ言い表せない気持ちなる。気が緩むと今にも泣き出してしまいそうだった。…ふと、視線を感じ顔を横に向けると、獅子王が見つめていた。彼を救った命の恩人。今もなお、彼の側に居続けている。

ここは異世界。過去を嘆いても意味はない。そう思った彼は決心する。『生きよう』と。そして、ゆっくりと手を伸ばし獅子王の頭を撫でる。


「助けてくれて、ありがとう。…俺はこの世界を生きていこうと思う。でも、力が足りない……君の力を貸してくれるかい?」


「ガウ!」


まるで、言っている意味がわかっているかのように鳴き返す。それを肯定と受け取り言葉を続ける。


「ありがとう…名前がないと不便だよね?…う〜ん…あ、思いついた。ロロ、君の名前はロロだ。そして、俺の名前は…」

(前世の名前なんて、未練がましい。新しい名前にするか)


「俺の名前はシルド。よろしくな、ロロ」

「ガウ!」


いよいよ、彼の旅は始まった。

やっと、主人公の名前でました!

『白銀の獅子王』の読み方はご自由に読んでください。

明日も頑張って更新したいと思います。

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