異世界 ①
薄暗い不気味な雰囲気の森の中で彼は目を覚ました。
「うぅ…ここは…どこだ?確か家に…いたぱずだ」
ここが病室ならすぐに理解できただろう。しかし、見渡す限り目にはいってくるのは木だけであった。そして、混乱半分、現実逃避半分で彼が呟いた言葉は核心をついていた。
「…まさか…異世界とか?…いやそれはない、はず」
そう異世界である。これが、真っ白の空間で神を名乗る老人がいたりとか、魔方陣がある部屋で目の前に王女様がいたりなど、よくありがちなことがあったなら彼の疑問に答えてくれただろう。
しかし、そんなことはなく彼以外誰もおらず、回りを見渡すと木ばかりである。
「いや、今までのが全部夢で、実は遭難中で記憶がごちゃごちゃしてるとか?…くそっ情報が足りない、とりあえず少し辺りを詮索してみるか」
そんなことはないと思いながらも、嫌な予感しかしない中で彼は現実逃避ぎみのやや自分に都合がよい解釈をしながら、周りを見て回り始めた。そして、この後彼は一番出逢いたくない物に遭遇するのだった。
「……うそ、だろ」
歩き始めて数十分経ったころ、彼は見つけてしまった。小柄で薄汚い布のようなものを着て、肌の色は緑色で頭に角があるアイツ。ファンタジーで同じみのスライムに並ぶ最弱のアイツ。
そう、ゴブリンがいたのであった。
彼は茂みの中から確認してもゴブリンであることから「ここは異世界なのか…」と納得して心の整理をしていると、ゴブリンに動きがあった。ゴブリンは手に持っていた斧を構えると、目の前にある木に振りかぶった。
ガン!ガン!ガン! ……バキバキッ…バキ………ズゥゥーン!
(いやいやいや!直径50㎝ある木だそ!?それを三発で倒すとか、ゴブリンとか弱い魔物代表じゃないのか?)
一部始終を見た彼は、見つかるとヤバいと思いその場からすぐに逃げだした。もちろん気付いていると思うが、今のゴブリンがこの世界の平均的な強さではない。ここの魔物、いやこの森がおかしいのだ。彼がいるのこの森の名は″神魔の森″。この世界で最も魔素が濃い場所であり、そして最も危険な場所でもあった。
例えこの森で一番魔素が薄い場所でも、一般人が入ったら一分も経たずに体を壊す。このことから、この森の恐ろしさが分かるだろう。
「どうすりゃいいんだよ?」
彼はそう呟きながら森を駆けていった。




