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4-7 みんな婚約者のことが好きすぎる(1/6)

この4-7で、本編が完結となります。この更新を含めてあと7回、最後まで見守っていただけると嬉しいです。

「エド様、わざわざお迎えに来ていただいてご負担ではありませんでしたか? 私、お兄様とお義姉様と一緒に向かうのでも全然よかったですけど……」


 馬車の心地よい揺れにゆられながら、私は対面に座るエド様へと話しかけた。エド様は今日はいつぞやの夜会の時みたいに、前髪を上げてきっちりと正装している。

 普段の護衛騎士としての服もそれなりにかっちりしてるけどね、それとはまたちょっと違ってもっと豪華というか。まあそうだよね……今日はお祝いの席で、エド様は主催(ホスト)側だから。

 私たちの馬車は今、エド様の妹で私の友人フェリシア様とその婚約者であるリーノ様の婚約披露宴の会場へと向かっているところ。

 

「いや~、そういうわけにはいかないよ」


 まあ、恰好がしっかりしてても口調はいつもの通りだわ。へらへら笑ってるのも平常運転。

 

「エッちゃんは主役の親族としてあれするだのこれするだのってないの?」


 私の隣に座るティナお義姉様が口を開いた。お義姉様、あの観劇の日以来本当にエド様のことエッちゃん呼びしてるんだよ……。

 最初は彼女なりのジョークかと思ったんだけど本当にやるんだもんね。いやすごいよね。もう慣れてきちゃったけど。

 

「あ~……そうだねえ、本番の結婚式の方は何かしらあるかもだけど、今日はあくまで婚約の披露だし……呼んでるのもほとんど身内だけだから。それに今回は義兄さんたちも来てるから男手も足りてるしね」


 義兄さん……お二人のお姉様のそれぞれの旦那さんってことかな。確か上のお姉様の旦那さんは入り婿、下のお姉様の旦那さんは北のダクス辺境伯の嫡男だったっけ。

 

「でも午前中は神殿での儀式の立ち合いもあったんですよね? それからこちらへ来ていただいて……大変ではなかったですか?」

「ですよね、一度帰宅して身支度して……ですもんねえ」

「女性ならともかく、俺ら野郎共の身支度なんてすぐすぐ。まあごちゃごちゃ言ったけど結局ねえ、ただ単に俺がアリスちゃんに少しでも早く会いたかったから迎えに来ちゃったってだけなんだけどね!」


 ひえっ、急にそういう爆弾みたいな発言仕込んでくるのほんとやめてください! えへっ! じゃないのよ。

 ……なーんか最近、こういう直球(ストレート)な言い方すること増えたよなあこの人……。遠慮がなくなってきたというか、最近どうも私への好意を隠す気がないように思えるんだよ。

 私もイヴァン様やニコラス様とのあの日の会話を経てしっかり自分の気持ちを自覚しちゃってからこっち、なんかもう……居たたまれないよね……! 困るって思ってるのは本当なのに、その気持ちと裏腹に口元は勝手ににやけていくし……。はぁ……顔が熱い……。

 

「迷惑じゃなかった?」

「いえっ、迷惑なんかじゃないです! エド様が大変だったんじゃないかってちょっと心配になっただけで、その……まあ、迎えに来てくださったことは……普通に嬉しいですし…………」

「えーほんと? よかった~。俺についてはほんと全然大丈夫だから。でも心配してくれてありがとうね!」


 …………すっごい嬉しそうに言うんだよなぁ……! なんかもうね、エド様が私に向かってこうやって微笑んでくれるだけでこう、ものすごく安心するというか……ふわふわした幸せな気分になっちゃうというか……。

 ああもう、私も大概ダメだわ。自覚はあるんだよ。

 

 あ~なんかほら、馬車の中の空気が微妙な感じになったじゃん……。

 我慢できない、とでも言いたげにティナお義姉様が必死に笑いをかみ殺してるのがわかる。扇子広げてるけどわかるよ、その奥ですっごいニヤニヤしてるでしょ! クロードお兄様も一見笑顔だけど、よく見ると珍しくちょっと所在なさげに笑顔が引きつってるな。お兄様、普段少々のことでは動じないのに珍しい……エド様の私に対する挙動に関してはたまにこういう感じになるよね。やっぱり身内のこういうのってなんか気恥ずかしいのかなぁ。

 まあ、身内の目の前でイチャイチャならお兄様とお義姉様の方が先に始めた専売特許でしょう? この際、普段の私の気持ちを思い知ればいいんだよ。


***

 

 馬車の行先はリュード侯爵家の王都タウンハウス。大通りの角を曲がって馬車の窓の外に邸が見えるくらいに近づくと、賑やかな話し声が馬車の中まで聞こえてきた。

 先に降りたエド様に手を引かれて馬車を降りる。庭が一面華やかに飾られているねぇ……早春の今、まだ咲く花は限られてる頃なはずだけど、そこはさすが今の季節のお花を最大限取り入れて工夫して豪華にしてある。今日はガーデンパーティー形式で立食スタイルと聞いているけど、天気がよくて暖かくてよかった。

 フェリシア様はご身分が侯爵令嬢な上に、お父様は騎士団長だし勤め先はシュトルヒ公爵家だし……ということで多分本番の結婚披露宴には下手すると国内外の王族レベルもわんさか来るんじゃないかっていう感じなんだろうけど、今日はあくまで婚約(・・)の披露宴なので。

 リーノ様もね、身分は子爵家の次男ではあるけどさ。優秀な成績で留学先から帰ってきた若手有望株だものね~。来たる結婚披露宴は、ほんとすごいことになりそうだわ。

 

 そもそもフェリシア様もリーノ様もこの婚約披露宴にはあまり乗り気じゃなかったみたいなんだけど、フェリシア様のお姉様お二人……跡継ぎで婿取りしたニケ様と辺境伯嫡男に嫁入りしたヴェレダ様のお二人ともがねぇ、こういう会を開催したらしくて。それでフェリシア様だけしないのもなんだかなあってことになったんだって。

 特にヴェレダ様は結婚披露宴をダクス辺境伯領ですることになった関係でこっちの王都での婚約披露宴を結構派手にやったらしいから、それに比べると今日はかなり小規模みたいだよ。

 

 庭園の入口でまず最初にご挨拶をしてくださったのがリュード侯爵ヴィルヘルム様とその奥様イルムガルト様だよね。さすがの騎士団長とその奥様だ……今日は騎士服ではなくて正装だけど筋肉がすごいし、奥様の方も元騎士様なだけあってか姿勢がものすごく綺麗。

 そのお隣のレーヴェ子爵夫妻……リーノ様のお母様のマルグレーテ様は、子爵夫人なのにいきなり侯爵家に担ぎ出されたからなのか緊張でカチコチになってるのがわかってちょっと気の毒だな~。まあ、お隣の子爵アルノルド様が落ち着いてどっしりとしてらっしゃるから大丈夫でしょう。

 こう見ると百面相もとい表情豊かなバート様がお母様似、無表情もとい寡黙で冷静なリーノ様がお父様似なのかもね。

 

 会場はもう既にたくさん参加者が集まっていて、私たち四人もまずは最奥の主役二人へ挨拶へ行く。

 

「クロード博士にご婚約者様、それからアリス様も。今日は来てくださってありがとうございます」

「お二人とも、ご婚約おめでとうございます」

「ありがとうございます、アリス様。私の数少ない友人の一人として来てくださって、本当に嬉しいです。お兄はこの邸のことは全部勝手知ったるものだから、今日は一日アリス様の下僕としていいように使ってやってくださいね。お兄、ちゃんとアリス様をエスコートしなさいよ!」

「はいはい、わかってるよ~」


 エド様が苦笑している向こう側で、クロードお兄様はまたリーノ様に突撃して肩を組んでる。本当に仲良しというか、クロードお兄様がリーノ様を気に入ってるというか。少し距離をとっているティナお義姉様も、やれやれって感じの表情で見守ってるよ。

 

「お庭、とっても綺麗ですね……! 今の季節のお花が、色味もすごくバランスよく揃えてあって……素敵です」

「ほめていただいて嬉しいです。庭師に伝えておきますね、きっと喜ぶと思います」


 それはもう、お嬢様の門出を祝う場所を庭園でやるってことになったわけだもの、庭師さんたちも張り切っただろうねえ。

 

「今回はうちの家の庭師を、その……アルノルドお義父様……がですね、指導して一緒に整えてくださって……」


 お義父様……? あ、そうかリーノ様のお父様のレーヴェ子爵アルノルド様か。ちょっとぎこちない言い方しているけど、これはもしやフェリシア様……お義父様(・・・・)って呼ぶのがまだちょっと気恥ずかしいとか? 

 ……あらあらうふふ、そんなところも初々しくて可愛いらしいよねえ~。ふふふ〜。

 

「ああ。レーヴェ子爵のアルノルド殿は王宮庭園管理官でいらっしゃるからな」


 あっ、そうかなるほど。ガチの本職の方だわ。そりゃノウハウ持ってらっしゃるよね。

 と、いうかね。この普段からよく聞く声はもしや……と振り返る。そこには、私が思い浮かべた通りの人物が立っていた。

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