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4-4 ちょっと展開が早すぎる(5/5)

「あとは……心配なのは、アリスさんですね」


 ん? 私? 

 皆の視線が急に自分に集まって、私は思わず目を瞬かせた。

 

「そうですね……夜会でもやはりかなり注目を集めていたみたいです。お怪我をなさって早くお帰りになったようですよとお伝えしたら見るからにがっかりしていた方が一人や二人ではありませんでしたから……」

「えっ……私、そんなに大人気だったんです……?」


 え~、ほんとに……? 全然ピンと来ないんだけどなぁ……。

 

「アリスさんはやはりご自分の価値を正しく理解なさっていませんね。まあ、やはりいくらか細工(・・)がなされているようですが。それでも少し目ざとい人はすぐあなたの有能さに気づくでしょう。はやくそれなりのしっかりした婚約者を定められた方がよろしいですよ。……いえまあ、打診してすぐに取り下げした僕が言うのもなんですけど」

「そうですね……下手な相手から無理を通されないくらいの……それなりの爵位のある家の子息がいいとは思いますよ……」

「ですよね……」

「あのさー。そこで二人して俺の顔を見るのやめてくれない? すごい嫌な()を感じるんだけど……」

「いや別に私だって二人の間に何もない状態で藪から棒に、お兄に婚約者に立候補しなさいよなんて言うつもりはないけど……。でも、夜会の日だって結局はアリス様のことを心配して参加したのよね? 少なくともお兄はアリス様のことをかなり気にかけてるように見えるんだけど……。今日のパーティーだってそもそもはお兄がアリス様のために企画したものだって聞いたし」


 まあそうだよねぇ。何とも思ってない相手のために、ここまで手を回したり企画したりなんてしないよねぇ……ってことだよね?

 

「いや……そもそも今日の食事会は、俺がアリスちゃんのために企画したというよりはね。俺は単に料理長と夜会の食事の話をしてただけなんだけど、そこから話がでかくなったって感じかな。この食いしん坊ちゃんが、せっかくの夜会だったのに何も食べられなかった〜残念だったって言ってたの、それを伝えただけなんだよ」

「は、え!? そうだったんですか、まさか皆さんの前でその話を!?」


 ちょっと待ってください、それってつまり使用人の皆さんの前でエド様が私のことを食いしん坊って言ったり、皆さんに私が食事目当てで夜会に行ったのがバレたってこと!?

 

「じゃあ今日のことも迷惑だった?」

「いやっ、え、そんなことはないです!! お料理すごく美味しかったです……!!」

「おお……うん、食べ物の話になると急に前のめりになるよねアリスちゃん、やっぱおもしろいな~可愛い」


 あぁ~もう、恥ずかしい! 追撃しないで!! フェリシア様も微笑ましい目で見ないで!! 

 もうやだ。食事の話から話題を変えよう!

 

「そのっ、今日の夕食についてももちろんお礼をお伝えしないとなんですけどね! もう一つ……休んでる間のお見舞いのお花についてはタイミングを逃しててまだ直接お礼を言えてなかったですよね? わざわざタウンハウスまで毎日来ていただいて……でも来客とかちょうど寝てたとかでお会い出来なくてお礼が遅くなっちゃいましたが、ありがとうございました!」


 そう、夜会の翌日にチューリップを贈ってくださったんだけどね。その次の日もさらに翌日も、毎日来てくださったらしいんだよね。ピンクのバラとピンクのガーベラでした。

 初日は普通にティナお義姉様が来てたから会えなかったけど、よく考えたら私ずっと寝着みたいな恰好だし侍女もいないから髪とかも整えられないし、正直顔を合わせられる状態じゃないな……ということで、『就寝中ですので』って面会は断ってもらってたの。

 正直、二人だけで会うってなるとなんか気恥ずかしいなって気持ちもあって。いや、もちろん会うとしても執事とかに立ち会ってもらうわけだから二人きりでとかじゃないけどね! ……ちょっと待って、私これ、何の言い訳だ……?

 

「へぇ〜毎日……」

「お花を……? なるほど……」

「なるほどねぇ〜」

「……お前ら婚約するって言ったそばからいきなり呼吸ぴったり合わせてくるじゃん、なんなんだよ怖いよ」


 フェリシア様とリーノ様に対して呆れた態度をとりながらも、顔がちょっと赤いなエド様。まあ、わざわざ毎日贈ってくださるお花が、全く何の深い意味もないわけはないよなとは、私もさすがにわかるけどね……? お義姉様にもそこは散々ツッコまれたし。

 

 う~ん、エド様がいじられるのをそんなに恥ずかしがるなら、お礼は二人だけのときに言えばよかったかな……? でもなんか……二人だけの時に言ったらそれはそれでなんかこう、変な雰囲気になりそうだよね……? 

 ……いや、変な雰囲気ってなんだ。自分で言っておいてなんだけど、よくわかんないけど……。

 

「本当はお花じゃなくて甘い物とかを贈りたかったけど……もし他の人からももらってたりしたらさ、食べきれなくても大変だもんね。お花なら被ってもほら、部屋の飾りが豪華になるだけでしょ」


 えっ、気遣いすごいなぁ! 素直に、ちょっと感動したかもしれない……。

 だって私はそんな発想なかったよ。私なら、相手が甘い物好きなら普通に甘い物贈るもん!

 

「…………その反応、甘い物の方がよかったか……」

「ちょ、言ってない! そんなこと言ってないです!! 普通に気遣いすごいなって驚いて無言になってたただけです! ……もう、そうやって私の食いしん坊なイメージを強化するのやめてもらえませんか!? 皆さんに食いしん坊って思われちゃうじゃないですか!!」


 ほんと、食いしん坊≪キャラ≫で皆さんの中で確定されちゃったら困るんだよ!!

 

「……あ、じゃあさ。お見舞いに贈ろうか迷った甘い物を出してるお店があるんだけど、今度休みが合う日に一緒に食べに行かない? でも……食いしん坊じゃないなら行かないかなぁ~残念だね」

「いえそれとこれとは話が別ですね行きます是非! どんな系統の甘い物ですか!?」

「ふふふ、だから食いつきよすぎでしょ。わかったわかった、じゃああとでニコラスさんにお休みの調整お願いしておくねぇ。甘い物の詳しいことは、当日までのお楽しみにしとくよ!」


 そこの二人、横で小さい声で、デートですかね、デートですね、って言ってるの聞こえてるからねー? 

 エド様も必死で聞こえないふりしてるけど、頬がちょっと引きつってるからね。

 

「あ……そういえば、フェリシア様ともそのうちお茶をご一緒しませんかという話をしていましたよね……どうしましょう、フェリシア様との方が先約になりますかね?」

「…………はぁ、……あのねぇ、お兄。そんな目で見なくてもわかってるわよ。今回は先を譲ってあげるから……」


 フェリシア様が心底呆れた顔で言ったのでその視線の先を辿ると、エド様はわざとらしく私から顔を背けた。

 そんな目ってどんな目かなぁ。ん〜……?

 

「まあ、早速貸しを返せそうだからいいんだけど」


 貸し? ああ、さっきの……エド様が親戚をどうとかいってたやつかな。いやでも、面倒な親戚を言いくるめるのと、私と出かける順番を譲るのとって……結構比重が違わない? 私と出かける権利、重すぎない? 

 私は別に、エド様やフェリシア様と出かけるのなら全然どっちも楽しみだしいつでもいいんだけどなぁ。

 

「アリス様。私との約束を覚えていてくださったことはとても嬉しいんですが、またそのうちで大丈夫ですから……もちろん楽しみにはしていますよ。でも、できればまたの機会にしませんか? 今回は、お兄を優先してあげてもらえるとありがたいです」

「え~……そうですか? じゃあ……。フェリシア様とのおでかけはまた、日を改めて予定を合わせましょうね? そっちも絶対一緒に行きましょうね?」

「ええ、もちろんです! 是非。私も楽しみにしていますので」


 エド様が、ほっと安堵のため息をついた気配がした。でも私がそちらに顔を向けると、またわざとらしく顔を背けた。

 ……なんなの?

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