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4-4 ちょっと展開が早すぎる(4/5)

「んで、俺の意見? 確かにフェリシアにとってはすごくいい話だと思うよ。リーノ様が直前にアリスちゃんに婚約を持ちかけたことも知ってたからさ、最初はねえ、リーノ様ってばアリスちゃんにそんなこと言っておきながらすぐにフェリシアに乗り換えたのかなって正直複雑な心境だったけど。でもフェリシアと、リーノ様とそれぞれの事情やそこに至った経緯を筋立てて聞いたらまあ納得できたかな〜ってとこ」

「そう……お兄にそう言ってもらえるなら、よかったわ」

「アリスちゃんに対してもちゃんと誠意を見せたところもポイント高いよ。おかげで彼女も納得しているみたいだしね。でも、でもさぁ……やっぱり、いくらなんでも展開速くない!? 夜会の日ってせいぜい一週間前だよね!?」

「…………まあ、そういう反応になりますよね……。僕がもしエド様の立場だったら……と想像すれば、そのお気持ちも十分に理解できます。その辺り、やはり他の関係者の皆さまにも意識的に丁寧にご説明した方がよさそうですね」

「そうですね」


 リーノ様とフェリシア様は、お互い顔を見合わせながらうなずき合っている。その様子を、エド様は相変わらず渋~い顔で見てる。

 

「その……エド様は、お二人のご婚約に反対……なんですか?」

「え? ああ……いや、そういうわけじゃないんだけどさ。ただ普通に心配してるだけ、っていうかね。二人がうまくいって幸せになるのなら、それはもう全然賛成なんだけどね」


 ああ……なるほど、妹のことを案じてるだけなのか。なんか変に茶化したりしがちだけど、やっぱりエド様って根が優しい人なんだろうなあ。

 

「心配……と言いますと。エド様は、具体的にどういったところが引っかかっていらっしゃいますか? お聞きしてもよろしいでしょうか」

「具体的に……。……そうだねえ。まずは……バートの話じゃないけど、やっぱ身分差かなぁ。ナタリアちゃんは伯爵令嬢で周りの反応がああだったでしょ? フェリシアは侯爵令嬢だからねえ……レーヴェ子爵子息殿、その辺は大丈夫そう?」

「それについては……バート兄様たちの場合は、ナタリア義姉さんの実父であるクズ……失礼、フックス前伯爵(・・・)からの横槍を警戒していたという事情がありましたからね」


 あ、例のナタリア先輩のクズ実父だけど。先日罪状が一つ確定して、とりあえずまずフックス伯爵家の当主権剥奪が正式に決まったんだって。余罪があるかもしれないから今はまだ地下牢にいるみたいで、その結果によって今後身の上がどうなるか決まるのはまだこれからみたいだけど。

 そんなわけで前伯爵から剥奪された爵位は、長男でナタリア先輩の異母兄ルークス様が継承なさったみたい。ずっとフックス伯爵位が空席のままだと不都合もあるだろうからそこだけ早めに決めたって感じなのかな。

 だから、実父は『前』伯爵、ね。ナタリア先輩のお義母様のミルダ様と前伯爵との離縁も、国に正式に認められたみたいだよ。

 

「周りの皆さんは、バート兄様が子爵子息という身分で前伯爵に太刀打ちできるかどうかを心配なさっていたんでしょう。その点僕とフェリシア様の間にはそういう障害はないわけですから、話の前提が少し違うとは思います。もちろん、身分差があることは確かですが」

「見通しが甘いかもしれないけど、アデルバート様の弟君っていうのはうちの家族に対しては結構強いカードだと思うのよね。アデルバート様が継ぐレーヴェ子爵家と縁ができること自体はそれなりに歓迎されると思うわ。もちろん、先にリーノ様は博士であってアデルバート様のように騎士ではないのよ、と念は押さないといけないだろうけど」

「そりゃそうだ。リーノ様がバートみたいな戦闘能力を求められたら可哀そうすぎる」

「無理です」

「だよね~」

「ああ……あと、母様とはエレオノール奥様……ええと、クラリス様のお母様の件があるから、エンテ領の別荘での一連の話は情報をかなり共有しているのよ。特に、リーノ様やクロード博士、アリスさんがどれだけクラリス様のお力になってくださったかについてはしっかり言い含めてあるの。だから母様からリーノ様への好感と信頼は、既にかなり大きいの。実は母様だけには軽く打診してみたんだけど……味方になってくれるって」


 なるほどね。フェリシア様のお母様は、シュトルヒ夫人エレオノール様やクラリス様の件でリーノ様個人への好感度は既にかなり高い、と。

 お姉様お二人とお父様は、バート様のことがお気に入りなんだよね? そっちもバート様の弟君なら、と言ってくださるかもしれないよね。

 

 それに、実際に婚約の話が出たのは一週間だとしてもだよ。エンテ邸で知り合って一緒に仕事に取り組んで、その中でお互いの為人を知って親密になった……みたいなそういう方向へ話を持っていけるなら、エド様が引っかかってる唐突感も少しは薄れるかもしれない。

 それも完全な嘘ってわけじゃないもん、実際一か月ほどチームを組んで一緒に仕事をしていたわけだしさ?

 

「なるほど、イル母様が既にこっちに付いてるならそれは確かに大きいな。ま、うちの家族はそれで攻略できるかもしれないけど……もし親戚連中とかで面倒なこと言うやつがいたら、俺に言ってよ。俺ができることなら力になるから」

「…………お兄に頼るのは、正直ちょっと癪なんだけどね」

「なになに~、先にわざわざ俺にこの話をしたってことは、元から頼る気満々ってことだよね?」


 エド様がニヤッと笑うと、図星だったのかフェリシア様はまた手刀を振り下ろしていた。ふふ、照れ方が可愛いんだよなぁフェリシア様。

 

「いいんだよ~可愛い妹のために、身分がどうだの騎士じゃないからどうだの言うやつらがいたら俺が舌先三寸で丸め込んでみせるから任せて。一つ貸しだよ~」

「……まあ、お兄については悔しいけどその能力だけは本当に頼りになるのよ。……リーノ様は、少し正直すぎるお方だから……ああいう連中とは相性が悪そうで……」

「面目ないです……」


 あー……。そうね、リーノ様ってド正論で理詰めするタイプだからな……。頭の固い特にご高齢の方と意見が合わなくなっても、多分そのまま突き進んでガンガンに火に油を注いで大炎上させるタイプよね。すごい想像できる。

 その点エド様は柔軟に、嘘というほどではなくいい具合に都合よく誤魔化したりしながらそれこそ舌先三寸でなんとかしてくれそう。それもわかる。適材適所ってやつだよ。うんうん。

 

「だからお兄にそう言ってもらえて、正直助かるわ。……よかったですね、リーノ様」

「ええ、そうですね」


 そう言ってうなずくリーノ様に、微笑みかけるフェリシア様。二人の間の空気、やっぱりこないだまでとは全然変わってるよなぁ……。

 いやぁ……いいものですね、愛の芽生えたばかりの関係性をこうして見守るっていうのは……。正直、…………すっごく楽しい~!

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