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時空の三連星 第1章 第14話

第十四話


:交錯する三位一体の刃

【前編:智と武の波状攻撃】



「――では、失礼しますね」


シズが静かに微笑んだ瞬間、彼女の姿が夜霧のように掻き消えた。

超人的アスリートであるアオイの爆発的な脚力と、独自の武術。

それがシズの肉体を通じて完全に具現化する。

コンクリートの床を一切鳴らすことなく、超高速で駿の死角へと回り込むシズの動きは

まさに芸術的な美しさだった。

シズの精神の深淵で、アオイの声が鋭く弾ける。


『シズお姉ちゃん、まずは私の『縮地・八重霞やえがすみ』で揺さぶるよ! あの人の絶対領域、どこまでステップが通用するか試させて……!』


高校生らしい負けん気と、憧れの強者に自分の技をぶつけられる純粋な喜び。

アオイの思念がシズの四肢を躍動させ、駿の背後から鋭い手刀が放たれる。

しかし、駿は振り返りもせず、わずか数センチ頭部を傾けただけでその一撃を

完璧に回避した。


『さすが……っ、でも、これならどうですか!?』


間髪入れずに割り込んだのは、中学生のハルの声だった。

彼女の冷徹な思考解析が、駿の回避行動から次の未来を導き出す。


『駿さんの重心移動、微細な筋肉の収縮パターンを完全にトレースしました!

三手先、あの人は左へステップします。

シズお姉ちゃん、そこへハルの『予測演算アナリティクス』を重ねてください!』

ハルの導きにより、シズの攻撃は「駿が避けた先」へと

あらかじめ配置されるように繰り出された。

知性と武が完璧に融合した、時空を網羅する波状攻撃。

シズは、己の中に流れる二人の少女の熱い想いと、毎夜のように駿を求めて身を焦がしてきた自らの情念を、すべてその一撃に込める。


「ふふ、驚いてくださるかしら、駿さん?」


どこまでも寛容で、どこまでも深い愛を湛えた魔女王の微笑み。

シズはハルとアオイの力を完全に御しながら、極限の速度のなかで

さらに艶やかな一歩を踏み出した。







【後編:絶対王者の『解答』】



――ドォン! と、屋上の空気が爆発したような風圧が巻き起こる。

シズの完璧な三手先への先回り。だが、駿はそれすらも

紙一重のところで完全に受け流していた。


「なるほど。ハルの予測演算で未来を縛り、アオイの武技でそこを撃ち抜くか。



間近でシズと対峙する駿の瞳には、冷徹な計算と、それを遥かに上回る狂おしいほどの「歓喜」が宿っていた。

実際の戦闘の中で交わされる、魂のコミュニケーション。

シズの肉体から放たれる、ストイックに己を追い込んできた者だけが持つ美しい熱量が、駿の五感を極限まで昂ぶらせる。


「だが、ハル。お前の演算は美しいが、俺の『絶対観測領域』の更新速度はそのさらに数歩先を行く」


駿はシズの放った鋭い蹴りを、掌で軽く受け流しながら静かに言葉を返した。


「アオイ、お前のステップも素晴らしい。だが、まだ筋肉の連動にわずかな『迷い』がある。――俺への羨望が、お前の刃を鈍らせているぞ」


対面したからこそ分かる、彼女たちの強さと、瑞々しい弱さ。

駿は慢心することなく、しかし王としての絶対的な格の違いを見せつけるように、シズの手首を掴みにかかる。

妥協も慈悲もない、彼女たちの覚悟を限界まで引き出すための冷酷な一撃。


「シズ。お前の執念、こんなものではあるまい。俺を凌駕し、愛し尽くしたいのなら――もっとお前の『渇望』を魅せてみろ」


駿の全身から、半径200kmを呑み込むオーラがさらに色濃く、容赦なく噴き上がる。

中盤戦へと突入した闘争は、互いの魂を剥き出しにしながら

さらなる深淵へと加速していく。



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