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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第69話:文化祭二日目、関係者解放日

 ――――――――――文化祭二日目、学院高等部教室にて。クインシー視点。


「ふんふーん。今日もとってもいい匂いー」


 聖女様が上機嫌で大釜の中身をかき混ぜている。


「ボクも昨日いただきましたが、おいしいですよね」

「でしょ? やっぱお肉だけよりも野菜を少し入れた方が旨みが引き立つなー」

「今日は量多めですか?」

「うん。昨日昼過ぎには売り切れちゃったんだ。今日は関係者開放日だからお客さん多くなるだろうし、大鍋二つ分だよ。既にあっちの鍋は火入れてあるの。もう一回熱して野菜投入すればすぐ出せるよ」


 明日は今日以上に人が多くなることが予想される一般開放日だ。

 警護の問題で、ボクは明日の文化祭を欠席しろと言われている。

 だから今日くらいクラスの力になりたいんだけど。


「ボクに手伝えることはないですか?」

「殿下はダドリー君をやる気にさせただけで十分だなー。おかげでダドリー君が張り切って働いてくれるから、クラスの出し物が成功したようなもんだよ」


 ダドリーにクラスの出し物の指揮を執るよう言ったのはボクだ。

 しかしそれは聖女様に言われたからだ。


「あたしが言ったってダドリー君動きゃしないからね」


 アハハと笑ってるけどそうだろうか?

 聖女様ならどうにかして言うこと聞かせるような気がする。

 あ、ダドリー達が来た。


「殿下、失礼いたします。平民、煮え具合はどうだ?」

「バッチリでーす。いつでもいいよ」

「よし、時間通り開店だ」


 前々から思っていたが、ダドリーは聖女様のことを平民と呼ぶ。

 でも聖女様は特に気を悪くしている様子もない。

 いいんだろうか?


「ところでダドリー君達は休憩取ってるのかな?」

「いや、私は現場を殿下に任されているから」


 えっ? ボクは現場に張りついてろと言った覚えはないんだが。


「今皆の手が足りてるから休憩しておいでよ。明日は一般解放日ですげー混むんでしょ? 抜けられないぞ?」

「しかし……」

「殿下の目が点になってるわ。ダドリー君に休むななんて言ってないからだわ。あたしも今日の出番は午後からだから、午前中はいるし」

「そ、そうか? では殿下、失礼致します」

「楽しんできてね」

「行ってらー」


 聖女様の気配りは細やかだなあ。

 さあ、開店だ。


          ◇


「ふんふーん、絶好調だな!」


 結局ボクは給仕の手伝いをすることになった。


『どうしても手伝いたいの? となれば客引きがベストなんだけど、殿下がやるとお客さんの数ヤバくなりそーだな。かといって厨房仕事はムリだろうし、給仕一択だね』


 とのことだったから。

 もちろんボクは給仕なんて初めてで、イヴがハラハラした目で見てるけど、お客さんに喜んでもらえるのは嬉しい。

 充実した気分だ。


「パルフェさん!」

「えっ?」


 魔道クラブのラン部長が駆け込んできた。

 何だろう、慌てているみたいだけど。


「他所の方は厨房立ち入り禁止でーす」

「それどころじゃないんだ。リザレクションの展示を宮廷魔道士達が目に留めて、詳しい話を聞きたいからパルフェさんをすぐ呼んでこいって」

「げ、大鍋交換のタイミングなのに。特急で煮立てるからちょっと待ってて!」


 ラン部長としては宮廷魔道士のウケをよくしておきたいから、唯一リザレクションの説明ができる聖女様を早く連れていきたい。

 一方で魔法を使って素早く煮立てるのも聖女様にしかできないのだ。

 いくつもの熱塊を生み出す聖女様。


「ちょっと離れててね。急に熱して鍋のあちこちで温度の差が生まれると、突沸って言ってぼふっと中身が飛び出ちゃうことがあるんだ」


 と言いつつかき混ぜる聖女様。

 危ないんじゃなかったの?

 いや、かき混ぜないと余計に危ないのか。


「ただいま。今日も盛況だな」

「あっ、ダドリー君いいところに帰ってきた!」

「何だ、どうした?」

「あたし達魔法クラブの方で急な招集がかかったんだ。二つ目の鍋煮るとこまでやっとくから、あとよろしく」

「わかった」

「よーし、野菜投入!」


          ◇


「こんにちはー。あたしがやって来ましたよ」

「聖女殿!」

「あっ、レックスさん」


 魔道実習室には宮廷魔道士が五人も来ていた。

 アルジャーノン先生から魔法クラブの展示内容について連絡が行ったのかもしれないな。

 宮廷魔道士レックスは確かかつて盗賊との戦いで左腕を失ったが、聖女様のリザレクションで再生したと聞いている。


「その後調子どうかな?」

「快適です。聖女殿のおかげを持ちまして。お礼を申し上げる機会もなかったものですから、本日まかり越しました」

「パルフェさん、それはどういう?」


 ラン部長は聖女様がリザレクションを使えることを知らないだろう。

 話がわからないはずだ。


「レックスさん、左腕がちょん切れちゃっててさ。あたしがリザレクションで再生したんだ。部長も組み立て見たからわかると思うけど、リザレクションってえっらい面倒で気軽に使える魔法じゃなくてさ。あたしが使えることは内緒にしといてくれる?」

「わかった。……クインシー殿下の目が見えるようになったのもリザレクション?」

「うん」

「噂は本当だったのか……」


 衝撃だろう。

 死者をもよみがえらせるというリザレクションなんてほぼ伝説の魔法だし、あの意味不明なソーサリーワードの羅列を見て発動可能なんてさらに思えないから。

 宮廷魔道士達が聞いてくる。


「リザレクションの仕組みを公開に踏み切ったのは何故ですか?」

「疑問なのはそこか。何故と言われても、別に秘密じゃないから。師匠やあたしじゃリザレクションを改良して使いやすくするのはムリだったけど、情報が公開されれば研究してくれる人がいるかもしれないし」

「師匠というのは賢者フースーヤ殿ですな? フースーヤ殿でもムリなのか……」

「師匠かなり調べたみたいだけど、頭抱えてたぞ? どこも削れないって」

「ふうむ、さすがに伝説の魔法だけのことはある」

「宮廷魔道士さん達が研究してくれると嬉しいんだけどな」


 宮廷魔道士達が一様に苦笑いしている。

 フースーヤ殿がムリだと判断したことなのだから当然かもしれない。

 

「使える人が増えれば有意義な魔法であることは間違いないじゃん? リザレクションがこのままの発動条件だったら、使えそーな人あたしの他に一人しか思い浮かばない」

「一人いるんですか?」

「使えるようになるかもしれないってことね。可能性のレベル。訓練次第」

「まさかフースーヤ殿?」

「師匠は聖属性持ちじゃないから不可能だな」

「では、どなたですか?」

「ちょっとまだ言えないんだ。でも近い内に発表できると思うから楽しみにしててよ」


 宮廷魔道士の一人が言う。


「リザレクションは、純粋な聖属性を扱えないと発動しないはずですよね。つまりその方は国防結界への魔力供与も可能ということに?」

「なる」

「極めて重要ではないですか!」


 騒然とする。

 ウートレイド王国の安全保障上無視できない話になってきた。


「これは陛下に奏上しても構いませんか?」

「陛下に大雑把には知っといてもらいたいかな。でもこの件についてこれ以上明かせないのは変わらないぞ? 今その人はかなり危うい立場にあるんだ。王家や宮廷魔道士が動いてるのがバレると最悪殺されちゃう。そーなると全てパー」


 な、なるほど、この場限りのことだな。

 あっ、マイクのあの顔は、何か知ってるっぽい?

 いや、しかし追及するのは愚者の振る舞いだ。

 聖女様に任せるべき。

 お母様ならそう判断するだろう。


「ところでリザレクションの中身については、あたしじゃサッパリわかんない。あたしも丸暗記してるだけだから。ごめんね」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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