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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第66話:文化祭一ヶ月前

 ――――――――――学院高等部魔道実習室にて。マイク視点。


「……とまあ、こんなとこ」

「パルフェさん、助かる!」


 魔法クラブでは文化祭の準備はしなくていいのかとラン部長に聞いたところ、ここ数年は簡単な魔法の仕組み(高等部一年次に魔道理論で教わるようなこと)を立体的に現した模型を展示しているだけなのだそうだ。

 部員数が少なく、魔法に興味を持っている人もまた少ないとのことで、新しい試みをする気もなかったのだろう。

 クインシー殿下の従者イヴさんがぼやく。


「この模型は私達が二年生の時に作ったものなのだがなあ」

「よくできていますよ」

「わかりやすいです」

「ここまで使い倒されているとは」

「だからもっとイメージの影響は大きいとゆーのに」


 この模型は魔力とソーサリーワードの組み立て、イメージの関係が目に見える形で表現されている。

 クインシー殿下やユージェニー嬢には好評だが、聖女パルフェ的には不満らしい。


「これを魔道理論の最初の講義で使ってくだされば、理解も深まると思いますのに」

「最初のとっかかりにいいと思う」

「最初にイメージの影響が小さいっていうイメージを持っちゃうと、魔法が育たないとゆーのに」

「ややこしいなあ」


 言わんとするところはわかる。

 魔法にはイメージが大事と、オレ達は常々聖女パルフェに言われているから。

 この模型でイメージの関与する大きさはこんなもんかと思ってしまうと、それ以上の効果は出せないのかもしれない。


「ま、今年は面倒だからこのままでいいや。来年の課題にしよう」

「今年はパルフェさんの協力してくれた、リザレクションの概要を記した展示があるから」


 聖女パルフェは究極回復魔法リザレクションを使える、クインシー殿下の目はそれで治った、という噂がある。

 聖女パルフェ自身はその噂を肯定も否定もしないが、他の魔法と同じくリザレクションについても詳しいのは本当だ。

 それを文化祭の展示に使いたいとラン部長が飛びついた。


「あたしはリザレクションに詳しいわけじゃないよ。丸暗記してるだけ」

「これを丸暗記できるってすごいよ」

「メチャクチャワードの繋がりが飛ぶし初代聖女様特有の回路があるし、何がどうなのかサッパリなんだよね。イヴさんどう思う?」

「いや、私もわからないな。部分部分で見れば知ってる構文も多いんだが、何のためにやってるのか構成がまるで理解できない」

「イヴ先輩でもですか」

「ああ。わざとわかりにくくしているのかとも思えるくらいだ。想像だが」

「魔法の体をなしてないもん。こんなん発動させようなんて無体も極まる。でもリザレクションについてこうやって展示しとけば、魔法に詳しい人の興味を引くかもしれないな。研究できるならして欲しい」


 聖女パルフェが理解を放棄したほどだ。

 誰が研究しようって思うだろうか?

 でもリザレクションって知名度のある伝説的な魔法だから、文化祭の客引きにはなるかもしれない。

 クインシー殿下が言う。


「一般に興味を引く題材を展示することは重要かもしれませんね」

「魔法に関する理解の裾野が広がりそうだよね。魔法使える人が増えないと研究は覚束ないと思うわ」


 文化祭最終日は一般市民にも開放される。

 学院高等部に通うような貴族や上流階級はある程度魔法の教育を受けるが、一般市民はそうもいかない。

 聖女パルフェは魔法の知識を一般市民に植えつけたほうが、発展に寄与するという考え方のようだ。

 一般の人がこんな地味な展示を見に来るかは別問題だけど。


「皆が魔法を使えるようになると、治安の問題も出てくるだろう?」

「そーか、直接攻撃魔法なんて危ないしな。難しいわ」

「文化祭はどうにかなりそうで良かったじゃないか。ランとドルフの勉強は進んでるのかな? 二人は来春の宮廷魔道士の採用試験を受けるんだろう?」


 今年の魔道クラブの四年生の先輩は二人だ。

 四年生は学位習得課題をこなせばいいだけなので、基本的に講義を受けない。

 宮廷魔道士狙いなら当然学位習得課題も魔法関係の論文を提出するが、聖女パルフェが手伝っているので楽勝のようだ。


「パルフェさんの協力もあってバッチリです」

「でも不安が拭えなくて」

「おいこら、イメージが大事だとゆーのに。不安なんか何の役にも立たんわ」

「そ、そうだね」


 聖女パルフェは魔法以外でもいいイメージを大事にしているようだ。

 見るからにポジティブだもんなあ。


「ところで皆のクラスは文化祭で何を出し物にするの?」


 あ、それは興味あるな。


「四組は恋愛劇です」

「ひょっとしてユージェニーちゃんは姫役?」

「はい。わかりますか?」

「絶対見に行くよ」

「頑張って演じますね」

「うちのクラスは大喜利をやろうってことになった」

「二組は大喜利か。お題をもらって気の利いた返しをするってやつ?」


 ネッサ嬢が頷く。


「そうだ。うちのクラスは剽軽な男子が多くて、彼らが主導でやってくれるから正直助かってる」

「狙いがいいなあ」

「一組は?」

「魔物肉料理の飲食店なんですよ。聖女様が狩ってきた『魔の森』の魔物の」

「えっ? 魔物肉?」


 ネッサ嬢と先輩方が引いてる。

 うん、これが普通の反応だ。


「パルフェ様のお肉は私もいただいたことがあります。とてもおいしいんですのよ」

「ボクもこの前試食会で御馳走してもらいました。大変結構です」

「舌の肥えたユージェニーちゃんと殿下がこう言ってるんだから間違いないって」

「そ、そうかい?」


 食べればわかる。

 極上の肉だから。

 躊躇してると食べ損なうよ。


 そして二、三年の先輩方は飲食店と芸術の小路か。

 飲食店はうちの組のライバルになるかな?


「芸術の小路ってのは何なの?」

「順路を作ってクラスの各人の絵とかオブジェとか詩とかの作品を見せるってやつさ。剣舞や大道芸の実演も含まれてる」

「へー、それだと全員が参加できていいねえ」

「先輩、この出し物は露骨に評価取りにいってるでしょ?」

「バレたか」


 アハハと笑い合う。

 いろんな趣向があるんだなあ。


「今日はこの辺でお開きにしようか」


 ――――――――――学院高等部廊下にて。ネッサ視点。


「おーい、ネッサちゃーん!」


 帰ろうとしていたら呼び止められた。

 聖女パルフェとマイクだ。

 今クラブが終ったところなのに何だろう?


「パルフェさん、どうしたんだい?」

「ネッサちゃん、魔法上手だからこれあげるよ。使えると面白い、ちょっと変わった魔法なんだ」

「変わった魔法?」

「じゃーねー」


 何でもないように去っていく。

 気になるなあ。

 従者が聞いてくる。


「何でしょうか?」

「見てみよう」


 先日私が自然派教団員であることを聖女パルフェに告白した。

 しかしそのことを従者は知らない。

 無関係とは到底思えないけど、まさか変なこと書かれてないだろうな?

 渡された紙をドキドキしながら開く。


「……本当に魔法のソーサリーワードだ。私なら覚えられるだろうってことでくれたんだろうな」

「どうやら闇属性の魔法のようですな。確かに珍しい」

「ふうん、声を操る魔法か。暇な時覚えてみよう」

「それがよろしゅうございます」


 違う。

 必ず使う機会があるから習得しておけという、聖女パルフェの意図を感じる。

 従者のいる時に寄越したのは、この魔法を練習していても不審に思われないためだろう。


「パルフェ様は親切な方ですな」

「そうだね」


 聖女パルフェは親切なだけじゃない。

 この魔法を習得しろということはおそらく……。

 まあいい、覚えるのが先だ。

 建国祭は文化祭の約一ヶ月後、つまりあと二ヶ月か。

 私なら十分覚えられる。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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