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辺境生まれのトンデモ聖女は、王都の生活を満喫します  作者: 満原こもじ


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第65話:魔物肉試食会

 ――――――――――『魔の森』にて。マイルズ聖騎士団長視点。


「ここが『魔の森』の入り口でございます。皆様、足元にお気をつけくだされ」

「結構木の根っこがゴツゴツしてるんだよ。魔物より足元のが危ないの」


 パルフェ様が学院で同じクラスの御学友を連れ、『魔の森』の探索を行うことになった。

 パルフェ様の言う肉狩りだ。

 文化祭で用いる魔物肉の試食だそうな。

 同行する御学友とはクインシー第一王子殿下、トリスタン近衛兵長令息、ダドリー伯爵令息及び修道士マイクの四人だ。


 聖騎士もまた我を含めて四人。

 都合のつく聖騎士はまだいたのだが、パルフェ様によると帰りの飛行魔法の都合を考えるならこれくらいの人数がいいそうだ。

 クインシー殿下が同行されるなどとは聞いていなかったのだが。

 合掌。


 伯爵令息が喚く。


「おい平民、大丈夫なのだろうな!」


 パルフェ様に対して平民と呼びかけるなど至極不敬なやつだと聖騎士が気色ばみかけたが、パルフェ様は何とも思っていないようだ。

 通常のコミュニケーションなのだろうか?

 そういえばゲラシウス様も小娘呼びであるしな?


「大丈夫だよ。『魔の森』に強い魔物はいないんだ」

「そうなのか?」

「うん。一対一ならトリスタン君に勝てる魔物はいない。あ、右前方に何かいる。一体」

「えっ?」


 一応構える。

 一体ならパルフェ様が片付けるだろう。

 じっと前を見つめるマイクが言う。


「植物系のマッドプラントかな?」

「そうそう。食べるとこないからつまんないやつ。動きは鈍いけど、状態異常を起こす花粉を撒くから、風上に陣取られている場合は注意ね。よっ」


 バサッと胴切りになる。

 あっ、御学友達が驚いている。

 実によくわかる。

 我も初めて見た時は何事かと思った。

 殿下が聞いている。


「聖女様、今のは何ですか?」

「風魔法で切れ味を上げたナイフを浮遊魔法で操って、遠隔で魔物を倒す技だよ」

「す、すごい」

「つまり風魔法と浮遊魔法を同時にかけているのか?」

「あたしはナイフの切れ味が落ちるのが嫌だから、風の付与魔法も同時にかけてるよ。でもそれぞれの魔法属性を独立に扱えないと、同時に魔法をかけることはできないんじゃないかな。普通は風の付与魔法と浮遊魔法を別個にかけないといけないから、時間で切れ味は落ちることになる」


 そうだったのか。

 見慣れた技だったが、深奥の秘密はあるものだ。


「ラッキー。切り口から魔石見えてるわ。ぐりぐりっと。後ろ何かいる。ウサギかな?」


 振り向いた時、ちょうどアルミラージの首が刎ね飛んだところだった。

 合掌。


「ウサギはクセがなくておいしいでーす。魔石以外に角と毛皮も売れます」

「感知魔法で魔物のいる場所をサーチして、ナイフを飛ばす技で倒すから安全なんですね?」

「大体そゆこと。でも魔物が群れで現れると手が足んなくて」

「どうするんだ!」

「群れててかつ襲ってくるのは肉食魔獣の餓狼と昆虫系のキラービーなんだよな。魔物の数を減らすのが聖騎士の役割だからいつもは倒すんだけど、今日は殿下いるんで安全重視だね。結界張るよ。マイルズさん、逃げちゃう魔物多くなるけどいいよね?」

「もちろん構いませぬぞ」


 そもそも聖女様がいなかった時は、キラービーなどほとんど倒せなかった。

 闇雲に剣を振って当たった時くらいだ。

 もっともキラービーは、巣に近付きさえしなければあまり危険な魔物ではない。


「またウサギか。アルミラージは草食魔獣にしては割と狂暴な方だよ。強くはないけど、お腹突かれて死にかけた人も知ってるから、舐めちゃダメ」

「魔物を舐めてなどいないが、すぐ首が飛ぶから説得力がないっ!」


 伯爵令息が言うことは実によくわかる。

 パルフェ様の技は鮮やか過ぎるのだ。

 もう少し近くで見たいと思うくらい。


「やたっ! イノシシだ!」

「ええと、ビッグボア?」

「そうそう。マイク君勉強してるね。大体群れで出てくるから、お肉がたくさん取れまーす。秋は脂が乗ってて大変おいしいでーす」

「味は魔物学の教科書に載ってないんだ」

「一番重要な情報なのにねえ」


 アハハと笑いながらビッグボアの首を刎ねていくパルフェ様。

 猟奇的だ。

 合掌。


「一頭逃げたか。まあ仕方ない。次行こー」


          ◇


「こんなにおいしい肉は初めてです!」


 クインシー殿下が感動している。

 やはり王族が褒め称えるくらいの味か。

 『魔の森』を随分と歩き回って腹が減っただろうという補正があるにしろ、大層な美味であることに変わりない。


「皆さんもどんどん食べてね。冷めちゃうぞー」


 魔物の肉ということで抵抗があるらしい。

 騎士団寮で待機していた大勢の御学友達がおっかなビックリ肉に手をつけ始める。


「お、おいしい!」

「こんな肉があるなんて!」

「間違いなく売れる! 大評判間違いなしだ!」


 大絶賛、さもあろう。

 パルフェ様が捌いた魔物肉は王都で最高レベルなのだ。

 伯爵令息が首をかしげている。


「魔物だからって普通の鳥獣と差があるとは思っていなかった。でもここまで美味いのは予想外だ。何故だ?」

「うーん、多分王都民の口に入るお肉は、落としてからかなり時間が経ってると思うんだよ。そーすると臭みが出ちゃうから不味くなる」

「パルフェ様の血抜きは完璧ですからな。そのせいもあると思いますぞ」


 王都コロナリアで流通している肉は、ほぼ全てが周辺の村々で飼育されている家畜だろう。

 王都の中に入るには許可証ないし割り符が必要なこともあり、運搬にどうしても時間がかかってしまうという現状がある。

 流通のせいでずっと不味い肉を食わされていたかと思うと腹立たしいが、現在は最高の肉を賞味できる。

 パルフェ様のおかげだ。

 合掌。


「しかし……文化祭では売り方が相当難しい」

「えっ、ダドリー君どゆこと?」

「考えてもみろ。こんなに美味そうなのに、最初誰も食べようとしなかったろう?」

「そうだねえ」

「魔物肉と言われてしまうと心理的に抵抗があるからな」

「皆そうなんだよなー。となると少なくとも、調理していい匂いでお客さんを引きつけないといけないってことだね?」

「うむ、肉のまま売れるなら楽なのだが、おそらくそれでは買ってもらえない」


 随分考えているのだな。

 確かに魔物肉は周知されるまで売り方が難しいというのは同感だ。


「しかも逆に口コミで美味さが知られると、いっぺんに客が増えると思われる。調理の手が回らなくなる可能性が高い」

「そーか、厄介だな。あたしはイノシシの炙り焼きが一番おいしいと考えてたんだけど、焼きは時間食い過ぎちゃうかな?」

「数を捌けないだろうな。汁物をメインにするのがいいと思う。文化祭の時期は結構冷えるから、汁物は喜ばれるんじゃないかと」

「よし、肉たっぷりの汁がメインだね。聖教会に炊き出し用のデカい鍋があるから借りればいいな。でも焼きも捨てがたいんだけど」

「串焼きでテイクアウトならあちこちで目に触れる。香りもあって、集客効果は汁物よりうんと高くなるはずだ」

「じゃあ炙り串焼きは限定販売か」

「そうだな。その二品で勝負。クラスメイトに串焼きを持たせて宣伝させるのもいい」


 どうやら方針が決まったようだ。

 我も学院の文化祭は大変だったが楽しかった思い出がある。

 魔物肉の提供というのは実にパルフェ様らしく、また話題になる出し物だろうなあ。


「パルフェ様はダドリー伯爵令息と仲がおよろしいのですか?」

「良くないよ。一番仲悪いくらい」


 ケラケラと笑っている。

 冗談なのだろうか?


「まー文化祭のクラスの出し物に目処がついてよかったよ」

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