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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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188/190

188.街の人から話を聞きましょう

回り道。


<フォニー視点>


 港町に到着して数日。

 私の学校では卒業式の為に在校生もあれこれ作業があったので、あまりログイン出来てませんでした。

 最後みんなで集まった時は、たしか忘却の魔神について調べてみようと話してましたね。


(多分、冒険者ギルドはラキア君が行ってくれるはず)


 なぜかラキア君はギルド職員からの好感度が高いですよね。

 なのでそちらはお任せしましょう。

 私は私なりの調べ方で。

 目を付けたのは街の人達。

 と言ってもこちらから声を掛けて回るのは不審者でしかない。

 なので向こうから興味を持ってもらえるように立ち回る。


ポロロン♪


 広場の一角に陣取った私は楽器を取り出して軽快な音楽を奏でていく。

 まだまだ素人から一歩抜けた程度の腕前だけど、そこは祝福の力も借りて心に響くように。


(いつかはそんな小細工無しでも感動させられるようになりたいですね)


 そうして2曲3曲と続けると少ないですが聴衆が集まってくれました。

 切りの良いところで演奏を終えた私は拍手を送ってくれる皆さんに忘却の魔神について聞いてみました。


「魔神様はこの街でだけは有名だからなぁ」

「歌の題材にするのかい?」

「素敵な曲を聴かせてくれたお礼だ。

 俺達の知ってる事は教えてあげよう」


 皆さんから頂いたお話は子供を叱る時に使う『良い子にしてないと魔神に海へ連れ去られてしまうんだよ』というものもあれば、朝昼夜で姿が変わるという不思議な話も聞けた。


「会いたいのなら、夜中に岬に行ってみると良い」

「え、会えるんですか!?」

「運が良ければ。いや悪ければかもな。

 実際に会いに行ったきり帰って来なかった奴も多い」

「スケベ野郎は大体帰って来ないな」

「ははは、違いない」


 ということは魔神は女性?

 廃都の魔神も女性でしたし変では無いですけど。


「ただ、最近その岬の方に向かうガラの悪い男が居るそうだから行くなら気を付けて行くんだよ」

「ご心配ありがとうございます」


 どうやらイベントフラグを拾ったらしい。

 魔神とガラの悪い男。どういう関係でしょうか。

 魔神の従者とか?

 いやそれなら最近になって見かけるようになったというのはおかしいです。

 なぜなら魔神は大戦の時代からずっと居たというのだから。

 後は女神に敵対する教団の人達か。

 でも『忘却の』魔神ですからねぇ。


(きっとまだ情報が足りない)


 もしくは別の人のイベントという可能性もあります。

 どちらにせよ今あれこれ考えても答えは出ないでしょう。

 一通り街の人から話を聞き終えた私は早速噂の岬に行くことにしました。

 現在時刻はゲーム内時間で午後2時くらいなので魔神に会う事はないでしょう。

 ちょっとした下見です。

 のどかな初春の昼下がり。海岸からは若干離れてるので潮風という感じでもないですね。

 道中はガラの悪い男どころか人が全然居ません。

 街の中心部からかなり離れてますし民家がぽつぽつあるだけで用が無ければ誰も来ない場所なんでしょう。


(夏に肝試しとかで歩いたら雰囲気あるかも)


 ただその場合、終着点は岬になるのでオバケどころか魔神が待ち構えているという恐怖体験。

 雰囲気どころの話じゃないですね。

 と、住宅が完全に無くなったタイミングでようやく道の奥から複数の人の気配がありました。

 先ほどの話もありましたし、ここは一度物陰に隠れて様子見ですね。

 やって来たのは土方とやくざを足して2で割ったような風貌の、なるほどガラの悪い男性ですね。

 分かり易くて助かります。


「くそっ、魔神以外にもあんなやべぇ奴がいるとか聞いてねぇぞ!」

「無茶苦茶しやがって。覚えてやがれっ」


 文句を言いながら走り去る、いえ逃げ去っていきました。

 やはり何かのイベントだったみたいですね。

 一体何が待ち構えているのか。

 少し楽しみに思いつつも先に進めば見えてきたのは道から少し離れた所に空けられた穴と魚人の男性。

 その人は私を見るなり持っていた銛を構えました。


「あんたもさっきの奴らの仲間か!」


 さっきの、というのは逃げて行った人達ですよね。

 え、あれと同一視されるのはちょっと。


「違います。むしろ仲間に見えますか?」

「あー……、そうだな。すまん。ちょっと気が立っていたみたいだ」


 流石に違うと思ったらしく構えを解いて頭を下げてくれました。

 なお仮に「問答無用だ」と攻撃されてたら……多分返り討ちに出来ると思います。

 まぁ話し合いで解決出来るならそれで良いんですけどね。


「それで何があったんですか?」

「これを見てくれ」


 示されたのは彼の後ろの穴。

 大きさは大人が立って通れるくらいあるのでどこかに通じてるのでしょうか。

 話の流れから考えてさっき逃げて行った人達が掘ったんだと思いますが。

 残念ながら私は穴掘りの専門家ではありません。

 穴の形状から何かを察しろと言われても困ります。

 じっと奥を見つめてみると、あ、ほんのり明かりが入って来てますね。

 ということはどこかに繋がってるんでしょうか。


「この先に何かあるんですか?」

「俺の家だ。

 奴らここから穴を掘って人の家の壁を壊して中に入ってこようとしてたんだ」

「それはまた大胆な泥棒ですね」


 他人の家に押し入るのにわざわざこんな穴を掘るなんて、そんな労力に見合った財宝が仕舞い込まれてたのでしょうか。

 それとも表の警備が厳重で相手の裏をかいた作戦だったのか。

 いやそれなら住人が留守の時間を調べるでしょうし、そもそも先ほど聞いた話から考えて別にこの人の家だと知っていて狙った訳ではないのかもしれません。

 あと気になるのは穴の向き。

 まっすぐ海がある方向に掘られてるのですが地上には何もなく、崖の先にはそのまま海です。


「ところで家らしき建物が見当たらないんですけど」

「あぁ。俺達みたいな海中を中心に活動する種族は岸壁に穴を掘って暮らしてるんだ。

 良かったら見て行くかい?

 ついでに壁の穴を塞いでくれると助かる。俺は陸の作業は苦手でな」


 見学はついでで後半の言葉が本音なのだろうなと思います。

 ただそちらに行く前にこの穴は塞いでおきましょう。

 アイテムボックスに眠ってる使わない石材を適当に積み上げておけば、見た目微妙ですがそこは後で何とかしましょう。


「お、早速ここを塞いでくれたのか。マジ助かる。

 ささ、正面入り口はこっちだ」


 そう言って真っすぐ海の方に行けば見えたのは崖。

 街の中心は、ここから見ると結構遠いですね。

 反対側にある岬が例の場所でしょうか。

 そして彼の家はこの真下らしいです。


「じゃあ行くぞ」

「やっぱりここを飛び降りるんですか」


 頑張って現実逃避しようと思いましたが駄目でした。

 高さ5メートルくらいある崖から海に飛び込むって、傍から見たら投身自殺ですね。

 幸い周りには誰も居ませんけど。

 ちょっと怖いですが覚悟を決めて飛び降ります!


シュタッ


 一瞬の浮遊感の後、海に落ちると思ってたのですが板張りの足場に着地しました。

 あ~上からだと覗き込まないと見えない角度なんですね。

 そして彼の家はと言えば、小さな造船ドックと言えば良いのでしょうか。

 コの字型に地面があって中央は海の中です。

 地上部分も立って歩けますが狭いですね。


「陸上の客は滅多に来ないからなぁ」


 一見家具が少なく見えるのは海中の方がメインだからですね。

 海中を覗けばなるほど結構広い。

 そして地上部分の奥に空いた穴。

 壁が崩れて酷いことになってます。

 う~ん、壁は直すとして、穴を全部埋めるのは大変ですよね。

 代わりに侵入者撃退用のトラップでも仕掛けておきましょうか。



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