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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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185/191

185.問題だらけの養殖業

明日からGWだから描き溜めが出来たら良いなぁ(願望)


「じゃあ私は1号館の方を見ないといけないから。何かあったらさっきの事務所で呼んで」

「はい、わかりました」


 説明を終えるとシャコさんは颯爽と出て行ってしまった。

 残されたのは僕とフラン、そしてプールの中の獣魔たち。

 えっと、こういう時まずは挨拶からだよね。


「こんにちは。今日からみんなのお世話をすることになったラキアです。こっちの子はフラン。

 よろしくお願いしま~す」

(くすくす)


 し~ん。

 そうなるかなとは思ってたけど、アコヤン達に反応は一切なし。

 無視されているというより水中に居るから聞こえてないのかも。

 ひとまずはプールの周りを掃除しつつ様子見かな。

 僕はブラシを手にプール周囲の床を磨くことにした。

 その間、アコヤン達はやっぱり反応なし。

 僕に興味が無いのかそもそも存在に気付いてないのか。

 生態がまるで分からないので完全に手探り状態だ。

 ただ、それでも動きが鈍いのは分かる。


(いや魚じゃなくて貝だからそんなに速く泳がないのかも?)


 半透明のヒレを動かしてスイスイとフワフワの中間くらいの動きで水中を漂っている。

 数えてみたらプールの中に32体居て、密度でいうとそこまでぎゅうぎゅう詰めではないものの、結構スレスレを交差して泳いでて良くぶつからないなと感心してしまう。

 あ、ということはやっぱりお互いの位置を把握する能力はあるんだ。

 目が無いのは視線が無いので確認済みなんだけど、代わりの物と言えば音や波の振動を感知してると考えるのが妥当だ。

 であるならば。

 僕はブラシがけが1周したところで餌箱から魚を1匹取り出し、プールの水面が波打つように揺らしてみた。


「はーい、ごはんですよ~」

『……!』


 やっぱりこれには反応を示してくれた。

 でもこっちに近付いてきたのは近くの3体だけ。

 残りは気付いたけど我関せずって感じ。

 ひとまずはその3体に魚を渡してから、そのまま手をプールの水に浸しつつ話しかけてみた。


「みんなあまりお腹空いてないのかな」

『…?』


 お、小さく反応あり。なら続けて。


「良かったら僕の手に触れてくれないかな。

 そうしたら少しは君たちの気持ちも分かると思うんだ」

『……。』


 魚を食べた内の1体がそろりと近づいてきてヒレで僕の手にタッチしてくれた。

 ぶよんとコンニャクのような手触りを感じつつ、フォニー達と視界を共有した時の逆でアコヤンの視界を共有させてもらった。


(!!?)


 一瞬にして真っ黒に染まる視界。

 暗いのとは違う、全く光を感じない状態は底なしの穴に落ちてしまったかのようだ。

 お腹にグッと力を入れて踏みとどまり耐える。

 しばらくすると何もないと思っていた空間に音の波紋が広がり、反響した部分が薄っすら光ったように視えた。


トン、トトン。


 やっぱりアコヤンは光の代わりに音でお互いの位置を確認していたんだ。

 そう思った次の瞬間、音が溢れた。


トトトトトトトトトッ

(ぐっ、うるさい)


 1つ1つの音は小さいけど、沢山集まるとハードロックのドラムのようだ。

 こんなのをずっと聞かされていたら頭がおかしくなる。

 僕は慌てて手を放して視界を元に戻し、後ろに倒れ込みながら深呼吸をした。


(くすくす?)

「うん、大丈夫」


 顔を覗き込んで来たフランの背中を撫でて心を落ち着ける。

 なんだ今のは。

 光は無い。これはそもそも受光器官が無いせいだろう。

 そして音が氾濫している。しかもその音は不協和音というかお互いの不満を音にしてぶつけ合ってる感じで、アコヤン達が病気になっていない方が不思議なくらいだ。

 いや既に慢性的な病気に罹っている状態なのかも。

 これがアコヤン達が元気ない理由で間違いない。

 でも分かったからと言ってすぐに解決、とはならない。

 まずはシャコさんに相談かな。


「お、今日の作業はもう終わったのかい?」


 事務所に行って声を掛ければシャコさんはすぐに出てきてくれた。

 さっき会った時に比べて若干服が汚れてるのでシャコさんも1号館でアコヤン達の面倒を見ていたんだろう。

 って、そうか1号館。そっちは問題ないみたいだし参考に出来るんじゃないかな。


「掃除は終わりました。

 あとアコヤン達の不調について幾つか分かった事があります。

 それの解決の為にも1号館を見させて貰えまえんか?」

「いや、だめだ。

 1号館はここの生命線だ。そう簡単に部外者に見せる訳にはいかない」


 僕のお願いにシャコさんは首を横に振った。

 どうやら信用不足らしい。


「それよりあの子たちの不調の原因を教えてくれないか」

「分かりました。1番の原因は、プールが狭すぎることです」

「は?」


 シャコさんは想定外の言葉を聞いたという感じで驚いていた。

 ということは1号館はもっと狭いのか?

 と思ったけど別の理由で驚いていた。


「学者先生からは広さはあれで十分過ぎる程だと言われたんだ。

 だから狭すぎるということは無いはずなんだけど」


 また学者先生か。いったいどういう人物なんだ?

 そんなに凄い人ならその人に2号館の現状を見せれば問題の特定も解決策の提示もして貰えるんじゃないだろうか。

 でもそうなっていないところを見るに何かある気がする。


「学者先生は2号館の様子を見てなんて言ってたんですか?」

「その、依頼を受けて来た人が仕事をサボったせいだって」


 ……ほぉ。

 つまり自分は悪くないって言ってるんだね。

 しかもそれでおしまいって。何の解決にもなってないじゃないか。

 これはちょっと突っ込んで聞いてみても良いかもしれない。


「アコヤンの養殖って、昔からこの街で行われてる事業なんですか?」

「いいや。私が初めてアコヤンと従魔契約に成功して、養殖を手掛けるのも私が最初の筈よ」

「じゃあ別に過去に成功例があった訳じゃないんですね。

 それでどうやってその学者先生はプールの大きさが十分だって判断出来たんでしょうか」

「え、それはほら、他の一般的な魚の養殖を参考にしたんじゃない?」

「あの見るからに一般的な魚と見た目もサイズも異なるアコヤンに適用できると思いますか?」

「それは…………無理な気がするわね」


 ここでようやくシャコさんも違和感を覚え始めてくれたらしい。


「他にその学者先生はどんなことを言ってましたか?」

「えっと、この養殖が成功したらかなりの利益を見込める筈だから投資は惜しむなって」

「あー」


 これはあれだ。

 とっても良くないやつ。


「シャコさん、もしかして養殖場を作るのに借金してます?それもその学者先生の推薦で」

「え、よく分かったわね!」

「いやな予感ってやつですけど。

 そんなシャコさんに良い事を教えましょう。

 事業を始めるときに真っ先に利益を考えるのは学者ではなく商人です。

 もっと言うと成功する保障も無いのに借金を勧めてくるのは詐欺師の常套手段です」

「そんなっ!?」


 愕然として首を振ってる所悪いけど、こんなのは今時小学校で習う話だ。

 情報化社会で悪質なサイトやSNSで詐欺が横行する時代なので自衛のために厳しく指導されてきた。

 こっちの世界ではまだそういう教育はされてないんだろうなぁ。



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