表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

167/180

167.一国一城の主

<○○視点>


 俺の名はシャムシン。

 この究極幻想譚のサービス開始から居る初期プレイヤーだ。

 と言っても俺の事を知ってる奴なんてほぼ俺の配信を観てくれてる人だけだろう。

 なにせ俺が求めた祝福は少年時代に憧れた【秘密基地】。

 当然大っぴらに公開するものでもないし、ここまでのイベントで活躍する場面も無かったし。

 あ、暗黒教団の連中から仲間にならないかって誘われたことはあったけど、断った。

 俺が求めているのは一国一城の主。

 誰かの部下になるなんて真っ平御免だ。

 ただ、特に専用クエストがある訳でもなく、明確な目標もない中で黙々とひとりで作業するのは限界があった。

 そんな時に声を掛けてきたのがアリバンというプレイヤーだった。


『俺達の手で最強の帝国を創らないか』


 最初聞いた時は胡散臭さしか感じなかったけど、彼の祝福を聞いて確かに俺の祝福と組み合わせれば可能かもしれないと思った。思ってしまった。


 俺の祝福で出来ることは異空間に自分好みの基地を組み立て、通常空間の好きな場所に出入り口を設けること。

 もちろんレベルが低いうちは空間の広さや配置できる施設の制限が厳しくちょっとした空き地と小屋程度のものだったし、出入り口も1つだけだった。

 しかし半年レベルアップと改良をし続けた頃には、1000人を収容できる砦にまで発展し、出入り口も離れた場所に複数設けることが出来るようになった。

 ただし利用者は俺一人。

 はっきり言って宝の持ち腐れ。正直ちょっと寂しい。

 外では大規模イベントだなんだと盛り上がってるのに俺はボッチ。

 そこにアリバンの祝福だ。

 彼の祝福は【指導者】。

 一部のNPCを自分の支配下に置く能力だという。

 最初に会った時も100人の部下を引き連れていた。

 彼らの課題は拠点となる場所がないこと。

 少人数だった時はテントを張ったり洞窟を根城にしていたらしいが、人数が3桁になりもっと増やすことを考えるとそれに見合った場所が欲しかったそうだ。


 拠点を持つ俺と戦力を動員できるアリバン。

 俺達は共同経営者という形で手を取り合った。

 それからというもの、アリバンは人員の増強のために各地を歩き回り盗賊NPCを勧誘して傘下を増やしていった。

 対する俺は増える人員を食べさせるために拠点内に畑や牧場を用意しアリバンが集めた部下たちに働かせた。

 彼らの多くは盗賊になる前は小さな村で農業を営んでいたそうで問題なく働いてくれた。

 話を聞けば根っからの悪党なのではなく、村がモンスターに滅ぼされ仕方なく盗賊に身をやつしていたそうだ。

 モンスターの出ない俺の拠点は天国のようだと笑っていた。

 ちなみに俺の配信を観てる人達からは『ひとりだけ箱庭ゲーやっててウケるw』とかコメント貰った。

 俺としては意外と水が合ってたので誉め言葉だと受け取ろう。


 そうして外では新年祭が終わって拠点内の人数も1500人を超えた頃、アリバンが宣言した。


「俺達も大分人数が増えたし、そろそろ次の段階に進もうと思う。

 俺達の今の課題は何だ。そう、金が無いことだ。

 無ければどうする。ある所から奪えばいい。

 目星はもう付けてある。砂漠の中にある『黄金の街』だ。

 きっとたんまり金を貯め込んでることだろう」


 その言葉に歓声を上げて賛同したのは全体の半分くらい。

 残りは「へぇ~」と特に高揚することなく聞いている。

 お金かぁ。

 今の生活を続けるだけなら無理して奪う程ではないと思う。

 だけど別に彼の言葉を否定する気はない。

 俺と彼は立場は対等なものだし、集まってる人の中にも好戦的なものも居ればここの生活に不満がある人もいる。

 そういった人たちを引き連れて外で活動するというのだからむしろ助かる。

 そして意気揚々と出撃していった第1回攻略隊は惨敗。


「へ、一筋縄ではいかないか。やっぱり金に物を言わせて防衛を強化してるんだな」

(いや、無策に正面から突撃した結果では?)


 アリバンの負け惜しみとも取れる言葉に心の中で返事をしつつ、砂漠について調べてみた。

 あ、これなんか使えるかもしれないな。


「砂漠には定期的に砂嵐が来るらしい。これを利用するのはどうだ?」

「おぉ良いなそれ!

 砂嵐の中なら守備隊も満足に動けないだろうし、蹂躙してやるぜ」

(いやそうじゃないだろ)


 砂嵐に紛れて街中に潜入して内側から門をこじ開けて突入するとかさ。

 このまま行ったらまた負ける未来しかない気がするけど、う~ん、まいっか。

 俺に実害は無いし。

 そして数日後の砂嵐の日。

 結果は予想通り惨敗。一応防壁まで辿り着けたのだからちょっと前進か?

 ただ戻ってきたアリバンはちょっと荒れていた。


「くそっ。お前の提案に乗ったのに駄目だったじゃないか。どうしてくれるんだ!」

「いや俺に当たるなよ」

「だいたいお前なんていっつもここに引き籠って何の役にも立ってないじゃないか。

 これなら俺一人でやってた方がまだマシだ!」

「そこまで言うならコンビ解散しても良いんだけど?」

「はぁ!? 望むところだコノヤロウ」


 売り言葉に買い言葉。いや勝手にアリバンが切れてただけだけど。

 そうしてアリバンは拠点内に居た部下全員を引き連れて出て行こうとした。

 まぁここに居た奴は全員アリバンが集めてきたのだから彼の指示に従うのは当然だ。

 俺はアリバンの背中に一声掛けた。


「そうそう、黄金の街は日の出の時間に東側から向かうと何かあるらしいぞ」


 俺の配信を観てくれてる人からの情報だ。

 実際に何があるのかまで聞いてるけど、そこまで伝える義理は無いだろう。

 自分で情報を集めるなり直接確かめるなりして欲しい。

 アリバンはちらっとこちらを見ただけで何も言わずにそのまま出て行った。

 その30分後。

 出て行ったはずの部下たちのうち300人程が戻ってきた。


「どうしたんだ、お前たち」

「シャムシン様。これまでのように俺達をここに住まわせて頂けないでしょうか」

「「お願いします!」」

「え、でもお前たちの主はアリバンなんだろ?」

「いえ、あの人は俺達を呼び集めたってだけで、忠誠を誓った訳でも契約を結んだ訳でもないです。

 出来ればシャムシン様に俺達の主になって欲しいです」

「他の皆も同じ考えなのか?」

「「はい!!」」


 戻ってきたのは畑仕事などを真面目に取り組んでくれてた奴らばかりだ。

 彼らとなら多分問題なく活動していけるだろう。

 秘密基地ここの管理も今更俺一人で全部やるのは無理があるし。


「仕方ないな。だけど人数減ったし、今まで以上に忙しくなるから覚悟しておけよ!」


 こうして俺の秘密基地は300人の住民と再スタートを切ることになった。

 それと、食糧生産は内部で何とかなるんだけどそれ以外はやっぱり外部と交易をおこなう必要がある。

 俺が領主だというのなら領民には豊かになってもらいたい。

 そこで考えたのが宿場町兼渡し屋だ。

 例えば今いる砂漠は北に王都、南に海があり、海で獲れた海産物を王都で売る商人が行き来している。

 だけどやっぱり砂漠を渡るのは大変だろう。

 そこで俺の秘密基地の出番だ。

 ここの出入り口はそれなりに離れた場所に設置可能なので、砂漠の南側と北側に設けておき、商人からは多少の入国税を貰いつつ秘密基地で休憩所を貸したり食料品や水の販売を行う。

 本来なら南口から入って北口から出ると大幅なショートカットが出来るんだけどそこは秘密。

 そうじゃないと砂漠の中にある街に商人が寄らないようになってしまい恨みを買う恐れがあるから。

 安全なオアシスが増えた、くらいで思ってもらおう。

 ただし、流砂の両岸に出入り口を設けて簡単に流砂を渡れるようにはした。

 これにより流砂で分断された東西の街の交流が活発になって両方の街から感謝されることになった。

 そして。

 気が付けば秘密基地の人口は2000人を超えていた。

 まだまだ定住を希望する声は多いので今後も増えていくことだろう。


 そうそう。

 商人たちから聞いた話だけど、結局アリバンは黄金の街の攻略には失敗したらしい。

 俺の伝えた情報をもとに真実に辿り着いた訳ではなく、待ち伏せを受けて部下の殆どを失ってどこかに逃げて行ったそうだ。

 その後どうなったのかは分からない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
『指導者』であって支配者では無いことに 気付かないようでは宝の持ち腐れと言うことでしょうな〜 考えの浅い人物には過ぎたる祝福だったみたいですね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ