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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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166/180

166.開けゴマではないらしい

 無事に盗賊たちの姿が視えるようになったので、街を1つ攻め落とすのにどれ程の戦力を動員してきてるのかと全体像を把握しようと思ったんだけど、あれ、意外としょぼい?

 人数こそ500人以上居るんだけど攻城兵器の類は見当たらない。

 かと言って攻撃魔法が得意な人が居る訳でもなさそうだ。

 今も放たれた火炎魔法が防壁に傷一つ付けられず霧散していた。

 一応防壁に張り付いてる人も居るけど、ツルハシやらハンマーやら、あれで崩せるとは思えない。

 対して守備隊側の攻撃は的確だ。

 この砂嵐の中でも有効な貫通力の高い攻撃を中心に放っている。

 ただ攻撃範囲は狭いので1発で1人倒すのが精々。

 撃退しきるにはちょっと時間が掛かりそうだ。

 まぁ僕らが加勢する必要はないだろう。


「僕さ。ここに来てからずっと疑問だったことがあるんだ」

「なんですか?」


 唐突な僕の呟きに隣でフォニーが首を傾げた。


「どうして僕達は盗賊の仲間だと疑われなかったんだろうって」

「あぁたしかに」


 僕達がニードリッヒさん達と出会ったのは街の西側の流砂のそば。

 盗賊たちも僕達と同じくこの地の人間ではないとなれば真っ先に関係性を疑うと思うんだ。

 でも全然普通に受け入れられて街にも入れた。

 その理由は盗賊たちの容姿にあった。


「冒険者の誰かが言ってたけど盗賊はハゲばっかりみたい」

「えぇ?」

「この砂嵐の中、頭巾も帽子も被ってないの?」

「うん、流石に口元は布で覆ってるけど」


 なぜかむき出しの頭部。

 口元を覆えるなら頭も一緒に保護すれば良いのに。

 色んな意味で大丈夫なのかな頭。


「あ、そろそろ撤収するみたい」


 数少ない頭に髪のある人が防壁に向かって怒鳴っている姿が視える。

 この砂嵐で声届くのか疑問だけど。

 そして言いたい事を言い終えたのか、ぞろぞろと撤収していく。

 向かう先は西。

 守備隊は、特に追撃する気はなさそう。

 まぁこの砂嵐だとすぐに見失いそうだし無理して追いたくはないか。


「僕達も行こう」

「はい」


 コロンの盾で守られている僕達は気にせず盗賊たちを追う事にした。

 本当は砂嵐に乗じて撤収する彼らの中に潜り込みたかったんだけど、こうも見た目が違うとすぐに気付かれそうなので単純に後を追うだけに留める。

 そうして辿り着いたのは流砂の手前にある岩場の1つ。

 特に洞窟になっている訳じゃないんだけど、あんなところに集まってどうするんだろう。

 固唾を飲んで様子を窺っていると、先ほど怒鳴っていたのとはまた別の髪のある男性がコンコンと岩の表面を叩くと滑るように横にスライドして、現れたのは光の門。


(妖精の国に行く時のゲートに似てるかも)


 盗賊たちは躊躇うことなくその門の中に飛び込んでいって、最後の一人が入ると同時に岩が元の位置に戻った。

 僕達は少しだけ待って盗賊たちが出てこないのを確認してから岩のすぐ近くまで行ってみた。


「その動いた岩ってここで合ってる?」

「うん、間違いないよ」


 コロンが至近距離から岩を調べながら首を傾げる。

 なにせ岩には切れ目が全くないのだ。

 僕が目撃した事実が無ければ完全に壁と一体化してると思うだろう。


「試しに動かしてみるわよ」

「気を付けてね」


 3人の中では一番の力持ちであろうコロンが岩に手をついて動かそうと試みる。

 しかしびくともしない。


「いっそのこと破壊してみる?」

「それは止めておこう」


 破壊出来るかどうかも怪しいし、上手く破壊できたとしてもあの光の門が姿を現すとも限らない。

 あれは恐らく女神の祝福かそれに近いもので、少なくとも許可された人しか通れないと思う。

 それに出入り口がここだけじゃないかもしれない。

 ここを破壊した結果、別の場所から出入りされたのではいたちごっこになってしまう。


「今は彼らがどうやって身を潜めてるのかを確認できただけで良しとしよう」


 僕らに求められているのは盗賊のアジトの調査までだ。

 中に潜入して一網打尽にすることまでは依頼されていない。

 盗賊の残党が戻ってくるかもだし早めにここを離れよう。


 そうして僕達が街に戻ってくる頃には砂嵐も通り過ぎていた。

 街の人達も姿を見せていて、家から箒を持って玄関先に積もった砂を掃いてどかしている。

 ほんの数センチしかないのですぐに終わりそうだ。


「雪みたいに高く積もることは無いんだね」

「お、冒険者さんか。盗賊の撃退ご苦労様。

 もう少ししたら屋台も出るからゆっくりしていきなよ」

「は~い、ありがとうございます」


 僕の呟きが聞こえたのか近くに居た人から挨拶されたので手を振って返しておく。

 どうやらさっきの襲撃はギルドだけじゃなく街全体に知れ渡っているらしい。

 砂嵐の予報といい、独自の情報伝達網が整備されてるのかな。

 ギルド前に到着した僕達は中に入る前に着替えることにした。

 なにせ全身砂まみれなのだ。

 このまま入ったら絶対怒られる。

 着替えを終えて中に入れば案の定、数人の冒険者が砂まみれになった床の上に正座でお説教されていた。


「すみません、依頼の報告がしたいのですけど」

「はい、こちらで伺いますよ」


 説教されている人を横目に僕達は受付で先ほど確認してきたことを伝えた。


「なるほど、岩の中にゲートですか。

 それだとこちらから突入する訳にはいかなそうですね」


 どうやら僕らと同じ結論に至ったらしい。

 仮に突入出来たとしても敵のホームなので罠などもあるだろうし危険は増す。

 犠牲が出るくらいなら今のまま街の防壁を利用して防御に徹した方が良いだろう。


「ちなみにそういう盗賊の話って以前にもあったんですか?」

「いえ、少なくとも私が職員になってから初めて聞きました」

「なら例えば女神の祝福を受けた異界の冒険者が絡んでる可能性も高い?」

「そうですね。時期的にあり得ると思います」


 なるほど。であるならばだ。

 この盗賊騒動。裏から手を回せば終息させられるかもしれない。



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