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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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144/180

144.雪像づくり

<コロン視点>


 その日、私たちは王都の冒険者ギルドにやって来ていた。

 目的はそう、雪像づくりの申請をする為だ。

 受付嬢でありチームメンバーのニットさんから申請用紙を受け取り、説明を聞きながら書き込んでいく。

 あ、本来ならクエストウィンドウから操作すればワンタッチで申請が完了する。

 だけどこうして受付でわざわざ用紙に書き込むのはちゃんと意味がある。


「こっちの方が楽しそうじゃないですか」


 はずだ。きっと。

 えっとフォニー。何かあって提案してくれたのよね?

 このお隣でのほほんと笑ってる顔はどことなく彼を連想させる。


「ちょっとラキアに似て来たんじゃない?」

「え、そうですか?」


 フォニーは私が苦言を言ってもむしろ嬉しそうにしてるし。

 さらに笑顔を深めながら私に言い返してきた。


「でもそういうコロンちゃんもすんなり納得していたような?」

「き、気のせいよ」

 

 私もラキアっぽくなってる?

 そんなことあるはずないじゃないまったく。


「それより雪像のテーマは別に女神や過去の勇者じゃなくて良いのよね?」

「はい、特に制限はありません」


 なぜか微笑ましいものを見るような眼をしているニットさんに聞けばしっかりと頷いてくれた。

 じゃあ後は、雪像の完成まで彼に気付かれないようにするにはどうすればいいか。

 今回はサプライズ企画なのだ。

 目の良い彼の事だから遠くからでも私達の事を識別出来るだろうし、見つかったら何の像を作ってるのかと聞いて来るに違いない。

 雪像づくりは基本的に各街の周囲および街道沿いで行われている。


「これまでの行動経路から考えて、王都南の雪像広場が良いと思う」

「そうですね。街道沿いはいつ通るかもしれませんし、木を隠すなら森の中とも言います」

「あの方は頻繁にギルドに顔を出してくださいますので、私達が動向を確認しそれとなく誘導することも出来ると思います」

「それは助かるわ」


 バレたら職権乱用だと怒られそうだけど、使えるものは使おう。

 そうして時間も限られているので私達は早速王都の南へと移動した。

 そこでは既に多くのプレイヤーが雪像づくりの準備を始めていた。

 中には家でも建てるのかってくらい大量の雪を集めてる人達もいる。

 いったいどんな像を作るつもりなのか気になるけど、まずは自分達を優先だ。


「場所はこの辺りで良いわね」

「はい。あ、そうだ。

 コロンちゃんの盾で外から中が見えない様に壁を作ることは出来ますか?」

「出来ると思うわ」


 普段使っている盾じゃなく、祝福とスキルを応用すれば周囲の雪を盾に見立てて扱えるだろう。

 作る像は原寸大の予定だし2メートル四方の空間を確保出来れば十分かな。

 ってこれ、外から見たらさっきの大量に雪を集めてる人達と同じね。

 かまくらというか、雪の小屋を作成した後はその中に人一人分の雪を集めてしっかりと固めていく。


「ネットで調べてみたら、一晩寝かせたり水を掛けて再氷結を促したりして頑丈にするのが良いんだって」

「確かに作ってる途中でぼろっと崩れたりしたら嫌ですよね」


 そんな訳で1日目は像のベースとなる雪の柱を作って終わった。

 2日目からは雪の状態を確認しつつおおざっぱに切り出していく。


「リアルだと日光で雪が溶けてしまうので、日差しを遮るシートは必須みたいですね」

ゲーム世界(こっち)だとどうなのかしら」


 近くで同じように雪像を作っている人達は別段日除けなどは作ってないけど、特に問題にはなって無さそう?

 まぁゲームだしそこまで拘ってはいないのかもしれない。

 作業の途中でラキアから『クリスマス人形を渡したいんだけど会える?』ってメールが来たけど、今は忙しいから無理って返しておいた。

 彼はあれで察しが良い所があるから下手に会うと勘づかれてしまうかもしれない。

 どうせ私達もクリスマス人形を渡すことになるので、それだったら最終日に一斉に交換し合うで良いだろう。

 そして『終わりなき迷宮』という所に向かったとニットさんから連絡があったので上手くすれば数日は戻ってこないだろう。


「『終わりなき迷宮』って上級ダンジョンですよね?

 ラキア君ひとりで大丈夫でしょうか」

「まぁ大丈夫なんじゃない?

 先日見た時は坑道に潜った時より格段に強くなってるみたいだったし」


 実際に戦ってる所を見た訳じゃないけど、正面から見た時に直感で『彼の攻撃は防ぎきれないかもしれない』と思ったのだ。

 もしかしたら今なら魔鋼製のゴーレム相手でも楽に勝ててしまうんじゃないだろうか。

 まぁまだまだこのチームの前衛は譲らないけど。


「それにラキアよりまずはこっちの問題を解決しないと」

「そうですね。まさかここまで難しいとは思いませんでした」


 雪像づくりは現在、細かい部分を掘る作業へと進んでいるのだけど、しばしば手が止まってしまっている。

 その原因は私達の芸術性という面もあるのだけど、何より『意外と覚えていない』という問題に直面していた。

 分かりやすい所で言えば表情。

 普段からよく見ていたと思っていたのにいざ思い出そうとすると曖昧なのだ。

 一応配信動画を見返してみたりもしているのだけど、いざ作ってみるとこれじゃない感がしてやり直しになる。


「いっそ直接確かめに行く?」

「う~ん、それは最後の手段ですね」


 それから数日。

 結局表情だけがまだ出来ていない。

 画竜点睛を欠くって言うけど、まさにそんな感じだ。

 こういう行き詰った時は誰かに相談すべき。

 一番に思いついたのは年の功だ。


「そう言う感じなのですがどうすれば良いでしょう」

「あらあらまあまあ」


 こたつに足を入れながら最初の街のおじいさん達に相談しに来た。

 ふぅ~。私こたつって初めて入ったけど、なるほどこれは温泉と同じで一度入ったら抜け出せなくなる。

 まさに悪魔の発明だ。

 私の隣でフォニーもとろんと溶けている。


「記憶なんてものは元から曖昧なものだ」


 おばあさんの隣でおじいさんはお茶を啜りながらそう答えた。

 腕利きの職人でもあるおじいさんなら何か良い答えを持ってるんじゃないかと思ったけど駄目だったか。

 そう思ったけど、続けておじいさんはにこりと笑った。


「だがそれでいい。実物と違っていて良いんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ。なぜならそれが、お前さん方が望む姿だからだ。

 いっそ本人が見たら嫉妬するくらい男前の表情にしてやれ」

「「はい」」


 私達の望む姿かぁ。

 ……いやいやいや。

 一瞬、私の顔を覗き込んで優しく微笑んでる姿が浮かんだけど気のせいだ。


「それとな。異界から来た奴らは顔立ちは似たり寄ったりだが、顔つきは全く違う。

 それは心の形が顔に出るからだ。

 知り合いの人形師はそれを表現するのに生涯を捧げている」


 おじいさんからの訓示を受けて、改めて雪像に向き合った私達は、最終日の2日前になんとか完成させることが出来たのだった。

 ……なんか、拘ってたら凄いリアルに出来たけど動きだしたりしないよね?

 完成後は設置場所を移動出来るようなので、あそこに置いておいて明日か明後日にみんなで見に行くようにしよう。



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