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不自由な僕らのアナザーライフ  作者: たてみん


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145/180

145.雪まつり

 12月22日。

 クリスマスイベントは今日を含めてあと2日。

 今日はこのイベントで製作された雪像の品評会が行われている。

 会場は王都を中心に近隣の街の周辺とそれらを結ぶ街道沿い。

 あと何か理由があれば街道から離れてても良いらしい。

 プレイヤーの皆が頑張ったお陰で数多くの雪像が並んでいて壮観だ。

 雪像のモチーフは3割くらいは女神で残りは勇者と思われる人だ。

 同じ勇者(だと思う)像も沢山あるんだけど、サイズもポーズもあと精巧さもそれぞれなので見ていて飽きない。

 それと多数の屋台が出ていて完全にお祭り状態だ。


「あ、ラキア君。リンゴ飴が売ってますよ」

「ほんとだ」

「ラキア。目隠し射的だって。あのクマのぬいぐるみをよろしく」

「はいはい」


 昨日で用事が済んだらしいフォニーとコロンと一緒に賑わう街道を練り歩く。

 最初の街をスタートして王都の周りをぐるっと見ていく予定なんだけど、二人ともテンションが高い。

 かく言う僕もお祭りってリアルだと行けないから結構ワクワクしている。

 武闘大会の時も屋台は出てたけど、あの時は何か事件が待ち構えてる筈だって安心して楽しめなかったし。

 対する今日は何の憂いもない。

 それにしても屋台って不思議だ。

 リンゴ飴とかチョコバナナとか、そのまま食べても美味しい果物を敢えて加工する。

 普段だったらまずしない事だけどお祭りの屋台ならこういう遊び心も良いなと思ってしまう。


「ちなみにあのぬいぐるみは正面から矢を当てても倒れないようになってるよ?」

「え、そうなの?それって詐欺じゃない」

「かもね。でも横から当てれば落ちそうだから……ここかな」

シュッ……カコンカコンッ。ぼてっ。


 矢を放った直後に目隠しを外して確認すれば、近くに立て掛けてあった箒が倒れてぬいぐるみを落としていた。

 それを見た的屋のおじさんが一番驚いてたけど、文句を言おうにもぬいぐるみの後ろに隠れていた転倒防止の板が丸見えになってしまったので、そっちをごまかすのに必死だ。

 僕らは告発するつもりは無いけど。あ、ほら。私服の警備隊が巡回してるから。

 怒られてるおじさんを横目に僕らは次に向かう事にした。


「ちなみにそのぬいぐるみって、何か特別なものなの?」

「限定品っぽいけど、特別な効果は無さそう。ただのハウジングアイテムね」


 そうなのか。まぁコロンが嬉しそうだから良し。


「ふたりは冬イベント関連のクエストって幾つ見つけたの?」

「私は1つだけです」

「私も1つだけね」

「あれ、そうなんだ。最近忙しそうだったからてっきり幾つもクエスト受けてるんだと思ってた」

「「……」」

「それはまぁ」

「色々あったのよ色々」


 僕の言葉に目をキョロキョロさせる二人。

 いや、聞いて欲しくないなら聞かないよ?


「ラキア君の方はどうだったんですか?

 確か『終わりなき迷宮』に行ったんですよね」

「うん。ってよく知ってるね」

「えっと、そう。同じ【十六夜】チームですから」


 僕がダンジョンに行ったのを知ってるのはニットさんとダンジョンで会ったハルトさん達。

 ならニットさんから伝わったんだろう。

 別に秘密にしていた訳でも無いし、ギルドとしてはもしもの事態を考えてチームメンバーに伝えるのはむしろ仕事と言える。

 で、ダンジョンがどうだったかと言えば。

 

「モンスターは大したこと無かったんだけど謎解きが大変だったよ。

 だから完全攻略が出来てないけど、特に理由が無ければ再攻略はしないかな」

「ラキア君にそこまで言わせるとは相当難しいダンジョンなんですね」

「途中【電光石火】チームと合流したんだけど、彼らは攻略に成功したらしいから、機会があったら聞いてみるのも良いかもしれないね」

 

 雑談をしながら屋台をはしごしていたら無事に王都に到着。

 冒険者ギルドに行けばフェルトさんとニットさんが僕らを待っていた。


「おはようございます。フェルトさん、ニットさん」

「お待ちしておりました。皆様」


 と言う訳でここからはチーム【十六夜】全員でお祭り見物をしていこうという流れだ。

 フェルトさん達はギルドの仕事もあるし、こういう機会じゃないとなかなか一緒に遊ぶって出来ないからね。


「ちなみに今日はギルドの仕事は休みなんですか?」

「はい。今日明日は職員は交代で休みを頂くんです」

「あまり大きな声では言えませんが、休みなく働く人も居ます」


 それはつまりクリスマスにデートの予定が入ってない的な話かな。

 もちろんそれだけじゃなく、年配の方が「若い奴は楽しんで来い」って留守を預かってくれるケースも十分考えられるけど。

 まぁどちらであってもお陰様でこうして休みが貰えたのだから感謝だ。


「王都を見て回るとしたらどこから行くのが良いんですか?」

「そうですね。何と言っても王城前広場の巨大雪像は一見の価値ありです。

 明日なら中央広場で優秀作品が並びますが今日は空です。

 後は南の雪像広場ですね。100体を超える雪像が並ぶ姿は壮観ですよ」

「よし、じゃあまずは王城に行ってみようか」


 と意気込んで来たものの。

 予想通り凄い人だかりだ。

 まるで王都中の人が集まったんじゃないかってくらいぎゅうぎゅう詰め。

 一応警備隊の人が列の誘導をしてくれてるけど、それでも全然近づける気がしない。


「ごめん、僕こういう人混み苦手」

「分かります。都心の満員電車とか地獄ですよね」

「そうね。社会人になったらリモートワークで働ける職場を探すわ」


 全会一致で近くまで行くのは断念。

 でも幸いにしてここには王都に詳しい人が居る。


「そういうかなと思って、良い場所を確保してあります」


 ニットさんの案内でその場を離れた僕達は近くの雑貨店へと入った。

 ニットさんが店主と2言3言話すと2階へと案内されて更に窓から屋根の上へ。

 そこには僕らの他にも既に何人か来ていたので軽く会釈をしつつ、滑り落ちない様に注意しながら王城の方を見れば、雪像の姿を拝むことが出来た。 


「おぉ、ちょっと遠いけどここからでも雪像が見えるんですね」

「この距離であの大きさって事は全長10メートルくらいでしょうか」

「魔法があるとはいえ、重機も無いのによく作ったわね」

「あの雪像は毎年、王国騎士団が中心になって建造してるんですよ」

「国王夫妻の像なのでその出来次第でボーナスの額が変わるって聞いたことがあります」

「それは気合が入りますね」


 それで問題の出来は、と。

 ふむふむ。僕は国王には会った事が無いのでコメントしづらいけど、王妃様はなかなかのクオリティだ。

 特に手に持った扇子を閉じて堂々と笑顔を向けている所とか、目じりの小皺が消えている所とか、ついでに胸のサイズが実際より2割増しになってる所とか。

 騎士団にもなかなかに気が利く人が居るらしい。

 あれならボーナス増額間違いなしだろう。

 無事に像の見物を終えた僕達は屋根から降りて王都の南へ。


「おぉ~」


 そこには思わず息が漏れる程、大量の雪像が建てられていた。

 しかも武器を構えて臨場感溢れる姿で、今にも動き出しそうな雰囲気だ。

 本職の人とか混じってないかな。

 立ち並ぶ像の間を縫うように見て回っていると知り合いがいた。


「ミッチャーさん。こんにちは」

「あら、ラキア君たちも来てたのね」


 ひと際立派な雪像が建っていて、その隣にミッチャーさん含む【電光石火】チームの人が沢山集まっていた。

 という事は。


「もしかしてこの雪像を作ったのがミッチャーさん達ですか?」

「ええそうよ。『開拓の勇者』と呼ばれた人物ね」


 なるほど、それで手に鍬を持っているのか。

 でも構えが地面を耕すというより、モンスターに殴り掛かりそうな感じだ。

 いや、実際に開拓って言ったら森を切り開いたり、そこに元々住んでいた動物やモンスターを追い払うことになるから、あながち間違っていないのか。


「それでラキア君たちが作った雪像はどこにあるの?」

「あ、それなら実はあまり人が来ない場所に安置してあるんです」

「「え!?」」

「ん?」


 僕の返事に何故かフォニーとコロンが驚いていた。

 どうかしたのかな。



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