表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/37

確信


 拓海は、改札で優斗を見たあの夜から引っかかっていた。


 優斗の、あの位置。


 あの視線。


 動かなかったこと。


 頭の中で、何度も繰り返す。


 それだけで十分だった。


 でも、確信には足りない。


 証拠がない。


 だから、踏み込めない。


 踏み込めないまま、放置していい話でもなかった。


 拓海はスマートフォンを手に取った。


 香帆の連絡先を開く。


 指が止まる。


 今、何を聞く?


 どう聞く?


 考えて、やめた。


 このまま聞いても、答えは出ない。


 なら。


 見るしかない。


 直接。


 拓海はスマートフォンを閉じた。


 息を吐く。


 決めた。


 ――


 数日後の夜。


 拓海は、香帆の会社の最寄り駅にいた。


 改札の少し手前。


 人の流れを見渡せる位置に立つ。


 仕事帰りの人間が、次々と通り過ぎていく。


 スーツ姿。


 私服。


 イヤホンをつけたまま歩く人間。


 特別なものは、何もない。


 ただの帰宅ラッシュだった。


 時間を確認する。


 十八時半を過ぎている。


 以前、香帆が言っていた時間だ。


 数分後。


 人の流れの中に、見覚えのある顔が現れた。


 香帆だった。


 少しだけ早足で歩いている。


 その様子に、違和感はない。


 問題は――その先だった。


 いた。


 優斗。


 改札の横。


 柱の近く。


 自然に立てる場所だった。


 けれど、動いていない。


 さっきから、ずっと同じ位置にいる。


 人の流れが変わっても、立ち位置が変わらない。


 目線だけが動く。


 改札の奥。


 出てくる人間を、一人ずつ見ている。


 探しているわけじゃない。


 焦りもない。


 ただ、来るまで待っている。


 そんな立ち方だった。


 ――最初から、いた。


 拓海の中で、何かがはまった。


 電話のときも、そうだった。


 この男は、最初からここにいる。


 そして――香帆が来るのを、知っている。


 ――


 香帆が改札を抜ける。


 優斗の視線が止まる。


 その瞬間だけ、空気が変わったように見えた。


 優斗は歩き出さない。


 香帆の方が近づいてくる。


 タイミングを計っている。


 そう見えた。


 やがて、香帆が気づく。


 少し驚いた顔になる。


 何か言っている。


 優斗が笑う。


 自然なやり取りだった。


 周りから見れば、普通の恋人同士にしか見えない。


 でも。


 そこに至るまでの過程が、普通じゃない。


 拓海は、無意識に拳を握っていた。


 ――


 そのときだった。


 一瞬だけ、優斗の視線が動いた。


 こちらを向く。


 目が合った。


 その目に、驚きはなかった。


 動揺も。


 警戒も。


 ただ、確認した。


 それだけで、また香帆へ視線を戻した。


 拓海は、息を止めたまま動けなかった。


 もう疑いじゃない。


 あれは――監視している。


 その確信だけが、静かに沈んでいった。


 直接、確かめなければならない。


 逃げずに。


 逸らさずに。


 でも、今じゃない。


 まだ、足りない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ