表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(書籍準拠版)  作者: 藤孝剛志
7章 ACT2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

170/172

第21話 花川大門、大勝利でござるよ!

 テントの外に出た花川と夜霧は対峙していた。

 知千佳と、槐は少し離れた所でその様子を見ている。

 戦うことになったのだ。

 だが、とりあえず戦って先ほどの説明のように引き分けになったところで、たいした意味はないだろう。

 よくて死ぬのが少し延びるだけ。下手をすれば、引き分けなどという曖昧な決着はマルナリルナが許さないかもしれない。

 なので、花川には作戦があった。

 確実なものではない。成功するためにはいくつかの賭けに勝つ必要があるが、それでも何もしないよりはましだと花川は覚悟を決めていた。


「戦うってどうするの?」


 夜霧が不思議そうに訊いてきた。

 それはそうだろう。夜霧が死ぬような攻撃を繰り出そうとすれば、花川が先に死んでしまう。

 夜霧が相手では、およそ戦いというものが成立しないのだ。


「実はですね。拙者も神の使徒として能力を与えられたのでござるが」

「能力か。みんなあれこれやってきてたな」

「自分で高遠殿に勝てそうな能力を考えろと言われましてですね、選んだのは召喚能力なのでござる」

「なるほど。召喚した何かが死んでも大丈夫ってことか」

「で、ござるね」


 単純に考えれば、高遠夜霧に勝てる者を召喚すればいい。

 花川が得た能力はなんでも召喚。

 どんな者でも召喚できる能力だが、無条件に呼び出せるわけではなく、相手が呼びかけに応じてくれた場合のみ召喚できるという条件があった。

 つまり、なんでも召喚できる可能性だけは一応あるというだけで、実際にはなんでも召喚できるわけではない。

 なので、花川の最初の賭けは、呼んだ相手が来てくれるかだった。


「では……いでよ、マルナリルナ! 花川大門の召喚に応じるでござる!」


 花川はここぞとばかりに大声で叫んだ。

 しばらく待ってみてもなんの変化もなかった。


「……来ないね」


 夜霧は、痛々しい者を見るような眼差しになっていた。


「ぐはっ! いきなり失敗でござるか! えーとマルナリルナ様! あなたが与えた能力でござるよ!? それで出てこないって、けっきょくはあなたの沽券に関わるのではないでござるか!」

『えーっ! それはずるくない?』

『でも、なんでも召喚だしなぁー』


 そんな声がどこからともなく聞こえてきた。

 そして、地面が強烈に輝きだす。

 広範囲に渡り樹木が消失し、巨大な魔法陣が出現した。

 どこからともなく花吹雪が巻き起こり、キラキラと輝く星のようなものがあたりに漂いはじめる。

 光が魔法陣の中心へと集っていき、荘厳な調べとともに二人の少女が現れた。

 花川は一つ目の賭けに勝った。マルナリルナ神の召喚に成功したのだ。


「しかし、なんなのでござるかね。拙者の召喚との違いは。拙者は魔法陣からただ出てくるだけだったのでござるが!」

「花川のレアリティがコモンなら」

「私たちはウルトラゴッドレアみたいな?」

「同じなわけないでしょ」


 少女たちは花川のそばへやってきた。


「とりあえず召喚には応えたけど」

「私たちはタカトーヨギリとは戦わないって言ったよね?」

「いや、しかしですね! マルナリルナ様が直接手を下すのはプライドが許さないということだとは思うのでござるが、拙者が与えられた能力で呼んだわけですから、もうマルナリルナ様が倒しちゃっても問題ないんじゃないですかね!」

「あーなるほど」

「大義名分を与えてくれたってことかー」

「そ、そうでござる! それに拙者の能力の使い方も頓知が利いてる感じがしないでござるか!? なんでも召喚できる能力で何を呼ぶんだろう? と思ったら神が出てくるわけですよ! これでしたらマルナリルナ様が高遠夜霧を倒してしまっても、それなりに話のオチが付くと思うのでござるが!」

「そうだねー」

「これまでは結構楽しかったけど」

「でも、いい加減飽きてもきたし」

「この遊びも終わりにしようか」


 そして二つ目の賭け。

 マルナリルナをその気にさせることにも成功した。


「じゃあ、タカトーヨギリとは初対面だし」

「うん」

「マルナです!」

「リルナです!」

「二人合わせて! マルナリルナです! いぇい!」


 二人が手を叩き合わせ、夜霧に向けてポーズを決めた。


「花川。これが、あれ? 神様って奴?」

「で、ござる。さぁっ! あとはサクっと()っちゃってでござる! こいつらを倒せば、鬱陶しい使徒が次々にやってくるのは終わるのでござるよ!」


 三つ目はたいした賭けではない。

 どっちが勝っても花川は無事でいられるはずだからだ。

 マルナリルナが勝てばそのまま従っていればいいし、夜霧が勝ったのなら逆らわずにおとなしくしていればいい。

 なので、夜霧が勝つほうに賭けるのは、その後の心証を良くするためだった。

 夜霧が勝つことを信じていたので、マルナリルナをあえて呼んだということにしておきたい。

 それだけのことだった。


「じゃ、どうしようか」

「そうだね。じゃあ私らも即死能力見せたげる」

「即死合戦だね!」

「じゃあデモンストレーション!」

「花川殺っとこう!」

「なんで拙者に矛先が向くのでござるか!」

「だって、タカトーヨギリ派なんでしょ」

「さっき、生意気だったし」


 夜霧に味方するようなことを言ったのは間違いだったかもしれなかった。


「あ、あれはその! そう! 高遠殿がやる気を出すように鼓舞してさっさと決着をつけさせようってだけのことでござるよ! それにこんなことを言うのもなんですが、拙者なんかが死んだところで、高遠殿はなんとも思わないから殺すだけ無駄なのでござる!」


 言い訳にもなっていない言い訳を花川はまくし立てた。


「確かに」

「花川が死んでも誰も困らなさそう」

「それはそれで釈然としませんな!」

「じゃあ、そっちの女の子を殺そう」

「トモチカちゃんだね!」

「え?」


 いきなり呼びかけられて、知千佳がとまどう。


「じゃあ死んでね」

「お前が死ね」


 神の言葉と、夜霧の言葉が交錯する。

 その言葉がもたらす結果は、実にわかりやすいものだった。

 倒れたのは一人の少女。

 それがマルナなのか、リルナなのか。花川には判別がつかなかった。


  *****


「え?」


 マルナは、倒れたリルナを見下ろしていた。

 意味が、よくわからなかった。

 壇ノ浦知千佳を殺すなど実に容易いことだった。

 人間を殺すのに超威力の攻撃など必要はない。神であれば、人間の生死など簡単に切り替えることができる。

 ただ、生の側に向いている針を、死へと倒すだけ。

 神であればそれができる。

 人間と神との格の違いは絶対的であり、どう足掻こうとそれを覆すことなどできはしない。

 神と人間との戦いなどそもそも成立しないのだ。

 なので、神が人間と戦ったところで何も面白くはない。倒そうと思えば、それだけで相手が倒れる。実につまらない結果になるだけだ。

 だから。

 知千佳が呆気に取られたような顔で立っていて、リルナが倒れているというのがよくわからなかった。

 リルナが知千佳を殺そうとしたのは間違いない。

 マルナとリルナは別個体ではあるが、お互いが何を考えて、何をするのかは手に取るようにわかっているのだ。

 そして今。

 リルナが何を考えているのかが、マルナにはわからなかった。

 ただ単純に、リルナが思考していないのだとマルナが気付くのには少しばかり時間を要した。

 リルナが倒れているのはどうでもいいことだった。

 しょせんは仮初めの器であり、その身体がどんな体勢であろうと、そんなものは神威になんの影響も与えはしない。

 そんなことよりも、なぜリルナがいきなり何も考えなくなったのか。

 意味がわからず、考え込む。

 そして、思考をしていないのはリルナがその機能を停止したからなのだと気付いた。

 普通ならこの時点で高遠夜霧との関連を怪しむのかもしれないが、マルナは露ほども疑わなかった。

 神が人間からなんらかの影響を受けるという発想は、神にとっては想像の埒外だからだ。

 理由はわからないが、停止したなら再起動すればいい。

 そう考えたマルナだが、リルナが再起動することはなかった。


「人を殺そうとしといて、自分らがやられるのはそんなにショックなのか?」


 どれほどの時間、固まっていたのか。

 俯いていたマルナは、ゆっくりと顔を起こした。

 その言葉で、夜霧の即死能力のことを思い出すが、それでも信じ切ることはできなかった。

 何が起こったのかがわからない。

 何の前触れもなく、リルナが倒れている。

 何も起こっていないはずなのに、リルナが停止している。

 夜霧は何もしていない。

 客観的にはただ、お前が死ね、と言葉を発しただけだ。

 その身体からはなんの力も発せられてはいないし、リルナの身体に何かが作用した形跡もない。

 なのに、リルナは動かなくなっている。

 マルナは、そこに夜霧との因果関係を見出せなかった。

 神の目で見ても、何もわからないのだ。

 夜霧が死ねといい、次の瞬間にリルナが動かなくなった。それだけのことであり、その二つの事実の間にまるで関連がない。

 なので、夜霧が即死の力を持っていると、理解することができない。

 ありえない。

 わからない。

 けれど、リルナは止まっている。

 思考は同じ所をぐるぐると巡り、摩滅していく。その過程で、じわりと形容しがたい感覚が芽生えはじめた。

 マルナとリルナの性能は同一だ。マルナにできることは、リルナにもできる。マルナが好きなものは、リルナも好きだし、嫌いなものも同じ。

 若干、思考形態に違いがありはするものの、それも、どちらがどちらとわかるようなものではなく、くるくると入れ替わるような、二人で一人。

 二人合わせてマルナリルナ。

 リルナは動かない。

 ならば、もうマルナリルナではない。

 そのことに思い至り、心が灰色で埋め尽くされる。

 強烈な喪失感に、思考が明滅する。絶望で、前が見えなくなる。


「あ……」


 そしてようやく、マルナは自分も停止するのではないかと気付いた。

 仮初めの身体が、心に反応する。

 吐き気がする。眩暈がする。耳鳴りがし、手足が震える。

 人の見た目を再現しているだけの身体が、呼吸困難に陥り、心臓が早鐘を打つ。

 マルナは、それが恐怖だということを理解してはいなかった。

 神として誕生し、存在し続けてきたその生は恐怖とは無縁だった。人が恐怖する様を見てわかったような気にはなっていても、自分自身のものとして恐怖を感じたことなどなかったのだ。


「う……うわあああああああああああ!」


 マルナは逃げ出した。

 自分のことが、よくわからなくなっていた。


  *****


「ふ、ふははははははっ! 花川大門、大勝利でござるよ!」

「なんで花川くんが勝ったみたいになってんの?」


 小躍りする花川を見て、知千佳は呆れていた。


「いやぁ! これまで散々拙者をいいように扱ってきた神がこの始末ですよ? これを喜ばずしてどうするでござるか!」

「でも、一人逃げちゃったよ?」


 どちらがマルナでどちらがリルナなのかはわからないが、生き残ったほうは突然消え去った。

 召喚時には派手な登場だったが、あれは単なる演出だったらしい。その気になればなんの前触れもなくいきなり転移できるようだった。


「はっ! それはやばいのでは! 後から復讐にやってくるのではないですかね!?」

「来たらまた倒すだけだ」


 夜霧は専守防衛を気取るつもりもない。必要であれば、予防的に殺しもする。

 今回の場合であれば、二人組の一人を倒しただけであれば、引き続き使徒が送り込まれてくる可能性があった。

 あれはあまりにも鬱陶しいので、殺す理由にはなるだろう。

 だが、さすがに恐怖に震えて固まっている相手まで殺す気にはなれなかったのだ。


「あれほどあからさまに恐怖しておったのだから、しばらくは何もしてこんのではないか?」

「また使徒が来たら攻撃と見做して対処するよ」


 夜霧は、マルナリルナを見た。その存在を認識した。

 ならば殺そうと思えばいつでも殺せる。

 これ以上余計な手出しをしてこないなら、それでいいだろうと考えた。


「じゃあ、エルフの村に行くことにするか。もう少しだろ?」

「後、一キロというところだろうか」

「うーん、あれ、エルフの村かなぁ? あいつら石造りの建物に住んでる気がしないんだけど?」

「拙者もついていかせてもらっていいですかね?」

「そうだな。置いていくわけにも……置いてってもいいのか?」

「よくないのでござる! 置いていかれたら死んでしまうでござる!」


 さすがに脱出方法もわからない森に置いていくのも寝覚めが悪い。

 夜霧は、しばらくは花川を連れていくことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ