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【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第六章 カリューネ教との決着

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195/195

195.動き出す地方

 あれから、三か月が経った。町が襲われたなんて嘘のように、平穏な日々が続いていた。


 あの後、町を救ったとして、ヴィアリスから褒章メダルを四十枚もらい、合計で百七十四枚になった。着実に貯まっているようで嬉しい。


 そんな平和な日常だけど、裏では打倒カリューネ教を掲げて動いていた。……きっかけは、レイナの供述だった。


 追い詰められてからは意外なほどあっさりと口を割った。自分が信じていた教団が、どんなことを企んでいるのかを。


 カリューネ教。この国の国教として、短い期間だが人々の上に君臨してきた宗教。人々は祈り、寄進をし、教団はそれを受け取る。


 それだけなら、どこにでもある宗教だった。だけど、その裏側はまるで違っていた。奴らは魔物を操り、この国を内側から壊そうとしていた。


 町を襲わせ、混乱を起こし、人々に恐怖を植え付ける。そして、その恐怖を利用して信仰を集め、権力を握る。


 最終的には、この国そのものを支配するつもりだった。……正直、最初に聞いたときは耳を疑った。そんな馬鹿げた話があるのか、と。


 だけど、レイナの供述は妙に具体的だったし、実際に魔物を操っていた証拠もある。


 もしそれが事実ならこの国は、もうかなり危ないところまで来ている。その話を聞いたヴィアリスは、すぐに動いた。


 迷いなんて一切なかった。すぐに中央地方にいる公爵へ、今回の事件の詳細を報告したのだ。……そして、その返答は驚くべきものだった。


 中央にいる公爵も、すでにカリューネ教に疑いを向けていたらしい。どうやら、怪しい動きはいくつもあったようだ。


 表向きは慈善と祈りを掲げながら、裏では不可解な資金の流れ。そして、なぜか魔物被害が妙に教団の影響圏で多発していた。


 偶然にしては出来すぎている。だからこそ公爵は、すでに考えていた。カリューネ教を、国教から引きずり下ろすことを。


 そして、中央地方に集まっていた各地方の公爵家が、密かに会議を開いた。


 表向きは貴族の会合。実際は、反カリューネ教の作戦会議。結論は、わりと早かった。


 地方から兵を出し、カリューネ教を打倒する。――決起だ。


 ただし、問題があった。中央地方は、カリューネ教の本拠地。そして同時に、国の中心でもある。


 王城があり、王国騎士団があり、そして何より騎士団長がいる。バルガ。


 国最強とも言われる騎士。そして、カリューネ教と深く結びついている男。もし不用意に兵を動かせばどうなるか。


 カリューネ教と王国騎士団、その両方を敵に回す可能性がある。そうなれば、地方の軍勢など簡単に潰されてしまうだろう。


 最悪の場合。カリューネ教と騎士団に挟み撃ちにされて、全滅。……笑えない。


 だからこそ、慎重になった。兵は集める。情報も集める。動くタイミングは、徹底的に見極める。中央へ攻め込む、その瞬間を。


 そして、とうとうその機会が訪れた。ある日、ひとつの情報がもたらされた。騎士団長バルガが、王宮を離れた。


 理由は不明。だが、領地へ戻ったという。王都から、最強の剣が消えた。


 ……つまり。これは、チャンスだ。中央に残る戦力を、各個撃破する絶好の機会。


 ずっと待っていた。ずっと準備してきた。そして、ついに――動き出す時が来た。


 カリューネ教を、この国から叩き出すための戦いが。


 ◇


「うわー! もう無理だよ、クロネ! 動けないー!」


 獣化したランカが地面の上に倒れ込んだ。胸を上下させて荒く呼吸をしている。


「……あたしは、まだ、やれる」


 すると、それに対峙していたクロネが眼光を光らせた。だけど、その体は荒い呼吸で激しく上下している。


 中央地方に攻め入ることが決まると、クロネは毎日激しい修行をした。私とランカの力を借りて、毎日倒れるまで続けていた。


 それもそうだ。これから、仇があるバルガがいる中央地方に乗り込んでいくのだから。やる気があるのは分かる。


 だけど、それ以上にクロネの体が心配だ。


「クロネ、無理するのは良くないよ? 修行って万全な時にするから身につくものだよ。フラフラのままやっても、力が身につかないよ?」

「いや……絞り出してこそ、真の力が発揮出来る。だから、本番はこれから……」

「本番はこれからって……ランカ、動けないよ?」

「だったら、ユナが相手して」


 尚も戦おうとするクロネ。だけど、一歩踏み出すと膝から力が抜けて、地面に倒れ込んでしまった。


「ほら、もう無理だよ!」

「まだ……まだなんだ」

「クロネ―……もう休もう? クロネよりも体力があるランカが動けなくなっちゃったんだよ?」

「いや、まだ……」


 ランカと一緒にクロネを休ませようとするが、クロネはまだ動こうとしている。地面に手を付いて体を盛り上げるが、手が震えていて上手く力が入っていない。


「ユナの回復の力で……あたしの体力を回復させて。そしたら、まだ戦える」

「そんなことをしたら、クロネの体が壊れちゃうよ。だから、ダメ」

「そうだよ。それに心も疲れちゃう。クロネが病んじゃったら嫌だよ」


 二人でクロネを説得する。本当に無理はしてほしくない。そんな気持ちで言葉をかけたのだが――。


「いや、あたしはやらないと。バルガに勝たなきゃいけないんだ」


 悔しそうに顔を歪めて、手を握りしめた。あの冷静なクロネが仇を前にして冷静さを失っている。これは異常事態だ。


 どうにかして、心を静めなきゃいけない。でも、どうやって?


 すると、ランカが起き上がりクロネを抱きかかえた。


「な、何をする!?」

「だーめ! これ以上動いたら、クロネが壊れちゃう。だから、今日はこれでおしまい」

「やめっ……あたしはまだ!」

「ほら、ユナも行こう? こんな我がままなクロネはお風呂に沈めちゃえ」

「なっ!」


 ランカが悪戯っぽく笑うと、クロネが尻尾を逆立てた。その言葉を聞いて私はニヤリと笑った。


「それは、いい案だね。じゃあ、体の動かないクロネを綺麗にしてあげよう」

「いや、あたしはそんなことは望んでない! まだ、戦いを――」

「はいはい。動けないクロネはランカたちの思いのまま。お風呂に入って、ゆっくり体を癒そうね」

「ゆっくり入って、疲れを癒そうね」

「は、離せ! あたしはお風呂には入らない!」


 じたばたもがくが、力の入らないクロネは猫も同然。私たちはクロネを連れて、お風呂場へと向かっていった。

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