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 「…あの、少々宜しいですか?」


突然話しかけた私に、女衒は嫌そうな顔をする。

高那さんと、侍女は驚いて私を見つめた。

それはそうだろう。

三人それぞれの反応は至極真っ当なものだ。


「…なんだね、そちらさんは?」


女衒は怪訝そうに尋ねてくる。

関係ない人間にしゃしゃり出て来られて、さも迷惑そうだ。

女衒のその対応は十分理解できる。

だから、私は努めて冷静に尋ねた。


「…私は彼女の友人です。それで、一体いくらで彼女は売られるのです?」


嘘ですが。私と高那さんは友人でもなければ知人ですらないのだけども。

まぁ、ここは嘘も方便としておこう。

高那さんは突然現れた見知らぬ友人を驚いたまま、穴が開く程に見つめた。


なんか、ちょっと…いたたまれない。


「はぁ?何故そんなことを?…お宅が買うつもりでもあるのかい?」


女衒は小馬鹿にしたような嘲笑と共に言った。

私は女衒を睨み、一歩前へと歩を進めた。


その時だった。

騒ぎを見ていた観衆を押し退けて、青年が声を上げた。


「おい!何してる!」


出てきたのは、先程から名前だけが出てきている、件の燈哉・アスベスト、その人だった。


燈哉さんは紺色の団服を着ていて、形だけなのか、本当に使うのか知らないが、腰には剣を下げている。

卒業して以来、殆ど見ることができなかった彼だが、噂では騎士団本部の一員になったらしい。


きりっとした目元が印象的で、なんていうか…もう…もう…!


カッコいいぃぃぃ!


ああもう、出方もカッコいい!

ドラマのヒロインかと見間違うような美少女のピンチに颯爽と駆けつけてくるイケメン!


あぁー、これは私、わざわざ出て来たりしないで、傍観を貫けば良かった!

もっと冷静に、横から見たかったぁ!


燈哉さんは一瞬、こちらに視線を向けたものの、直ぐに妹である高那さんのもとに駆け寄る。

女衒の手を高那さんから引き離すと、じろりと彼を睨んだ。


「…おい、人の妹に何してる?殺すぞ」


し、痺れるぅぅぅ!

カッコいいぃぃぃ!


思わずニヤけそうになる顔を必死に押し留め、私は冷静に見えるように顔を引き締める。


あっ、こっち見た!きゃあ!目、合ったぁ!


正直、アイドルを見るファンの心持ちなのだけれど、私は冷静に口を開いた。


「…すみません。私は彼女と同じ学校に通っています。困っているようだったので声をかけたんですが」


嘘は言っていない。

高那さんは私を知らないだろうから、先程の友人発言も含めて、怪しい奴だと思っているだろうけど。


私の発言を確かめるように、燈哉さんは高那さんを見る。

有難いことに、高那さんは頷いてくれた。

もしかしたら、学校でナイトだなんだと騒がれている効果で、顔くらいは知っていて貰っているのかもしれない。


燈哉さんは高那さんが頷いたことに安堵したようで、小さなため息をついた。

紛らわしい人間がいて、すいません。


「…いや、殺すなんて物騒な…。大体ね、こっちはお宅の叔母さんから、お嬢さんを売りに出すって話で契約してるんだよ。文句があるなら、借金返しておくれよ」


女衒は燈哉さんに凄まれて暫し呆けたものの、気を取り直して一息に言う。


「叔母に妹を売りに出す権限はない!……こともない…」


え、どっち?


燈哉さんは、最初力強く言ったけれど、その後は何かに気づいた様子で、頭を抱えてしまった。


「…あの、少々宜しいですか?」


私は空気を読まず、再度女衒に問いかけた。女衒はそれはもう嫌そうに顔を歪めた。


「ええ?お宅、まだいたの?関係ない人間は黙ってておくれよ」


そう言いたい気持ちはわかる。

けれど、私はただの野次馬根性で声をかけたのでもなければ、ヒーローぶって彼女を助けようとしたわけでもない。


私が声をかけたのは、打算と勝算があるからだ。


「私の質問にまだ答えて貰っていないのですが?彼女はいくらで?」


詳しくはないけれど、大体こういうものの相場は100~500ベルンと聞いたことがある。

高那さんについた金額がいくらか、まずはそこを知らないと話が進まない。


女衒は面倒臭そうに頭をかきつつも、答えてくれた。


「ええ…もう…大体300ベルンくらいかね?」


買える。

私の貯金で出せる金額だ。


「…成る程。…わかりました。では、私がその額、出しましょう。…但し」


私はそこで一旦言葉を切る。

それから、女衒、高那さん、燈哉さんと視線を巡らせ、燈哉さんに指を突きつけた。


「私が買うのは彼女ではなく、貴方です」


思いのほか通った声に、当事者だけでなく、周囲も息をのむ音が聞こえた。


そして、突然名指しされた燈哉さんは数秒後、呆けたような声を上げた。


「………は?俺…!?」


ああ、やっぱり声もぃぃぃ!


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


本作はすでに**【全話執筆完結済み】**です! 明日からも気ままに更新していきますので、安心してお付き合いください。 もし少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 画面下にある**【★】(星)**や**【作品フォロー】**を押して応援していただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!

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