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 目が覚めた時、そこは自分の部屋だった。

離れにいたはずなのに、目覚めたら自分の部屋。

でも部屋の中は私以外、誰もいなかった。


結局、また話せなかった。

ちゃんと、昇進の話を聞いて、お祝いしたかったのに。

その翌日も、やっぱり燈哉さんとはちゃんと話ができなかった。

すぐ近くに住んでいるのに、こんなにも会わないなんて、想像もしていなかった。






我が家に珍客が現れたのは、それから2日後だった。

学校から帰った私を待っていたのは、想像もしていない人物、怜史さんだった。

長い足を組んで、母と優雅に談笑している。


いや、マジで意味不明…。

なにこの貴族のお茶会モードは。

うちは平民なんだけどな!?

呆気に取られていると、怜史さんはひらひらと手を振ってきた。

我が物顔でリビングを占拠する姿に、ドン引きを通り越していっそ恐怖を感じるレベルだ。


「……何故?」


『こんにちは』も『お久しぶりです』も頭から吹き飛び、私の口から出たのは直球の疑問だった。


「アハハ。だよねー。わかる」


相変わらずのチャランポランな態度で、怜史さんは机に頬杖をつく。

よく人の家でこんなに堂々とできるな、と思わず感心してしまう。

そして母は、別にそれを注意するのでも、気を悪くするのでもなく、にこやかに私を見た。

その笑顔に、何か怪しい気配を感じる。


「日乃ちゃん、最近、燈哉くんと会えてないんでしょ?」


「え…うん…」


「そうよね!ほらぁ、きっと喜ぶわよぉ」


キャッキャと怜史さんに向かって母は笑う。

怜史さんもそれに、にこやかに頷いている。


怖い怖い怖い!

なにその連携感!

絶対にろくでもない話だと思う。


「日乃ちゃん、まぁそう警戒しないで。…燈哉、昇進したの知ってる?」


やっぱり昇進したんだ。

薄々感じていたけれど、怜史さんにはっきり言われて、なんだか惨めな気分になった。

皆知っていて、直接言われた人ばっかりなんだろうに。

立場だけでも婚約者の私だけが、本人の口からじゃなく、他人から聞く。

しょんぼりしながらも、私は頷いた。


「なんで悲しそうなの?……まさか燈哉、まだ言ってないの?」


「その…色々タイミングが合わなくて…」


「え?そんなの一分あれば報告できるよね?」


鬼畜…!

その通りだけど、そんな事言わなくても…。

切れ味の鋭過ぎるナイフに傷つきつつも、私は怜史さんを睨んだ。


「なんなんですか?さっきから。人の事を笑いに来たんですか?騎士団ってそんなに暇なんですか?」


ジロリと怜史さんを睨むと、怜史さんはアハハと笑う。

やっぱり笑いに来たのかな、この人は。


「ごめんごめん。面白くてつい」


私は全く面白くないけど。

ムッとしたままでいると、目の前に一通の封筒が差出された。


「……なんですか?」


「招待状だよ、プリンセス」


そのキザったらしい仕草が似合うのが、また腹立たしい。

ひったくるように封筒を取って、表と裏を見る。

表には『invitation』の金箔が押されていて、裏には何も書いていない。

その代わり、綺麗な赤の封蠟がしてあった。


「…………非常に、大変、めちゃくちゃ開けたくないのですが…?」


「うんうん、分かる。その直感、絶対合ってるよ」


否定してほしいのに…。

怜史さんは私から封筒を奪い取ると、簡単に封を開けて、中身を取り出した。

それを目の前に突きつける。


「おめでとう。騎士団、引いては王宮主催の昇進祝賀パーティーへの招待状だよ」


騎士団…。王宮…。

いや、規模。

デカすぎじゃん…。

くらり、と目眩がしそうだ。


「きゃー!素敵!いいわねぇ、日乃ちゃん!楽しみねぇぇ!」


全然楽しみじゃない。

寧ろ行きたくない。なんでそんな嬉々として居られるのかわからない。

私達家族は平民だよ?

貴族じゃないのに…。

なんでそんな所に呼ばれなきゃいけないんだ…。


「なんで…どうして私の所に来たんですか…?」


「アハハー。同じ同僚の好意じゃん。燈哉、これ出るんだよ?新進気鋭の、最速で副団長まで上り詰めた男だよ?貴族のお嬢様方がわらわら群がってきちゃうよ?」


怜史さんはそこで私を見てにっこりと笑った。


「牽制、したいでしょ?」


あ、あああー…。悪魔だ。

この見た目だけは優しそうな悪魔は、私に意地悪く微笑んでいた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


本作はすでに**【全話執筆完結済み】**です! 明日からも気ままに更新していきますので、安心してお付き合いください。 もし少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 画面下にある**【★】(星)**や**【作品フォロー】**を押して応援していただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!

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