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 母の監禁宣言は冗談ではなかった。

当然、車も運転手も、私の言うことは聞かない。

ならばと、歩いて行こうにも、外にはホワイト商会お抱えの警備員が居て出れない。


それなら魔法で、と思った私を既に見透かしていたのか、母はまた私に、魔力封じの腕輪をつけた。


え、マジで、また…?

カチン、と嵌った腕輪を呆然として見つめると、母はニッコリと笑った。


「母様だって、つけたいわけじゃないのよぉ?でも、日乃ちゃん、魔法があるとまた無理するでしょぉ?また怪我したら困るじゃなぁい」


「……おかしくない?」


「どうしてぇ?心配してるのよぉ?…あ、これはちゃんと正規ルートの腕輪だから、心配要らないわよぉ」


にこにこと笑う母が、こんなに恐ろしいと思ったことはない。

そこには、純粋な愛しかない。

でもそれが、こんなに暴力的になることを、私は知らなかった。


「こんなの、おかしい…」


まるで、飼い犬だ。

可愛くて、愛しくて、安全の為に首輪で繋ぐ。

でもそれは、私の望みじゃない。


「私、学校行きたいんだけど…」


「ダメよぉ。だって、また誘拐されたら困るもの」


「もうされないよ」


あのクズは捕まった。

母の懸念は晴れる筈なのに。


「……そんなの、わからないじゃない」


ぽつりと、母は呟くように言う。

それから、せきを切ったようにまくしたてた。


「どうして、言う事を聞かないの!?あなたのためを思って言ってるのよ!?あなたがいなくなった時、私達がどんなに心配したかわからないの!?もうあんな思いは沢山よ!お願いだから!家にいてちょうだい!」


発狂するように母は髪を振り乱す。

いつものほほんと笑っている母が見せた初めての顔に、私は何も言えなかった。

衝撃に、思わず一歩後ずさる。


「ここにいればいいの。ここは安全だから。母様と父様が、あなたを絶対に守ってあげるから」


縋るように伸びてきた手が、腕に触れる。

今までは暖かくて優しかったその手が、急に穢らわしいものに見えて、私はその手を振り払った。


「………日乃ちゃん…」


悲しそうに母は名前を呼ぶ。

これ以上一緒に居たくなくて、私は母に背を向けて、二階に駆け戻った。





夕方になって、父が帰ってきた。

母の暴走を止めてくれる。そう思っていたのに。

父はさも当然のように頷いた。


「そうだよ。退学の手続きはこっちでするから。日乃は何も考えず、ゆっくり休みなさい」


ポン、と肩を叩かれて、目を見開く。

父と母は、別人にでもなったのかと思う。

でもそこには、私を心配する優しい両親がいるだけだ。


その優しさ故の暴走に、私の意思は必要ない。そう理解した時、私は恐怖で、声も出なかった。

両親はその態度が、納得したように見えたらしい。

優しく、夕飯に誘ってきたけれど、私は首を横に振った。


何も言わず、二階へと引き返す私を、両親は心配そうに、でも呆れた様子で、見送った。


その晩、ベットに横になり、一人考える。

私の望む未来。それはこれじゃない。

それを、どうしたら両親に分かってもらえるのか、どう話したらいいのか、考えても考えても、妙案は浮かばなかった。







その日から3日。

私はなんとか両親を説得しようと思ったけれど、両親の意見は変わらなかった。


因みにその間、燈哉さんと、高那さんと、珍しく1日だけだけど、彩希も来てくれて、一緒に説得しようとしてくれたけれど、両親の『家族の事だから』という一言に、引き下げざるを得なかった。


まさかの実家で監禁された私は、4日目の夜、窓枠に足をかけていた。


飛び降りも二度目ともなれば、肝が座る。

私の部屋は二階だし、窓の近くには大きな木もある。

多分、そこに向かって飛べば、大怪我はしない筈。


二度目だし、前回より低い位置だからか、恐怖で身体が動かないなんてことはなかった。

飛ぼう。そう思った瞬間に、手足は窓枠から離れたし、意識も失わず、多少のすり傷はできたものの、大怪我もせず、私は木の枝に着地した。


まぁ着地というよりは、引っかかった、という方が正しいかもしれないけれど。


ズリズリと、格好悪く枝を青虫のように移動して、そこから塀に飛び移る。

そこからジャンプして、私は漸く、家を抜け出した。


目指す場所はわからない。

それでも私は私の自由の為に、真っ暗な中を走り出した。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


本作はすでに**【全話執筆完結済み】**です! 明日からも気ままに更新していきますので、安心してお付き合いください。 もし少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 画面下にある**【★】(星)**や**【作品フォロー】**を押して応援していただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!

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