42話 夏の混乱 日向と冥の夜
42話
「私は実家の集会出席しましたが、今日は若が人目のつかない場所に幼馴染みの美冬さんと行くと聞いていたので、美冬さんが力尽くで若に不埒な行いをする可能性があるので、早く集会を抜けこちらに向かっていました」
「ちょっと待てよ! その言い方じゃあ俺はか弱い女子で美冬が思春期真っ盛りのアホな男子みたいで逆じゃねえか」
そうだな、完全な言い掛かりだ、逆に忍者だから安心だろうに。
「イ、イヤー、そうだよ僕がそんなことしないよ」
あれ、美冬先輩動揺している? えっまさか先輩……。
「ええ、私も美冬さんはそんな女性ではないと思っています。
しかし若の魅力に当てられてつい自身の衝動に負ける、わたくしはその事が心配でした。
そして、わたくしの代わりの護衛が何者かに襲われ、連絡がとれなくなり、焦ったわたくしは急いで現場に急行しましたそして私は……」
冥はじっとり先輩を見つめた後に天馬さんに視線を戻し話を続けた。
こうして冥のここに来るまでの説明は終わり、俺と出会ってからの説明が始まった。
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俺は部活を終えた葵と墓地で合流し、美冬先輩たちが来るのを待っていた。時間は七時を過ぎいつ来てもおかしくはない。
「ねえ、ヒナタ。僕もこれ来ないといけないの?」
葵は俺がわざわざ葵用に余分に持ってきた服を持って嫌そうな顔をしている。いつ来るか分からないのに早くしないと……。
「当たり前だろ、やっぱり雰囲気は大切だろ、それに俺は結構この格好気に入っているんだけど」
「そうだね、ヒナタは結構気合い入った格好しているね」
俺は頭に矢が刺さって死んだ幽霊の役だ。刺さっている矢はよく見ると接着剤でつけられているのが分かる。
「とにかく、早く着替えてくれよ、そろそろ来るはずだから。
あっ、そのドーランで顔を真っ白に塗ってくれよ、白装束だけじゃ地味だから」
「はあ、これを、塗るのか、僕が……」
葵は渋々ながら着替えて白塗りまでしてくれた。
それから数分後。強い風が吹いた、木が揺れ軋む音がする。
「葵、誰か来るぞ。多分タカトだ」
この感じは誰かがすごい速さで木を跳び移り移動している時におこることだ。
そして、そんなことが出来るのは俺の知る限り忍者だけだ。
「えっ」
そして、葵が驚いたのは俺の言葉か、それとも奴が訪れたことだろうか。奴は俺が言葉を言い切った直後に現れた。
「すみませーん、貴女方に質問がっ、ゆ、幽、……。いえ、貴女方が何者かは関係有りません。貴女たちはスーツを着た三人組を見ていませんか」
現れた奴はメイド服を着ていて長身、雰囲気は若くて軽そうだが恐らく三十代前半のくらいだろう、もしかしたら美冬先輩の知り合いかもな。
一度俺たちの姿に驚いた後、彼女はすっと目を細目、何事も無かったように話しかけてきた。
「いえ、知りません」
「僕もここに来るまでに見た覚えは有りません」
「そうですか、でも、彼らの最後の通信の言葉は幽霊でそして君たちはここにお化けの格好している。
そして君、頭に矢が刺さっている方だよ。その体つきは鍛えている者であり、そして纏っている氣も常人より上。
つまり、君は嘘をついたんだ、理由は君の体に訊くことにするよ」
『『『『『幻舞』』』』』
その女性が何かを呟いた後その女性は自身の肉体から淡く光る分身を五体造りだし俺たちに向かって来た。
「葵! 逃げろ。俺が対応する! 早く!」
俺は葵にそう告げると、走って葵とそいつらの間に出て何とか説得を試みる。
「待って! 俺、は、ヒナタっ、です。あなたは? うおっ危なっ!」
本体は動かず分身は逃げる葵を置いて俺に攻撃を仕掛けて来た。
五対一は初めてなので避けるので精一杯だ。
「わたくしは斑鳩冥と申します。先ずは先ほどの別の質問、若は何処ですか?」
さっきから動くことの無かった本体はそう俺に語りかけてきた。
まだ、話し合いの余地はある。
「若? 誰だ、それはっ、ぐぅっ、目が……」
俺を囲んでいた四体の後ろに隠れていた五体目が死角から砂かけで目潰しをし、俺は目を狙った拳をもろにくらってしまった。
「動きが素直ですね、だから簡単に虚をつかれる。貴女は目が良さそうなので封じさせて頂きました」
「がっは、はあはあ。……俺は知らないって、はあ、知らないって言ってるだろ、クソババア!」
奴等は俺が目を封じられるとこれまで以上に攻撃を仕掛けてきた。
「わたくしteenagerです!!」
重い一撃が胸に入る、俺は立つことが出来なくなり、倒れ込む。くっそ、今までの修業の意味は何だったんだ……。
「しまった、つい手加減をし損ねてしまった。死んでしまったか、まあ、逃げた仲間の方にいけばいいか。その死体は後で回収する誰にも見付からないよう見張っておけ」
そう言うと冥の気配は此処から感じられなくなった。
「待てやー! せいっ! ふう、はっ! 奴が居なくなって動きの精確さが無くなったか、これならいけるぜ!」
俺は持てる力を振り絞り隙をついて二体を撃破、そして流れるように残りの三体も撃破した。連携無しの奴等の動きは元々タカトや師匠に比べれば月とすっぽんだ。
「早く追いかけないと葵は、くっそ、さっきの攻撃で力がもう……」
俺は重い体を引きずって葵が逃げた方に向かった。
しばらくすると二つの気配が俺の方へ向かっているのが分かった。
誰だ? とにかく隠れないと。
しかし俺の体は倒れ、思った通りには動かなかった
「ヒナタ君!! 生きてる? 生きてる! 生きてるぞ! 良かった」
タカトが俺を抱き抱える、タカトの額の傷から血が俺に垂れてくる。霞んだ目で見てみると体には他にも傷がある。
「まさか、あの状態でここまで移動しているとは……。申し訳ありません古河日向さん、わたくしは誤解で貴女たちを攻撃してしまった」
声をする方を向くとそこにはメイド服が破かれ下着が見えてしまっている冥がいた。恥ずかしがることもなく坦々と謝っている。
そして俺はタカトに担がれ葵とケンイチそして夏の砂浜で見たことのある首から下を土で埋めることで拘束されている三人の男がいた。
きっとあいつらが冥の探していたやつなのだろう。
「あのー、一体何が。事情が全く分からないんですけど。
タカトそもそも誰なんだこの人は?」
「ああ、こいつは俺の親戚の所で働いている家政婦だぜ、今回の件はお互いに誘拐犯だと勘違いしてしまったことから始まったんだ」
そう言うとタカトは俺を本殿に連れていき寝かし付けた。
そして、そこにはテル君と朱里さんと葵が待っていた。そして俺たちはタカトと冥から説明を受けた。
タカトは冥の主人の護衛を誘拐犯と勘違いして拘束、冥は俺が仲間を攻撃した敵だと勘違いして攻撃してきたらしい。
その後、タカトは葵からの電話で葵の元に助けに行き、その道中で朱里さんに会ったらしく二人はその後すぐに神社に隠れていたらしい。
そして葵に尋問しようとした冥にタカトとケンイチが駆け付け前から知り合いだったのですぐに誤解が解けたそうだ。
まさか俺は二人の勘違いでこんなにボロボロになったのか……。
そして、俺たちは本殿の中で先輩たちが戻って来るまで休んでいた。




