41話 夏の混乱 鷹人の夜
41話
「ど、どうも? 古河日向です」
「どうして鷹人さんが出てこないのですか? 呼んだら出てくるように頼んでいたはずですが」
メイド服を着ているつり目女ははきつく俺を睨み、問い詰めるような雰囲気で質問してくる。
「あー、待ちきれなくと睡眠中です」
「それで話が聞こえてきたので、俺はさっきタカトが起きていた時に何があったか、聞いているから説明出来ますよ」
「そうですか、それではお願いします」
この女はさっきと違って優しそうな態度だ、さっき俺を殴った奴だとは思えない。
「はい、それじゃあ、まずはタカトの方であったことから……」
*********************************
時は美冬たちが神社に集合し、美冬と天馬が出発した頃の話。
白装束を血のような赤黒く染め、鬼の面を被っているタカトと白装束をただ纏っているケンイチは神社と墓地の間の道が見える神社の近くの高い木の上で美冬たちが来るのを見張っていた。
「はあ、おせえな。そろそろ来るんじゃないのかよ」
「時間的にはそろそろ出発している頃ですかね」
「じゃあもうしばらくかかるのか。…………おい、人の気配がするぞ、それも結構沢山いそうだ。見に行ってくるわ、美冬ちゃんたちが来たら呼んでくれ」
笑いながらそう言うと俺は返事を聞くことなく、墓地へと向かう道とは反対側にいる集団を見に行った。
俺は暗い森の夜道を気にすることなく駆け抜け、そして森に潜んでいる怪しい集団を見つけた。
その集団は木に囲われている場所に不釣り合いのスーツ姿でイヤホンマイクを身に付けた男が三人開けた場所にいた。
「只今、目的地に到着、任務を開始します」
『よし、側には風間流の者がいるので気をつけてくださいね』
「了解しました。任務内容に変更は無い、風間流に気づかれないよう慎重にいくぞ」
「「了解」」
スーツ男のなかで唯一サングラスを身に付けている男は視られていることに気づくことなく連絡を終え、行動を開始した。
なんだありゃ。今ここにいる風間流って俺とケンイチ、美冬ちゃん、それとヒナタ君の四人……。
あいつら一体何者で、何を企んでるんだ?
それに側にいるのはテル君と朱里ちゃん、……いや、今日は美冬ちゃんは天馬と一緒に胆試しをするんだ。
……そうか誘拐だ! それしか考えられない、今日はいつも美冬ちゃんの妨害する鉄壁の恋敵がいない。
だから胆試しに誘えた、でも逆に考えれば頼れる護衛がいないってことか……。冥は弱いがそれでも普通の男には負けない。
俺は直ぐに木を駆け上がり死角を掻い潜り、三人の先回りを始めた。
やるしかない。あーでも、派手にやり過ぎて怒られたら面倒だぜ、……まあいっか、問題は起こってから考えることにするぜ。
「あっ、そうだ、ケンイチを呼んでこよ。あいつがいたらどうにかしてくれるだろ」
俺はそう決めるとケンイチに電話をした。
『どうしたんですか? まだ誰も来てませんよ』
「問題が起こった、誘拐犯を見つけたんだ、お前の所より北北東の方角に今いるから急いで来い」
『わ、分かりました』
そして到着したケンイチに彼らの会話の内容を伝え、直ぐに行動を起こすことを決めた。
「あの、この変装を使いませんか? 仲間に幽霊に襲われたなんて言っても信じてくれずただの事故だと思ってくれるかもしれません」
ケンイチは自分の服装を指差した後に懐からカセットテープを取りだした。
「ヘヘッ、よっしゃ、それでいくぞ。俺はあいつらの前にお前は後ろからいくぞ、始めにお前の術で混乱させて俺が決める、いいな?」
ケンイチは静かに俺ではなく奴等に目を逸らさず頷いた。
「タイミングはお前に任せる、俺があいつらの前に行ったら、好きに始めてくれ」
「分かりました」
『ヒュードロドロドロ 恨メシィ 妬マシィ』
「なんだ、これは音は何処から出ている!」
「分かりません!、自分達の周り全体から聞こえて来る気がします」
「ここって近くにお墓が有るんですよ、もしかしたら道以外のとこらから来ている僕らを……」
「そんな訳あるか! な、なんだ! 脚が地面にめり込んでいく!」
すると、彼らの周辺の地面が柔らかくなり土の手が彼らを地面に引き摺り込もうとしていた。
『ゼッタイ逃がさない! ドコダ、オレを殺しタやつはドコダ!!』
「何かの霊が自分達を殺すつもりということで、がっ!」
俺は術の発動を確認し、木の上から飛び下り先ずは冷静そうなやつの顔を蹴り気絶させ、その反動でまた木の上に飛び乗る。
「うわーん! やっぱり出た! ひぇぇぇ、助けてぇぇ」
とびきりビビっていた奴はケンイチが待つ後方に逃げていった
「落ち着け!、こちら特衛、何者かの襲撃! くっ、……幽……霊」
俺は仲間を呼ぼうとしているので、背後から奴を捕らえている土ごと蹴り飛ばし、気絶させた。
『痛い! 痛い! 痛いよ! 助けて、幽霊が、早くっ、…………』
どうやらもう一人も上手く気絶させたようだ。
「よし、こいつらを神社の近くに縛って置いとこう!
こいつらをこんなとこに投げとくより近くに置いといた方が安心だ」
「分かりました、だったら神社に運んで忍法‘夏の日のビーチ‘で僕が彼らの首から下を拘束しておきましょう」
*********************************
「まあ、そう言うことがありまして、今の彼らが此処で埋められているんです。タカトは『悪気はなかった、でも護衛としては弱すぎで上司の冥は教育がなってないな』とのことです』
俺はこの女に仕返しとして主人の前で悪いところを遠慮なく言ってやった、普通にタカトが強すぎると思うがフォローになるような事は絶対に言ってやらない。
「えっ! じゃあタカトも今日ここにいて、しかも冥の代わりの護衛を誘拐犯だと勘違いして戦ったのか!? 俺は今日護衛役が付くなんて聞いてないぞ」
はぁー、男前だな。目付きは少し悪いような気がするがワイルドと言えるような雰囲気だ。
美冬先輩はこんな人がタイプだったんだ。もっと甘いマスクのアイドル系だと思っていたけど違ったな。まあ、金持ちは全員王子様みたいなお坊ちゃんていう考えはタカトの時点で間違いだったけど……。
「例え聞いていなくても護衛は当たり前のことです。私が居ないときも若が気付いて居ないだけで誰かしらが貴方を見守っています。
……それと説明ご苦労様でした。ここからは私が説明しましょう」
「はあ、分かりました」
俺の殴られた意趣返しは華麗にスルーされ。戦った時のような鋭い目でなく、穏やかな丸い目で労われた。




