36話 八月
短編書いてみました、是非とも感想お願いします。
36話
俺が中学生になってもう四ヶ月もう八月、夏休みだ。八月になると気温が暑くなり師匠の修業もより辛くそしてより熱くなっていた。
しかし俺のやる気は野球部の市大会二回戦敗退の時点からやる気は失われていた。
そんな風にやる気のない今日この頃、体が重い俺の修業終わりに別荘の空き部屋に俺を呼び出した美冬先輩いつもの優しい顔でなく厳しい顔で質問を始めた。
「ヒナタ君、君は最近休みの日はどうしてる?」
「何って、特には。まあ朝の掃除と修業と人助けは継続してますけど……。そうだ最近までは野球部の練習をしてました」
なんだ、俺とよく道場で会う美冬先輩なら訊かなくても知っているだろうに。
「はあ、ダメだ。最近の君は完全に野球部だったね。
君は最近小春ちゃんに何かアプローチはしているのか?」
アプローチ? 俺が? 何故? 俺は見に覚えしかなかったので不思議に思って首を傾げた。
「俺の普段の男前の行動、人助け、ボランティアしてますけど?」
「ダメだ、君は何かもっと積極的なアプローチだよ。好きってことをアピールしなきゃ」
先輩は強い眼差しで俺を見据え、優しい言葉で俺に辛い現実を投げ掛けてくる。
「でも、父さんは男ってものはどんっとして、普段の行動で惚れた女を振り向かせるって言ってたんです。
葵も俺の良い噂が広まればきっと良い感じになるって」
「……父親の成功した昔話は半分ぐらいがホラ話か盛っていると思った方が良いよ。僕はそう思っているし、親戚に訊くとまあそんなもんだから。
まあ今の君はご近所でも評判の良い子だよね、小春ちゃんも良い子だって言ってるよ。だから次の段階に行くんだ」
先輩は頭に手を当てて首を横に振り、頭が痛いといわんばかりの態度をとっている。
「つ、次の段階、一体それは……」
「まあ、それは明日教えよう。明日の朝、君の家に行くから待っててね」
先輩は俺の質問に答えることは無く、質問の答えは明日に持ち越されることになった。
****************************
昼前俺は美冬先輩とタカトと一緒に隣町まで来ていた。
快晴で日差しが眩しで蒸し暑くなっている町を歩く。体力より気力の方が消耗している。
「うおっ、すげえでっけえ城だな、ううん家なのか。なあ、あれ人ん家かな?」
俺たちは歩いて大きな城の門の前を通る。
「ああ、ここは僕の友達が住んでいる歴とした民家さ。いつが紹介するときがあるかもね」
そうだ、美冬先輩は小学校の時に俺たちの小学校に転校してきて、それまでは隣町に住んでいたって聞いたことがある。
でもこのサイズで民家呼ばわりされるなら、俺の家は本当に恥ずかしくなるぞ……。
「はあ、先輩、俺たちは今どこに向かっているんですか? 」
「まあ、着けば分かるよ」
俺たちは町を外れて家のの少ない道に入っていった。
光を木が遮り、暗く鬱蒼とした木に囲まれた坂道を進む。
「さあ、着いたよ。朱里ちゃん!、美冬だよ」
坂道を登り、俺たちは綺麗に掃除されている古い神社にやって来た。
先輩が神社に向かって声をかけるとガタッガタッと扉の立て付けの悪い音をさせながら扉を開けて黒い髪をショートカットにしているメガネの少女が表れた。
「久し振りー! 」
先輩はアカリという少女の元へと駆けていった。
二人が並ぶと小柄の先輩と同じくらいの身長なのでアカリさんも小柄なんだろう。
「うん、久し振りじゃんまじで。いやでも電話でよく話すからそうでも無いかも。それでこいつらが力を借りたいって奴ら?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ上がれ」
俺とタカトは静かに本殿に入っていった。ここは綺麗に掃除されているがもう使われているような感じがしない。
中はテーブルにソファーがあり、テーブルの上にはお菓子とジュースがある。とても快適そうだ。
「なあ、美冬ちゃん何で俺たちがこんなとこまで来たんだ」
「それはお前らがバカだからに決まってるだろ」
なんだと、アカリは俺たちを初対面にも関わらず呆れたような顔をしながら平気で罵倒してきた。
それにはタカトも驚いて面食らっている様子である。
「おまえたちのことは美冬ちゃんから聞いてるよ、好きな女と付き合う為に告白をせずに、告白されるために普段の行動で惚れさせるってなんなんだよまじで。
タカトお前の方は好きな子の前で体に花火を巻き付けて夜に全力疾走って何?」
ああ、懐かしいな。タカトは自分の思う格好いいこと、詳しく言えば目立った上で格好いいことをしたい奴だった。
好きな子の前だと張り切って大騒ぎを起こしてたな……。
騎馬戦では騎馬を捨ててまさかの他の騎馬に乗り移ってはちまきを取るというビックリの戦法で反則負け、野外活動では夜にロマンチックに花火を見せてあげたいと言ってキャンプファイヤーに火遁の術で打ち上げ用の花火を打ち込んでカナちゃんを本気でびびらせてしばらく話すらしてもらえなくなっていたな。
「それはヒナタ君や葵君に散々注意されたぞ、……奏ちゃんにも叱られて失敗だったのは分かっているよ。しばらく目も合わせてくれなかったしな」
「あのそれで結局今日は何のためにここに?」
「それでお前が古河日向君か。タカトは前にも会ったことがあるけどお前は初めましてじゃん。
ウチは妹尾朱里、美冬ちゃんと同い年で親友の中学二年、渡神中に通ってる」
メガネの奥から見える瞳には力強さを感じる、小柄で内気そうな見た目だけど背筋はピンと伸びていて彼女からはつよい輝きを感じることが出来た。それに渡神中学と言えば今美冬先輩が通っているところだ。
この出会いが俺の転機になるのかどうか今の俺には分からなかった。
ただ散々な言い方だったけど先輩の親友なので信じたいと思った。




