34話 さらば先輩
34話
六月、隣町の渡神中学校に美冬先輩を含め五人の二年生が半年の間通うことになり、逆に向こうの学校からはこちらに五人来るそうだ。
これは毎年のことであるが生徒会となった俺は生徒会の美冬先輩が抜ける分俺たちが仕事を覚えなければならなかった。先輩は優秀で色々な所で勝手に働いていたらしくそれの代わりにとなるのは大変だった。
放課後の生徒会室、生徒会役員たちが美冬先輩を見送る為に集まっていた。
「じゃあ、わたくし美冬ちゃんは渡神中学校に行ってきます! 皆僕がいないからって泣かないでね」
「頑張れよ」
「先輩、いってらっしゃい」
「私、先輩の分も頑張ります」
ミコさんや先輩たちは美冬先輩を囲んで声をかけていると、美冬先輩は外の方にいた俺のところに来た。
「ヒナタ君、君は僕がいなくても頑張っていくんだよ、まあ、君とは道場でよく会うけどね」
「はい、先輩も頑張ってください」
そして先輩は隣の中学校に行ってしまった、小春さんも寂しいと言っていたがおれも少しは寂しい……。
先輩がいなくなったことにより本格的に色々な仕事を一年もこなすようになった。
三年の生徒会長から聞いた話では生徒会には困ったことが有れば相談の手紙が来くるそうだ。そして今までも生徒会長や美冬先輩たちは力を貸してきたらしい。
ミコさんなんかはソフトボールの助っ人であった美冬先輩の代理として練習に参加している。生徒会役員なのに放課後はグラウンドで土まみれだ。まあ、それでも俺も他の部活で手伝いしているから少しは負担は減っているだろう。
俺は今グラウンドの隅で坊主に囲まれていた。恐らく二、三年生だろう。見覚えの有る先輩もいる。
「おい、なんで男子がきてんだよ。生徒会には可愛い一年が入って来て助っ人してくれるんだろ」
最近男女関係なく美冬先輩の代わりに生徒会の可愛い一年女子が助っ人していることが噂になっていた。しかし助っ人を利用しようとしてくる奴らもいた、今目の前にいる野球部みたいに。
『わが校の部活には大きな格差がある』これはバスケ部部長である会長の言葉だ。
可愛い女子マネージャーがいる強豪サッカー部、そして女子マネージャーのいない野球部とバスケ部。
野球部とバスケ部は以前可愛い美冬先輩にマネージャーとして助っ人を頼んだらしいがあまりの美冬先輩の行うシゴキが厳しく野球部、バスケ部共に生徒会へ返品されたらしい。まあ忍者だからな、そりゃ厳しいよ……。
『そしてそのシゴキの鬼がいない今の内に野球部の奴等は見越さんをうやむやの内にマネージャーにしよう計画している。そんな野望は生徒会長そしてバスケ部部長として許せ無い! 男子の君が行って、可愛い一年が来ると期待している奴らの期待を裏切ってやるんだ! 可能ならシゴいてくれても構わない! 僕が許可する!』
「俺がマネージャーとして夏まで助っ人になりました。生徒会の可愛い一年の古河日向です。女子の見越さんは今ソフトボール部の助っ人で忙しいので俺が来ました」
俺は出来るだけ可愛い顔をしてそう言った。
俺を囲む先輩の中には呆然としている者、悔しそうにしている者、泣いている者と様々だった。
悔しそうにしていた先輩がこっち俺の目の前にやって来た。
「……そうですか、忙しいのに来てくれてありがとうございます。
部長の井上です、今日からはよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
こうして俺のマネージャー生活が始まった。
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俺がマネージャーとなって一週間俺は練習に参加するようになっていた。
『皆、インディアンランニングするぞ!』
キャプテンは練習を止めると皆に聞こえるようにそう叫んだ。
『はい!』
「はい!」
キャプテンが叫ぶと同時に三年の一人がキャプテンの元まで駆け出し何かをこそこそ相談している。
「おい、キャプテン! 『古河は別にしないか? こいつが先頭になると後ろの奴らがずっと追い付けない』」
「『た、確かに。あいつは一、二年の方のインディアンに加えよう。そうか前回あいつの後ろはお前だったか……』」
インディアンランニングとは列になって走り最後尾の人が先頭の人を抜かし先頭になる、ただそれを繰り返し続けるランニングだ。野球部では十人一列でやっている。
すごく単純なものだがそれ故に俺でも直ぐに覚えて参加することが出来るようになった。
「なあ、ヒナタ、お前はキャプテンの列に行かないか? お前は体力が有るみたいだし」
二年の先輩がそう言って三年のインディアンを勧めてきてくれた。
「はい、分かりました」
俺がキャプテンが並んでいる元に行くと三年の先輩たちは俺をすごく見詰めている
「なあ、古河今日のインディアンランニングは……」
「はい! 早く始めましょう! これっていいトレーニングになるんですよね」
「……君の参加は止めてくれないか、君は体力が有りすぎるんだ」
「すいません! 俺は会長に可能なら扱くよう指示されているのでそれは出来ません」
「ああ、バスケ部のあいつか、……これは生徒会の女子をマネージャーにしようとした俺たちの自業自得なのか」
キャプテンは切なそうな顔をしながら俺の言葉に頷くと俺を先頭に立つキャプテンの後ろに並ばせ走り出した。
『おい、クソキャプテン!!』
『何で前に並んでいるんだ!!』
『だから何でマネージャーの方が足が速くてスタミナがあるんだ!?
生徒会は美冬さんのような化け物揃いなのか!?』
俺の後ろから先輩たちの文句が聞こえてくる……、すまない。全部バスケ部部長兼生徒会長の指示なんだ。
このように俺は修業で身に付けた身体能力で野球部をシゴキ続けた。
七月になった。最近じゃあ先輩たちは俺のインディアンランニングについてくるようになり、俺のシゴキは俺にとっても中々キツイトレーニングになっきている。




