31話 殺伐とする
31話
「おし、みんなこれから自分がやりたい係りの所に来たら手を挙げてくれ。
まずは学級委員だな、男女一人ずつやりたい奴はいるか?」
「「「はいっ!」」」
なんだと、いつもならやりたい奴なんて一人ぐらいなのに何故だ……。
どうしよう俺。
「おい、ヒナタ行け行け」
前にいるカナちゃんの呟きが聞こえてくる。
「は、はい、俺もやりたいです」
「あーとりあえず、えーと見越さんは決定だな。男子は前に出て自分達で話し合って決めろ、じゃあ次は合唱選挙管理委員だなやりたい奴はいるか?」
俺たち希望者は教室の黒板まえの扉の近くに俺を含め四人の男子が集まった。
「おい、お前らは絵里さんのことが好きなのか? お近づきに成るために学級委員になるのか。
お前はさっきから絵里さんに言い寄ってたよな」
一人の小太りの男子がそう言ってきた。なんだこいつ睨み付けて来やがって、ムカつくな。
顔はぽっちゃりしていて親しみが持てる顔をしているから尚更イラっと来る。
「ぼ、僕は違います。そもそも絵里ていう人知りません」
メガネをかけた小柄の男子はミコさんとも俺とも違う小学校出身だろうか。
「なんだよ、郷原、お前はもう好きじゃないなら、邪魔すんなよ」
「ワシはなあ、ただそんな不純な動機で仕事をするなって言いたいんだよ。志村が学級委員になってもどうせ絵里の前でしか頑張らないんだろ。 それに絵里は好きな奴がいるんだよ!」
「何っ! 見越さん好きな人がいるのか!? じゃあ止めようかな」
志村と呼ばれていた奴は顔は良いがこいつのやる気なさげな態度は見ててイライラするぜ。やる気のあるサッカー少年の葵とは大違いだな。
……郷原お前は良いやつなのかもな。俺は誤解してたぜ。
「おい、それでお前はどうなんだよ?」
郷原は俺に視線を向けてきた。
「俺は別に好きじゃないぜ、俺は恩人のミコしさんの恋のキューピッドになるって決めたからな」
「はあ、面倒くさ、じゃあ眼鏡のこいつがやれば良くない?、俺は今言ったような目的があるし、そもそも俺も別の不純な動機がある。それで郷原も志村も純粋に学級委員目指している訳じゃないんだろ」
そう、俺は小春さんに格好いい所を見せれさへすればいいんだから、無理に委員長になる必要はない。
「ああ、それならばワシも納得出来る」
「まあ、俺もめんどくさそうだし、それでいい」
「あ、あの僕は内申点の為に為になろうと思ったんだけどいいの?」
「もう良いよ、先生、決まりましたえーと、駒田です」
志村は駒田の名札を確認して先生に伝えて自分の席に戻る。
俺もそれに続いて席に戻る。しかし、そこで郷原に呼び止められた。
「おい、お前は絵里が誰が好きか知ってるのか?」
「いや、知らないんだ。……俺はお前と仲良くなりたいと思っているぞ、また後で話そうぜ」
「……ああ、分かった」
俺が席に戻るとカナちゃんが上半身だけこちらに向けた。
「ねえ、ヒナタどうやって決まったの? じゃんけんもしてなかったようだし」
「まあ、いろいろあったんだよ。またいつか話すよ」
その後俺は余っていた体育委員になった。
係りが決まればすぐに帰ることができた。
「ヒナタ、僕はこれからサッカー部の練習に参加して帰るから、一緒に帰れない」
「分かった、じゃあまた明日な」
俺は教室を出る葵を見送っていると郷原が来た。
「単刀直入に訊くけど郷原君もさミコさんの恋の手伝いをしているの?」
「……俺が勝手にしているだけだ。俺は幼馴染みで絵里に恋愛相談を受けて手伝う事を決めた」
「志村が言ってたけどお前は良いやミコさんの事好きだったのか」
郷原は苦虫を噛み潰したような顔をして、しばらく返事をすることはしなかった。悩んでいるようだ。
「……昔の事だ」
やっぱりそうか、こいつはまだ諦めきれてない。そうだよな好きな人に好きな人ができてそれで簡単に諦められたら嘘だよな!
「俺はミコさんの恋を叶えるのが俺の目的だ。でも俺はミコさんを好きになった奴がどうしようと邪魔するつもりはないぞ。
俺はそれが言いたかっただけだからじゃあな」
「……」
俺は郷原を見ることなく教室を出てタカトのクラスに向かった。
「ヒナタくん、これから同じクラスになります一年間よろしくお願いします」
以前道場で仲良くなった犬山謙一に教室から出る前に話しかけられた。
「こちらこそよろしく、お前がこの学区の辺りの小学校出身だったんだな、案外近くに住んでいるとはな驚いたぜ。
今からタカトを迎えにいくんだけど。一緒に行こうぜ」
「うん、郷原や志村と同じ小学校なんだ、もちろん一緒に行くよ」
俺はケンイチを連れて教室を出てタカトの教室に向かった。
「なんだよ、タカト様からタカトさんに変わっただけなのか、友達だったら呼び捨てでいいんじゃないか」
「いや、これは心の問題なんだ、当時ちょっと調子に乗ってた僕にタカトはすごいトラウマとして心に残っているんだ、まあ自業自得だから文句は言えないんどけどね。呼び捨てだとあの頃のことを思い出しそうなんだ」
そう言っている内にタカトの教室に着いた。ここに来るまでにタカトに会わなかったがタカトはまだ教室にいるのだうか。
教室を覗いて見ると先生と思われる年配の女性に叱られているタカトがいた。
「何やったんだろうな。あっこっち見た、気づいたな俺たちに」
『何よそ見しているの! あなたもそうだけどね……』
「お説教が終わるまで関わらないようにしようよ」
「そうだな、廊下で静かに待っておくか」
こっちにまで先生が来られたら厄介なので見なかったことにして静かにタカトの説教が終わるのを待った。
「こんにちは」
先生はタカトを連れて外に出てきた、説教は終ったようだ。
タカトの顔は心なしか元気が無いようにみえる。
「こんにちは先生、風間くんは何をしたんですか?」
「こんにちは、君たちは友達ですか? そうですね、クラスメイトを怪我させたんですよ。どうにも風間くんともう一人の彼も格闘技経験者で意気投合して戦ってみて怪我しちゃったわけ、はあ、初日からこんなことがあるなんて」
俺たちがタカトの友人と言うことを話すと先生は疲れた顔をしながら話してくれた。




