27話 別荘での一日
おまけ
「おはようヒナタ君、朝だぜ」
赤いちゃんちゃんこを着たタカトが起こしに来た。
そうか、俺気絶してその後結局ここに泊まったのか……。
「た、タカトか、体が痛くて動けない。起こしてくれ」
「おう、今日はばあちゃんが別荘に泊まってるから紹介するから早く起きてくれよ」
そう言うとタカトは俺の体を担ぎ上げ部屋を出た。
「ちょっと、待って体が痛いって言ってるじゃんもっと優しく運んでくれよ」
「悪い、俺もうお腹がすいて仕方がないんだ」
朝の寒い空気のなかを進んで行くので体が冷えて一気に目が覚めたが体の痛さはどうにもならない。
「着いたぞ、おはよう! ヒナタ君も連れてきたぜ」
そこは敷地の割には小さい普通の居間だった。こたつがあり、そこにはお婆さんと師匠がいた。
タカトは俺をこたつの前に座らせ自分も座った。
「おはよう鷹人、日向君。はじめまして鷹人のお婆ちゃんです。日向君は箱尾の修業を受けたそうだけど体は大丈夫かい?」
落ち着いた雰囲気で優しそうなお婆さんだ、この人も実はヤバイ人なのかな。
「おはようございます、体は筋肉痛と痣で身体中が痛いです。
今でも体を動かすのが辛いです。」
「そうかい、それじゃあ後で薬湯とピーナッツをお食べ、苦い薬湯だけどよく効いてね、ピーナッツと一緒に食べたら簡単にすごく美味しいよ」
知っている、それは既に美冬先輩との修業で充分飲んでいるし、毎朝家でも飲んでいる
「ヒナタ君、これはばあちゃん特性だからいっつも飲んでる奴より濃いいぜ」
タカトはすごく嫌そうな顔で教えてくれた。
「日向君をしごき過ぎじゃないのかい? まだ初日だろうに」
「はい、ですが日向は今も元気に生きています。このまま指導していけばいずれ化けますよ」
「そうだぜ、ヒナタ君すげえ奴になるぜ、まあ、俺には勝てないだろうけどな」
「そうかい、でも油断していると負けちゃうかもしれないよ」
すごいちゃんと大人の人、鷹継さんの奥さんでタカトのばあちゃんだとは思えないほどちゃんと良識の有りそうなお婆さんだな。
「さあ、とにかく早くお食べ、今日は朝から授業があるんだろう、早く食べて早く着替えないとね」
俺たちはそう言われすぐに食事を始めた。
「うわ、すごい美味しいです!」
「そんなに喜んでくれるなら頑張って作ったかかいがあるよ」
俺はお婆さん手製の痛む体のことを忘れるほどに美味しかった。
「うぇ、まっず、これ生? ピーナッツ早く」
俺はお婆さん特性の美味しい朝食を食べた後、濃厚な薬湯を飲んでいた。本当に濃厚で、とろみが付きすぎで飲みにくくてしょうがなかった。
「すごく不味かったけど、体の痛みがなくなってきました」
「そうだろ、すごいだろ、それとヒナタ君今日は午前中から忍術授業があるから参加するぞ。
初心者のヒナタ君でも優しい先生だし分かりやすく教えてくれると思うよ」
「分かった、師匠今日の修業はどうしましょう?」
「それでは午後からにしましょう」
「よし、決まりだな。それじゃあ早速授業の準備だ」
タカトはそう言うと俺を再び担いで部屋に戻った。
「なああの二人、カトリーヌとトッキーもその授業出るのか?」
俺はやっぱり出来る限りカトリーヌに会いたくなかった。会えば恐らくまた敵意剥き出しで不味いことになるかも知れない、しかも道場はあいつのテリトリーだ。
「いや、あいつらは来ねーよ、カトリーヌの親父の家に帰るってことでトキも一緒にフランスに行ったから二人とも今日本にいないぞ」
「そうか、それは良かった。あいつとまた会ったらまた揉めそうだから会いたくなかったんだ」
「へー、まあ俺かトキが止めるからどうにもならないと思うけどな。
よし、着替えも終ったし、先に教室に行くか?」
「ああよろしく」
俺はタカトの物と思われるパジャマを脱ぎ昨日汚れが綺麗になっている俺のジャージに着替えて教室に向かった。
俺は今朝起きたばかりの頃は自力で歩くことも出来ないくらいだったのに、今は自力で歩いて教室に向かうことが出来る。
俺は別荘を出て、学校の校舎みたいな場所に来た。
「学校の教室じゃないか!?」
「ああ、これはじいちゃんが子供たちが授業で使うの為とじいちゃんが学校に泊まってみたいって理由で作られた校舎だ。
アホみたいだろ、学校に泊まりたいなんてでも案外人気があって定期的におっさんおばさんたちが泊まってるんだぜ」
子供の為ならすごいいい人だけど、すごいな金持ち泊まってみたいで学校の校舎を建てるんだから……。
俺たちはそのまま校舎の中へと入る。
「へー、立派なつくりだな、おっ、なんだこれ!?、中の教室はゲームセンターじゃないか!」
一階の教室の扉は鍵が閉められているが中は見えゲームセンターの機体が配置されているのが見えた。
「ああ、言ったろじいちゃんたちは泊まりたいだけなんだよ、勉強する必要ない、そして俺は勉強しろって使わせてくれないんだぜ、はぁ。
あとここの教室の先生がこの建物の管理人を兼任してて俺たちは鍵の在処すらしらないんだ」
タカトは呆れたような悔しそうな感じで短く後ろで結ばれている髪辺りを掻きながらため息をついた。
すごいなこれが金持ちの道楽って奴なのか。
「着いたぞ、おはよーマルちゃん」
俺は教室を通りすぎ一番奥の教室まで来ていた。
タカトはノックをすることなくドアを引いて中に入る、俺もそれに続いて入る。
「し、失礼しまーす」
「ええ!?、ちょっと急に待って…… おはよう。タカト君今日は早いんだね?」
部屋の住民は寝起きだったらしく俺たちを追い出し、すぐに着替えを始めると何事もなかったように扉を開いて俺たちを招き入れた。
部屋の中は普通の居住性のある部屋に成っていて生活感があり住み慣れているのを感じる、こんな山の中に暮らしているんだろうか?
部屋にいた人は二十代前半の女性のように見える、しかしツインテールという髪型をしていてもっと幼いのかも知れないけど。
しかしどうにも寝癖が直しきれていないし、部屋も片付けられていない。だらしなさそうな人だなあ。
「今日は友達を連れて来たからな、早い内にマルちゃんに紹介して、どうにかしてもらおうと思って来たんだ」
「友達を?」
マルちゃん?はタカトの後ろにいた俺の方を向いた。
「初めまして、古河日向です。今日から同じ教室でお世話になります」
「君が日向君か。私は及川円子です。
この建物の管理人兼ここで忍者っ子の教師をしているよ」
「はい、よろしくお願いします及川先生!」
俺はタカトと先輩頼りの現状をやめ、これからは二人が居なくてもきちんと道場で学べるようにするために先生に真剣に挨拶をし、礼をした。
「いやー良いね、話で聞いていた通りの子のようだね、きちんと教師である私に挨拶するなんて偉いよ。
それに君はタカト君を真面目に勉強するようにさせた子でしょ。しかも弟子入り志願までされたんでしょ。
君みたいな子が着てくれるのは大歓迎だよ、困ったことがあればいつでもこの‘まる子先生‘に言ってくれたまえ」
先生は自分の胸を叩きながら力強く俺の力になってくれると言ってくれた。
なんて便りがいのある人何だろう。
「マルちゃんの事を先生ってカトぐらいしかいなかったもんな、張り切ってるのも納得だな」
「さあ、行こう。私がこれから予習に付き合ってあげるよ」
俺たちは二階の教室に移動し先生から授業の内容についてききながら今の自分の勉強してきた範囲と擦り合わせていった。




