ある少年の思い出話
今回はタカトの昔話です。
思い出話
俺はまだ幼いという理由でなかなか道場に通う許可が貰えず、小さな道場にすら通うことがてきなかった。
その間は俺は家庭教師として箱尾増雄に指導してもらっていた。
しかしついに小学生になり、正式に別荘の道場に通う許可が降りた。
俺が通うことになった道場は、従姉の美冬ちゃんとよく一緒に通っている。
俺は初めて同年代の忍者がいるのでわくわくしていた。
しかしその忍者の質は低く俺はとても一緒に修業することをしたくなかった。それに偉そうな奴もいるしな。まあぼこぼこにしたけどな。
だから俺は道場の近くでよくサボってたんだ。
「あなた修業サボるのは良くないわ、速く先生の所に戻りなさい。
鷹継様の孫だからって調子に乗るんじゃないわよ。
私が誰だか知ってるの、私は烏丸カトリーヌあなたのお祖父様と同じ五人衆を祖父に持つものよ!」
道場の近くの座り心地の良い木の上でゲームをしていた俺はこいつのことは当時全く興味無かった。
「あのー、カト様全然聞いてませよ」
「あ、あなた、私の話を無視するとは許せない、決闘よ!!」
カトリーヌは飛び上がってタカトを殴ろうとするがタカトはそれを避けることなく片手で受け止め座ったままで地面に投げ返す。
「何すんだよ!、びっくりするだろ。人がゲームしてるから邪魔すんなよ」
なんだよこいつは? 急に殴りかかって来やがって。
俺はこいつに喧嘩売られる覚えはないぞ!
「あなた、やっぱり私の話を聞いて無かったのね! 決闘よ!
私が負ければ私とトキがあなたの子分になるわその代わりあなたが負けたら私の子分になってきちんと授業を受けなさい、いいわね」
「えっ、あっしもですか!? やばいですって犬山君をぼこぼこにしたらしく本当に強そうですよ」
「いい、トキ男には負けられない戦いがあるの、私は女だけどね。
とにかく負けるつもりはないわ、こんな所でゲームしているような人なんかに」
その戦いはすぐに終わった、タカトはやる気なさげな態度とは裏腹に決闘が始まるとすぐに動き始めカトリーヌが攻撃する前にカトリーヌに一撃を決め相手に膝に土を着かせた。
「ぐぅっ、がっ」
痛みを堪えて動けないカトリーヌ。
「ま、参りました、勘弁してください。あっしが子分として何でもするのでカト様を子分にするのは許してください」
トキはカトリーヌが膝をがつくと直ぐにタカトの側にやって来て土下座した。
「トキ、あなた…、いいえ私が言ったことです。
何でもするわ私のことを好きになさい」
カトリーヌは土下座するトキを止めさせタカトの言葉を待つ。
「ああ、これからはお前たちは俺の子分なお前たちこれからは俺が授業サボっても文句言うなよ。俺の言うことは絶対服従だからな」
それを聞いた二人は青ざめた顔をして歯を食い縛りながら悔しげに頷いた。
「……」
「おい、冗談だぞ、まさかよく知らないお前らを子分にするわけないだろ。
子分ってのはその人に憧れて自分からなるもので相手に強制された子分は偽物だ。
だからな俺はお前らを子分にはしない、でもサボってるの邪魔するなよ」
二人は顔を上げてタカトを見つめる。
「……なんて心の広い方なんでしょう、普通なら勝ったのです子分にするのは普通のことです。
なのにあなたは子分にすることなく無礼な振る舞いをした私たちを許してくれるなんて。
完敗だわ、私たち、もう一度言いますあなたの子分にしてください。
敗者に慈悲を与えることのできるあなた、正直私はそんなことはできません。
だから私たちはあなたの子分になります。これは私が望んだことです」
「そうか、じゃあよろしくな」
タカトはカトリーヌの話を聞くと表情を緩め笑顔になり、二人は握手を交わした。
それによりこの日から烏丸カトリーヌとオマケの
「えっちょっと待ってくださいよ、別にあっしはタカト君の子分になる必要はないんじゃないですか? ちょっと聞いてるんですかカト様って、お、おおおおお」
子分になるのを断るため二人に突っかかっていたトキだがカトリーヌの方を向き、そしてカトリーヌの後ろ、道場の方を指差し固まった。
「どうしたんですか? 急に壊れたラジオみたいになって私の後ろに、おお、鬼!?」
「おや、タカト様こちらでしたか、もしサボっておられるなら、一緒に組み手でもと思ったのですが忙しそうですね」
「いや、忙しくないぞ、そうだ、お前らもどうだいつもサボっているときマスオさんが暇なら組み手してるんだかこれから……」
「い、いえ、子分ごときである我々がタカト様の組み手の参加しても邪魔になるだけです。
だからあっしたちのことは気にせずお二人で行ってください、そうですよね、カト様?」
「ええ、どうぞ私たちのことは気にせず。私たちは授業に戻るので失礼します」
「そうか、じゃあな」
「はい、失礼します」
カトリーヌとトキは一礼すると一目散に道場に戻っていった。
「いやぁ、残念ですね。彼女たちもなかなかの才能の持ち主です鍛えてみたかったなぁ。
私が鍛えれば五人衆を越えるほどの忍にしてみせるのに」
「なんか怖がられてないか、昔何かしたんじゃないのか?」
「いえ、何故かタカト様以外の多くの忍者っ子に怖がられているんです、話したこともない子供にも拘らずですよ。
でも何故か忍者っ子の両親からは人気でよく子供を鍛えてくれって頼まれるんですけどね。何故か一日で子供たちはやめちゃうんです」
マスオさんが悲しそうにため息をついている、その姿はとても子供に嫌われるような悪い奴には見えない。
「可哀想だな、マスオさんの魅力はコーヒーと同じで大人にしか分からないのかもな、まあ俺はすごいからコーヒーも飲めるけどな。
そうだ! 俺がこれから時間があったらいつもの組み手する道場に同じ道場のの奴を連れてくるよ、俺と話してるマスオさんを見たら悪い奴だとは思わないし、一緒に参加したくなるぜ」
「それは嬉しいですね」
マスオさんは嬉しそうに俺を見て頷いてくれた。
任せろマスオさんの悪評は俺が祓ってやる。
数日後 俺はカトリーヌとトキを誘うことにした。
「なあ、二人とも基礎忍術の授業終わったけどすぐ帰るか?、もし暇なら付き合ってほしいんだけど」
「予定など全くありません、トキは何か予定があるかもしれませんが私はいつでも大丈夫です。御用があるなら私に何なりと」
「ちょっとカト様~、」
トキはカトリーヌに睨み付けられ黙った。
「そっか、じゃあカトリーヌだけでも今日マスオさんとこの後組み手するんだけど一緒に行こうぜ」
「えっ!、あのーやっぱりトキを連れていってあげないのは可哀想なので後日ということにしませんか」
「いえ、あっしのことは気にせずお二人で行ってきてください。
それではあっしは急ぎますのでこれにてごめん」
トキをそう言うと振り返ることなく一気に走り去ってしまった。
すごいなあの瞬発力は格闘の授業の時は手を抜いてたのか?
まあ次誘ったとき確かめればいいか。
「じゃあ行くか」
「……はい」
組み手が楽しみなタカトはやる気なさげなカトリーヌの手を引いて走っていつもの古い道場に向かった。
「こんにちはー!、マスオさん俺の子分つれてきたぞ」
「はい、こんにちは、そちらの方は自己紹介はまだでしたね。
私は箱尾増雄と言います、よろしくお願いします」
「は、はい私は烏丸カトリーヌです、よろしくお願いします」
カトリーヌは緊張していた様子だったが箱尾の穏やかな表情と挨拶を見て落ち着いたようだった。
「(こんな人が鬼って言われて恐れられるはずがない、きっと大人たちが私たちをからかったんだわ。 こんな優しそうな人が怖い人っていうバカな冗談だったのね)」
それから数十分三人で世間話をしていた、カトリーヌはすっかりリラックスしていた。
「よし、カトリーヌもマスオさんと仲良くなった、事だし組み手するか」
タカトと箱尾は道場の中央に立った。
「タカトさんは私にマスオさんを紹介するために連れてきたんですか?」
「ああ、マスオさんと多くの忍者っ子が仲良くしてほしいからな。
これからは他の奴も誘っていこうと思ってるぞ」
「(なんていい人なんでしょう、大人の悪い冗談を嘘だとわざわざ教えてくれて、そして、新しい友人を作る機会までもくれるなんて)」
「それではいきますよ」
「いつでもいいぞ」
その瞬間二人の姿がぶれる。
次の瞬間壁に叩きつけられ血塗れのタカトが現れたら。
「なかなかやりますね、あの瞬間に上手くカウンターで当ててくるとは成長しましたね」
箱尾は擦れて赤くなっている右の頬を触りながらそう言った。
「何百回俺が壁に叩きつけられたと思ってんだよ、これぐらいあんだけ殴られれば出来るようになるに決まってんだろ!」
タカトは血塗れの姿を気にすることなく箱尾に向かって行く。
「隙が多すぎです、はい」
次の瞬間箱尾の後ろの地面に投げられて叩きつけられる。
「ま、まだまだ行、くぞ」
その後も何度もタカトは投げられ殴られ蹴られて地面に叩きつけられた。
「ふう、今回は三十二回起き上がりましたか、子供が日に日に成長姿は素晴らしいものですね」
箱尾の足元には気絶しているタカトがいる。
「どうしますか、カトリーヌさんも私と組み手をしますか」
「い、いえ、遠慮しておきます、それよりタカトさんはぶ、無事なんですか。 何度も吹き飛ばされていましたけど……」
「はい、手加減をしておりますのでご心配いりません」
「そうですか、あ、あの私そろそろ帰ろうかなって思うんですけど」
「そうですか、長々と引き留めてすみませんでした、よかったらまた時間があるときにでも来てください」
「はい、失礼します!」
カトリーヌは綺麗な礼をし一度も振り返ることもなく帰っていった。
その後もタカトはトキも含め多くの忍者っ子を巧みに、時には強引に誘いだし、箱尾の第一印象の良さで警戒心を解かせ、箱尾に血塗れのになる己の姿を見せて再び警戒させることを繰り返した。
それは鷹継がその話を聞き箱尾を他の仕事に就けるまで続くこととなった。
タカトはこれによって今までの神童だけでなく鬼の弟子、小鬼と呼ばれ恐れられるようになり、授業後は皆タカトからの誘いを断るために習い事を始め暫く忍者っ子の間で空前の習い事がブームとなった。




