24話 春到来
24話
次の日からは俺は毎日の日課の掃除とランニングに重いシューズを履いて行うようになった。
『いいかい、例え辛くても氣を使っちゃ修業にならないから組み手以外じゃ使っちゃ駄目だよ』
毎日の腰曲げる掃除、長距離を走り続けるランニングは今までとは比べ物にならないほどに体に負担が来た。
「近所の腰の曲がった老人に心配されるとは。情けなかったな」
『リストバンドは氣を拘束するんだ、つまり自分の力を抑えるリミッターみたいなもので自分の体に負荷をかけてくれるからお風呂以外で外しちゃ駄目だよ』
裸足の状態でもリストバンドを着けているといつもより疲れるような気がする。
昨日はシューズや山道で気付けなかったけど氣を使用してない状態ならきつい。
そして、ランニングの後は美冬先輩から渡された薬をお湯に溶いて飲む、初日はピーナッツが家になくてあまりの不味さに大変だった。
それでも効き目は確かなようでこれを飲んだら体の疲れが取れ、痛みも引いていった。
『今日からはタカトと一緒に勉強することにしたよ、二人とも忍者の知識に興味がないから競争したらやる気が出るんじゃない』
そこからは俺たちは先輩の思惑通り常にテストで競争しあい、先輩からは忍検の下級は合格範囲に入ると言われるようになった。
そして氣もリストバンドを外しても使用可能になった。
『まさか、君がこんなにも早く氣と基礎技術を習得するとは思ってなかったよ。
明日から僕らと一緒に別荘で箱尾さんと修業にしよう、今まで修業の進行状況は報告していたからすぐに修業に入れるよ』
そして四月の始めごろ、今日俺は遂に箱尾さんの修業を受けることとなった。
「やあ、おはよう。 覚悟はできてるかい?」
「はい!、それより今日は美冬さんはメイド服じゃないんですね」
美冬先輩は修業時はよくメイド服だったが今回は普通の黒のジャージだった。
「うん、流石に師範や他の門弟がいるとこではあの格好はまずいね、ぶっころされるかもね。
そうだ、別荘の道場には小さな道場と違っていつも同年代の弟子がいるから仲良くしてね。怖い人はいても悪い人はいないから安心してね」
「はい、それで今日は車じゃあないんですか?
もしかして走りですか」
「いや、電車を乗り継いでからの歩きだよ、箱尾さんは本当にきついから僕の指導の時みたいに体力消耗してたら話にならないよ」
嬉しいような、悲しいようなやっぱりどんな覚悟しててもこんな話されたら不安が過ってしょうがない。
俺は軽い靴に履き替えて別荘に向かった。
俺たちは電車の乗り継ぎを終え走って別荘に向かっていた。
「やっぱり遠かったんですね、前来たときは車でアイマスクしてたからイメージがわかなかったんですけど駅から別荘までの山道が長いですね」
「うん、そうだよね。でも人目を忍んでいるからしょうがないよ」
美冬先輩でもこの鬱蒼としている山道は辛いのだろう。
顔がしかめながら走っている。途中虫に出くわせば大きく道をカーブして進んでいた。
「車なら秘密の地下道で近道出来るんだけどね、僕ら未成年だから車は無理だし、自転車でもこの山道ならすぐに壊れるから自分の体の方が便利なんだよね」
山道に入って三十分ようやく立派で真新しい武家屋敷にたどり着いた。 ここは小さい道場と違っていつもリフォームしてるから綺麗なんだな。
俺は以前は感動した建物だったが忍者の道場より高級ホテルとしか見えなくなっていた。
「ヒナタ君こっちだよ、特殊技能コースは別荘の外れの方に建てられているから、パーティーのあった大きい建物の方じゃないよ
特技の方は人目につかない場所での修業になるからここから少し遠いよ」
俺はまた移動を始めることになった。
敷地内を歩いていると、俺と同年代の奴や年下、年配の方まで多くの人とすれ違った。
「先輩、なんか俺すごい見られてるみたいなんですが、しかも同年代の奴は俺を避けているような気がする。
俺と目が合うとすぐに逸らして走り去るんです」
「あー、そっか、最近じゃあ特殊技能コースに行く子供なんてタカトぐらいしか居なかったからね。
皆気になっているんだよ、まあヒナタ君と同年代の人は神童がヒナタ君を道場でべた褒めしているのを消えているからね、しかも恐れられていた小鬼を更生させた人で、小鬼より恐ろしい存在みたいな噂は道場ないで広まってるよ」
美冬先輩は今思い出したかのように手を叩き、他人事のように淡々と俺に説明した。
なんだその噂はそれ聞いてこの道場聞の子供と仲良くなれるわけないじゃん、今聞いただけで俺自身もすごい警戒したよ、なんだよ小鬼より恐ろしい奴って、 しかも俺は鬼に弟子入りするんだ。
そりゃ目を逸らしてしまうな、納得だ彼らは何も悪くない納得したよ。
「でも、それじゃあ先輩がさっき言ってた仲良くすることはかなり難しいんじゃないですか?」
「でも、今は休みで小さい道場にはあまり人が来ないから別荘に来て修業している人もいるんだ、四月からは小さい道場にもそういう同年代の子もやって来るようになるからカトリーヌみたいに喧嘩売られる前に仲良くなってた方が良いと思うよ」
ありがとう、先輩。俺の心配してくれたんですね。
でもやっぱり尊敬されているタカトの師匠であるという話で俺は敵意持たれているんですね、師匠じゃないのに……。
「分かりました、これから仲良くなっていこうと思います」
「うん、それがいい。僕もタカトも予定が入ればいつも一緒に修業出来るわけじゃないからね、早く修業仲間を作っておくと楽しくなると思うよ」
なんだろう仲良くなりたいと思って通りすぎる彼らを見るとたまにいる目付きの悪い人も慣れていい人のような気がしてきた。
よし、先輩の心遣いを無駄にしないように四月までにはここで友達をつくるぞ!
俺は未知の場所での友達作りを中学より前に忍者道場ですることとなった。 忍者のこどもは今までタカト、先輩、カトリーヌ、トッキーしか知らないが全員なかなかの個性を持っていた。
俺はこれからの修業生活に不安を抱きながらようやく目的地の古びた道場に到着した。




