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第30.5話(幕間)【クルル編】:紅き執着と、修羅の道

人間界と魔界を隔てる巨大な大断層。

その底に広がる『魔界・黒嶺(こくれい)の大地』は、常人の生身では数分ともたない濃厚な瘴気と、凶暴な魔獣どもが蠢く死の領域であった。


バッシュたちのパーティーから姿を消した天才魔術師クルルは、一人、この極限の地を迷いなく歩んでいた。


「グラァァァァッ!!」


突如、黒い岩陰から躍り出たのは、人間界の大型魔獣を遥かに凌ぐ巨躯を持った『煉獄大熊(ベルセルク・ベア)』だった。岩をも容易く粉砕する鉤爪が、クルルの華奢な頭上から振り下ろされる。


だが、クルルは避ける動作すら見せなかった。


「……鬱陶しいわね。邪魔しないで」


冷たく言い放った瞬間、クルルの瞳が紅く妖しく発光した。


呪文の詠唱すらない。

クルルの背後に無数の漆黒の魔術陣が展開されたかと思うと、そこから放たれた極太の【圧縮黒炎波】が、巨大な魔獣の体を一瞬で飲み込んだ。


ドゴォォォォォンッ!!!!


咆哮をあげる隙すら与えず、魔獣の巨躯が一瞬で肉片ひとつ残さず蒸発し、周囲の黒岩ごと削り取られた。


「あは……すごい……。また、私の魔力が強くなってる……」


クルルは自身の掌を見つめ、陶酔するように身体を震わせた。

かつてバッシュたちと旅をしていた頃のクルルとは、まるで別人だった。クルルの身を包む魔力は、魔界の過酷な環境と、胸に渦巻く激しい情念を糧にして、加速度的に膨れ上がり、異常な領域へと足を踏み入れつつあった。


魔界の奥深く——青年クロードが待つ『魔王城』へ近づけば近づくほど、立ち塞がる魔獣はより凶悪に、より絶望的な強さになっていく。


だが、今のクルルにとって、それらの脅威は己の強さを底上げするための糧に過ぎなかった。


立ち塞がる超大型の魔獣群。空間を歪める異形ども。

それらが群れをなして襲いかかってこようと、クルルは狂気に満ちた笑みを浮かべ、圧倒的な魔力の暴力で一頭残らず粉砕し、ボコボコにすり潰していく。


「あはははっ! もっと……もっと強くなれる! これなら……これだけの力があれば、私は絶対に誰にも負けない……!」


足元に転がる無数の魔獣の残骸を意にも介さず、クルルは紅く光る瞳で、遥か彼方にそびえ立つ魔王城の影を見つめた。


その頭の中にあるのは、ただ一人への異常な執着のみ。


「待っててね……クロード……」


冷酷な笑みを浮かべながら、覚醒を続ける天才魔術師は、血と硝煙の匂いが満ちる修羅の道をどこまでも突き進んでいくのだった——。

できる限り毎日投稿を続けていきたいと思っています!


お目通しいただけたのも何かのご縁ですので、これから毎日読みに来ていただけたらとても嬉しいです。


次回の更新もぜひ楽しみに待っていてくださいね!


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