第26話:罠の完成と、閉じられた退路
「……おかしいな。盗賊の拠点どころか、人っ子ひとりいないぞ?」
大空洞の中央に辿り着いたゼットが、不審そうに大剣を肩に担ぎ直した。
周囲は切り立った岩壁に囲まれ、出入口は自分たちが通ってきた狭い一本のトンネルしかない。
「エド、本当にここで合ってるのか? 情報が間違ってたんじゃ……」
バッシュが振り返り、エドへ問いかけようとした——その時。
ゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!
凄まじい地鳴りと共に、今通ってきた唯一の通路が、上部から落下してきた巨大な落石によって完全に封鎖された。
「なっ……!? 退路が……崩落した!?」
ゼットが慌てて岩の山へ駆け寄り、大剣で叩くが、びくともしない。
「くそっ、閉じ込められた! エド、別の抜け道は——」
バッシュがエドの方へ振り返る。
だが、そこにいたエドは、これまで見せたことのない「顔」をしていた。
暗がりの中で、エドは声を殺して肩を揺らしていた。
「……ククッ。ハハハ……! あーあ、本当に……本当にお前たちってやつはさぁ」
「エド……? 何を言ってるんだ……?」
バッシュの問いかけに、エドはゆっくりと顔を上げた。
その表情には、これまでバッシュたちに向けられていた温かな笑みなど微塵もなく、獲物を追い詰めた蛇のような、冷酷で醜悪な嘲笑が浮かんでいた。
「言ったろ? 『安全なルートを案内してやる』ってさ。……ここは古代の処刑場。外からの補給も逃げ道もない、完璧な墓場だよ、勇者様」
「エド……お前、何を……っ!?」
ゼットとバッシュが絶句する中、エドは懐から一本の【漆黒の毒塗りの短剣】を静かに抜き放った。
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