第24話【バッシュ編】:盗賊の拠点と、差し伸べられた手
迷宮都市ガルードでの依頼を順調にこなし、パーティーとしての成長と連携に手応えを感じ始めていたバッシュたち。
そんな彼らのもとへ、エドが楽しそうな様子で一枚の討伐依頼書を持ちかけてきた。
「みんな、ギルドでちょっと面白そうな依頼を見つけてきたよ」
宿屋のテーブルに広げられたのは、ギルドから発行された正式な討伐ポスターだった。
「これって……『黒の絶壁に潜む大規模な盗賊団の討伐』……か?」
ゼットが脚を組み、身を乗り出して依頼書を覗き込む。
「そうなんだよ。ガルードの北にあるあの絶壁の洞窟に、最近悪質な盗賊の拠点ができちゃったらしくてさ。街の商人たちも困ってるらしい。これをスカッと解決できれば報酬もいいし、俺たちのパーティーの評判も上がって、もっと活動しやすくなると思わないか?」
エドはどこまでも魅力的で、親身になった温かい笑みを浮かべた。
その言葉に、バッシュの胸は高鳴った。
「盗賊の拠点か! 困っている街の人たちを助けられるなら、願ってもない依頼だ! 行こう、みんな!」
「おう! 俺たち四人の完璧な連携を見せてやろうぜ!」
ゼットが拳を握りしめ、エリスも「はい! 私も精一杯サポートします!」と健気に笑顔を見せた。
「へへ、頼もしいねぇ。任せておけよ、俺が安全なルートをしっかり案内してやるからさ」
エドは頼もしい仲間の顔で胸を叩き、バッシュたちは期待に胸を膨らませて準備に取りかかるのだった——。
第25話:絶壁の迷宮と、忍び寄る不協和音
『黒の絶壁』の内部は、外の光が一切届かない湿った薄暗い洞窟構造になっていた。
岩肌からは冷たい水滴が垂れ落ち、不気味な風切り音が洞窟内に不協和音のように響き渡っている。
「みんな、足元に気をつけてくれよ。ここは足場が悪いし、罠が複雑に入り組んでるかもしれないからな」
いつものように先頭を行くエドが、手際よく仕掛けを察知しながら慎重に進んでいく。
その頼もしい背中を見つめながら、エリスはふと胸の奥に小さな「引っかかり」を覚えていた。
(……変ね。エドさん、どうしてこんなに迷いなく進めるんだろう……?)
エドの索敵能力と罠解除の手際の良さは、これまで何度もパーティーを救ってきた。しかし、この『黒の絶壁』は前人未到と言われる複雑な自然洞窟だ。初見のはずの分岐路を、エドはまるで知っているかのように一切の迷いなく選択している。
さらに、ヒーラーとして周囲の『気配(波長)』に敏感なエリスの感性は、エドの背中からほんのわずかな「違和感」を捉えていた。
(気にしすぎ……よね? エドさんはいつだって私たちのために尽くしてくれてるんだから……)
エリスは首を振り、胸に芽生えた微かな疑問を打ち消そうとした。
だけど、バッシュのすぐ隣を歩きながら、エリスはそっと手元の聖印を握りしめる。
(万が一……何かがあっても、私がバッシュを守らなきゃ)
バッシュの背中を見つめるエリスの瞳には、初恋の甘い情愛と、「何があってもこの人を絶対に守る」という健気な決意が宿っていた。
「よし、この奥が大空洞になっているみたいだ。盗賊の拠点があるならそこだろう。みんな、準備はいいか?」
エドが振り返り、優しく力強い笑みを浮かべる。
「おう! 一気に片付けてやろうぜ!」
「行こう、みんな!」
エリスの胸に残る小さな胸騒ぎを乗せたまま、勇者一行は大空洞の奥深くへと足を踏み入れたのだった——。
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