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第22話【クロード編】:要塞の危機と、同僚の駆けつけ

北方要塞『アルザス』は、まさに地獄絵図と化していた。


重厚な石造りの防壁は半ばから豪快に砕け散り、黒煙と激しい炎が夜空を赤く染め上げている。

あちこちで穏健派の魔族たちが倒れ伏し、それを嘲笑うかのように武闘派の甲冑兵たちが蹂躙を続けていた。


「ハァ……ハァ……っ! くそっ、ここまで、なのか……!?」


要塞の中央広場。血煙が舞う瓦礫の山の上で、膝をついている一人の青年がいた。

穏健派が誇る四天王のひとり、プラムである。


普段は軽口を叩く余裕に満ちたプラムだったが、現在の彼の身なりはあまりに痛々しかった。

自慢の魔導衣はズタズタに引き裂かれ、肩や脇腹からは鮮血が滴り落ちている。

彼の視線の先には、山ほどもある巨大な漆黒の肉塊——武闘派が解き放った異形の巨獣『暴食魔獣』が、赤く光る三つの眼でプラムを見下ろしていた。


さらにその傍らには、過激派の幹部である男・ガルドスが、嗜虐的な笑みを浮かべながら佇んでいる。


「ハハハ! 穏健派の四天王プラムとやらも、完全に年貢の納め時だな!」


ガルドスは手に持った大剣をプラムの首元へ突きつけ、狂気に満ちた声を張り上げた。


「ルシエラのような温い女に媚びを売り、人間に怯えて暮らす貴様ら穏健派の存在そのものが、我が武闘派の恥辱なのだよ! ここでお前が死ねば、穏健派の士気は完全に崩壊する! さあ、我が魔獣の餌となれ!」


ガルドスが腕を振り下ろすと、異形の『暴食魔獣』が地響きを立てて咆哮をあげた。

丸太のように太い、鋭い爪の生えた巨大な腕が、逃げ場を失ったプラムの頭上から容赦なく振り下ろされる。


「……ここまで、か……。ルシエラ様……みんな……すまない……」


全身の魔力を使い果たすほど戦い抜き、指一本動かす気力すら残っていないプラムは、悔しさに唇を噛み締めながら、静かに絶望の目を閉じた。


——だが。


直後、世界から全ての音が消え去ったかのような、奇妙な静寂が訪れた。


ヒュンッ——。


一陣の澄んだ風が、血生臭い戦場を吹き抜ける。


ドギャァァァァァァンッッ!!!!!!


「グラァァァァッ!?」


突如、空を切り裂くような破砕音が響き渡った。

振り下ろされたはずの『暴食魔獣』の巨大な腕が、肘から先ごと粉微塵に弾け飛び、肉片すら残さず蒸発して消え去っていたのだ。


「ぐ、不意の攻撃……!? 何事だっ!?」


ガルドスが驚愕して叫び、倒れそうになっていたプラムも思わず目を開けた。


血煙と炎が揺らめくその中央。

プラムの前に、あつらえたような漆黒のコートを身に纏い、凛とした背中を見せて立ちはだかる一人の青年がいた。


その背中に見覚えがありすぎるプラムは、目を見開いて叫んだ。


「……っ、クロード……!? お前、なんでここに……!」


振り返ったクロードは、落ち着いた佇まいでプラムを見下ろした。


「ふぅ……間一髪間に合ったな。相変わらずボロボロになるまで無理をするなよ、プラム」


「っ……誰が好きでボロボロになるかよ! ……だが、助かった……マジで死ぬかと思ったぜ……!」


同じ四天王であるクロードの登場に、プラムの顔には一気に安堵と生気が戻ってきたのだった。

できる限り毎日投稿を続けていきたいと思っています!


お目通しいただけたのも何かのご縁ですので、これから毎日読みに来ていただけたらとても嬉しいです。


次回の更新もぜひ楽しみに待っていてくださいね!


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