第21話【クロード編】:魔王ルシエラからの通信と、影の出撃
夜の静寂が、古びた旧都市の廃墟を包み込んでいた。
かつて人々が暮らし、今や崩れた石壁と雑草に埋もれたその広場の中心で、漆黒の長コートを纏った青年姿のクロードは、一人静かに佇んでいた。
彼の手元で、掌サイズの青い魔導結晶が淡い光を放っている。
その光の波長に乗って響いてきたのは、凛とした気品と、どこか母性のような温かみを湛えた女性の声——穏健派の頂点に君臨する魔王ルシエラであった。
『……クロード。夜分遅くにすまない。だが、至急お前の力と判断を仰ぎたい事態が発生してしまった』
「ルシエラ様。……何かあったのですか?」
クロードの声はどこまでも静かだったが、主君に対する深い忠義と敬意が込められていた。
ルシエラは少しだけ苦々しげに息を吐き出すと、現地の惨状を伝えるように言葉を続けた。
『我が軍の穏健派が管理している北方の重要拠点『アルザス要塞』が、武闘派の急襲を受けたのだ。奴らは共存を望む我ら穏健派を見せしめとして徹底的に踏みつぶす気だ……。さらに悪いことに、現地には武闘派が極秘裏に育て上げていた古代の異形魔獣と、過激派の幹部が投入されていると報告が入った』
「異形魔獣……。穏健派の戦力だけでは、厳しい攻防になりますね」
『そうなのだ。現在、お前と同じく四天王のひとりであるプラムが現場で陣頭指揮を執り、防衛にあたっている。だが、敵の予想以上の戦力差に苦戦を強いられ、すでに要塞の防壁は突破されかけているという……。プラムも怪我を負い、追い詰められている状態だ』
ルシエラの言葉に、クロードの深い漆黒の瞳が一瞬鋭く細められた。
「プラムが……! 分かりました。あいつは口こそ減らず口を叩きますが、大切な奴です。死なせるわけにはいきません。すぐに向かいます」
『すまないな、クロード。どうかプラムや同胞たちを救ってやってくれ』
「お任せください」
通信を終えると、青い魔術結晶の光が静かに消えた。
クロードは漆黒のコートの襟を立て、夜風に髪をなびかせながら、一直線に北方へと視線を向けた。
(待ってろよ、プラム……! 絶対に間に合ってみせる)
魂の底から溢れ出る莫大な魔力を足元に集中させると、クロードの身体は滑るような速度で、暗闇の中へと疾走していった。
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