第18話:勧誘と、立ちふさがる壁
迷宮都市ガルードの中心に位置する、活気あふれる冒険者ギルドの大広間。
バッシュたちは前衛と後衛の不足を埋めるべく、新しい仲間を探してギルド内に集まる冒険者たちへ熱心に声をかけて回っていた。
「へぇ……君たちが噂の『勇者パーティー』かい?」
声をかけたのは、この街で中堅の冒険者パーティーとして名の知れた二人組だった。
使い込まれた長槍を携えたベテラン風の男・ガルノと、しなやかな弓を背負った女性・ミレーナ。二人の佇まいからは、数々の修羅場を潜り抜けてきた確かな実力が伺えた。
「ああ! 俺たちは今、前衛を張れる頼れる奴と、魔法が使える仲間を探してるんだ。良かったら一緒に旅をしないか?」
バッシュが身を乗り出して熱っぽく誘う。ゼットも「俺たちの仲間になれば、もっとデかい依頼もバンバンこなせるぜ!」と豪快な笑顔で頷いた。
ガルノとミレーナは顔を見合わせると、一瞬だけ誇らしげな表情を見せた。
「あの勇者一行に誘われるなんて光栄ね、ガルノ」
「ああ……確かに魅力的な話だ。君たちの噂は聞いている。俺たちの実力なら、足手まといにはならないはずだ」
一時は前向きな空気が漂い、バッシュとエリスの顔にパッと明るい希望の光が差した。
——だが。
「……ちなみに確認なんだが、君たちの最終的な『目的』を聞いてもいいかい?」
ガルノの何気ない問いに、バッシュは少しの迷いもなく、まっすぐな瞳で即答した。
「魔王軍の過激派を抑え込み、魔王を倒して……この世界に本当の平和を取り戻すことだ!」
その言葉がバッシュの口から出た瞬間、広場の空気が凍りついた。
ガルノの差し出しかけた手がピタリと止まり、ミレーナは引きつった苦笑いを浮かべて一歩後ずさる。
「……あー、ごめん。今の話、撤回させてくれ」
「えっ……? ガルノさん!?」
バッシュが呆然とする中、ガルノは険しい表情で首を横に振った。
「魔王討伐……? 冗談じゃない、俺たちは自分の身の丈に合った依頼で安全に稼ぎたいだけなんだ。悪いが、死ににいくような無謀な旅につきあう気はないよ」
「そんな……! 俺たちが絶対にみんなを守るから——」
「無理言わないでよ!」
ミレーナが語気を強めて叫んだ。
「あんたたち勇者は特別かもしれないけど、私たちは普通の人間なの! 魔王軍なんて化け物と戦ったら命がいくつあっても足りないわ……俺たちじゃ、とてもそんなレベルじゃない」
二人は逃げるように背を向け、大急ぎでギルドの混雑の中へと去っていってしまった。
「あ……待ってくれ……っ!」
伸ばしたバッシュの手は、むなしく空を切るだけだった。
「……はぁ。やっぱり、そう簡単にはいかないねぇ」
後ろで見守っていたエドが、困ったような苦笑いを浮かべながらバッシュの肩を優しく叩いた。
勇者という称号の重さと、世間の冒険者との間にある壁の深さを、バッシュたちは痛感させられるのだった。
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