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第1話:聖樹の光と、たった二人の誓い

静寂のなか、微かに揺れる木漏れ日が、古びた大聖堂のステンドグラスを透過して色鮮やかな光の斑紋を床に投げかけていた。


そこは、世界の辺境に位置する『聖樹の村 セレスティア』。

かつて世界を救った神の使徒が休息を取ったと噂される巨木——聖樹の根元に建てられたこの村の教会は、外の世界の喧騒から切り離されたかのように穏やかで、澄んだ空気に満ちている。


だが、この日、聖堂の中に流れる空気はどこか決定的に異なっていた。


「……汝、神の啓示を受けし者。その手で光の剣を握り、世界に蔓延る闇を払う者——『勇者』として、ここに認定する」


厳かな老司祭の声が、高く天井に反響する。

祭壇の前に膝をついていた金髪の青年——バッシュは、深く息を吐き出すと、ゆっくりと顔を上げた。その青い瞳には、突然与えられた重責に対する緊張と、それを上回る確固たる決意の光が宿っていた。


「バッシュ……本当に、本当に『勇者様』になっちゃったんだね……」


祭壇の下で見守っていた小柄な少女——エリスが、胸の前でキュッと両手を握りしめながら、夢でも見ているかのように呟いた。


彼女はここセレスティアの村で育った、ごく普通の心優しい町娘だ。独学で覚えた簡単な癒やしの初級魔法を使える程度で、戦いの素養などこれっぽっちもない。けれど、幼馴染であるバッシュが村を出て世界を救う旅に出ると知ったとき、彼女は迷わずついていくことを決めたのだった。


「ああ。正直、俺自身が一番驚いてるよ。村の自警団で剣を振っていただけの俺が、まさか神からの託宣を受けるなんてな」


バッシュは胸元に下げられた、勇者の証たる聖印のペンダントを撫でながら、苦笑いを浮かべた。


「でも、決めたんだ。俺を選んでくれた神様の期待にも、この村のみんなにも嘘はつきたくない。俺は……世界を困らせている魔王軍の脅威から、みんなを守りたい」


「うん! 私、バッシュのこと信じてる。私なんて大した魔法も使えないし、足手まといになっちゃうかもしれないけど……薬草の調合も食事の準備も頑張るから! ずっと一番近くでバッシュを支えるからね!」


エリスは不安を押し殺し、一生懸命に満面の笑顔を作ってみせた。

バッシュはその健気な姿に心を温められ、優しく彼女の頭を撫でた。


「ありがとう、エリス。でも、無茶は絶対に禁物だぞ。俺たちはまだ二人だけなんだから」


「ふふ、分かってるよ。……あ、でもねバッシュ。老司祭様もおっしゃっていたでしょ? 勇者一人じゃ世界は救えない。『街の冒険者ギルドで信頼できる仲間を募りなさい』って」


「ああ、そうだったな。この村には腕利きの剣士も優秀な魔導士もいない。まずは一番近い大きな交易都市へ行って、一緒に戦ってくれる冒険者の仲間を探そう」


老司祭からの温かな旅費の餞別を受け取り、二人は長年住み慣れたセレスティアの村を後にした。


村の出口で見送る村人たちの歓声と祝福の声を背に受けながら、バッシュとエリスは小さな手をしっかりと握り合い、見渡す限りの広大な世界へと足を踏み出したのだった。

これからは、できる限り毎日投稿を続けていきたいと思っています!


お目通しいただけたのも何かのご縁ですので、これから毎日読みに来ていただけたらとても嬉しいです。


次回の更新もぜひ楽しみに待っていてくださいね!

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